《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》幕間4 狂の神霊樹と佐々木
――貝塚ダンジョンり口
「どういうことですか? 攜帯電話も無線機も持ち込み止なんて……」
佐々木 は、貝塚ダンジョンり口を警護している陸上自衛隊の面々を見ながら抗議する。
彼が不審に思うのは當然で、ダンジョンの中では何が起きるか分からないからだ。
不測の事態が起きた時、すぐに外部と連絡が取れるように報端末を持っていくことは、日本ダンジョン探索者協會では必須とされていた。
「山2等陸尉からの命令です。ダンジョンランクFの貝塚ダンジョンは、將來のダンジョン攻略で役に立つようにと新しいシステムが運用開始される事になっているのです。そのため、運用が正確にされ必要なデータが集まるまでは、電子機に影響を及ぼす可能がある報端末を持っていくことは止されているのです」
「新しいシステム?」
佐々木は首を傾げる。
一応、彼だって日本ダンジョン探索協會所屬通信技師としての職務があり、それなりの知識を教えられている。
さらに言えば、仮に新システムの運用が電子機により影響をけるなら、日本ダンジョン探索協會所屬通信技師の彼には、先に連絡が來ていておかしくないはずである。
その新システムの運用を知らない……、知らされていないという事実に佐々木は引っかかりを覚えていた。
「とにかく、私達が前もって貝塚ダンジョンの安全確認は済ませてある。それを君は疑うのか? 一応、日本ダンジョン探索者協會と陸上自衛隊は表向きは別の組織と言う事になっている。だが、中は一緒だと言う事は佐々木さん、君も分かっているだろう?」
「……はい」
そう言われてしまえば、それ以上は彼は追求できない。
何せ、何の証拠もないのだ。
頷くことしかできない。
「よろしい。では預かろうか」
佐々木は渋々、攜帯電話と無線端末を陸上自衛隊の隊員に渡す。
「たしかに預かっておこう。山2等陸尉は君に期待しているようだから、頑張ってくれ」
「はい……」
佐々木はダンジョンの中へと足を踏みれる。
ダンジョンの中にった瞬間、彼はいつものダンジョンと違うと何となくだがでじ取っていた。
一瞬、戻ろうかと思った彼であったが、遙か上の上司である山2等陸尉からの願いを思い出して階段を降りていく。
階段を降りた先は、水族館を模した広間。
「よかった……」
階段を降りた場所は、いつもと変わらない風景。
広間には、水族館とエレベーターと、通路がある。
「え? エレベーター!?」
思わず彼は駆け寄る。
たしかに、それはエレベーターであった。
「どうして、こんなところにエレベーターなんて……、あっ!?」
そこで佐々木は、山2等陸尉が言っていた言葉を思い出す。
地下9階で修理という言葉。
そして、問題は無いという言葉。
さらに言えば、新しいシステムという言葉も。
「そうなのね……。山2等陸尉は、地下9階まで、このエレベーターで行きなさいって言っているのね」
佐々木は何度も頷き、エレベーターのボタンを押す。
すぐに扉は両開きに開く。
中の壁は石作りになっているのがしだけ気になったが、彼はそのままエレベーターに乗り込むと一つしかない▽のボタンを押した。
両開きの扉は、すぐに閉まるとゆっくりと下がっていく。
「ずいぶんと時間がかかるのね」
佐々木は、階下の數字が書かれていないエレベーターの中で暇を持て余していた。
わずか9階までの距離とは思えないほど、時間が掛かっていた。
しずつ不安に駆られ始めたところで、「チン!」と言う音と共にエレベーターの扉が開く。
彼はエレベーターから出ると、すぐに足を止めた。
「ここって、どこなの?」
目の前には、広大な薄暗い空間が広がっており、佐々木は思わず狼狽してしまう。
楠達と地下10階層まで降りたことがある佐々木であったが、今! 目の前に広がる広大な空間は一度も目にしたことがない。
「すごい……」
思わず天井を見上げた彼は、呆けた聲で言葉を呟いてしまう。
ダンジョンだと言うのに、ダンジョンの天井は――、石は細かなを放っていて薄暗さも手伝い、星空の様相を呈していたからだ。
しばらく天井を見ていた佐々木であったがハッとし、エレベーターに戻ろうと後ろを振り返った。
「――え? エレベーターがない? ど、どうして!?」
突然のことに混する佐々木は、スカートのポケットに手をれる。
「……あ、攜帯電話……」
彼の顔が真っ青になる。
自分が――、いま、どこにいるのかすら分からないのに連絡を取る手段が無い事に彼はパニックになりかけたところで――。
――問おう、汝の名前は何じゃ?
「――え?」
突然、広大な空間に響き渡る聲。
彼は、慌てて辺りを見渡す。
もしかしたら、誰か會話が出來る人間がいるのではないのか? という淡い期待を抱いて。
「じゃから、汝の名前は何だと聞いておるのじゃ!」
「――ど、どこにいるの? どこから聲が聞こえているの?」
佐々木は、さらにパニックになり周りを見渡すが、聲を発するような姿を見つけることが出來ない。
「足元じゃ! 足元にいるのじゃ!」
「え?」
佐々木が足元を見ると、そこには萎びれた30センチほどの種が落ちていた。
「ようやく來たと思ったらお主のような生娘とは――、まったく……」
「えっと……、貴方は?」
「………人に名前を聞く前にまずは自分から名乗るようにと習わなかったのか?」
「あ――、ご、ごめんなさい。佐々木(ささき) (のぞみ)って言います」
「ふん! まあよい。我が完全に消滅する前に來たことは褒めて遣わそう」
「それで、貴方のお名前は?」
彼は、頬を掻きながら足元に落ちている30センチほどの種に話かける。
端から見れば、とてもシュールな景であった。
――ただ、靜まり返った広大な空間にいた彼は、しでも話し相手が出來たことで気持ちが落ち著くと同時に、相手に敵愾心が無い事をじ取り心を開いていた。
「我の名前は! 狂の神霊樹という!」
「すごい名前ね」
「ふっ――」
「ところで狂の神霊樹さん。ここはどこなの?」
「ここは、星の迷宮の番人の間じゃ」
床の上に転がっている種の言葉に首を傾げる佐々木。
「えっと、どういうことなの?」
「ふん――、察しの悪い小娘じゃな」
狂の神霊樹の種の言葉に、佐々木の額に青筋が浮かび上がる。
「よろしい、教えてやろう! ここは類人猿である貴様らがダンジョンと呼んでおる地下100階にある場所になる」
「ち、地下100階!?」
「ふっ――、驚いたか? 小娘よ。ここから帰るには――「ど、どうしよう!」……ええい! 落ち著かんか!」
「ひっ!」
地下100階層と聞かされた佐々木は、現狀起きている出來事。
そしてやけに長い時間をかけて降りていったエレベーターから、何となく狂の神霊樹が言ったことが本當なのでは? と納得してしまっていた。
だからこそ、パニックになってしまっていたのだった。
「おほん! 佐々木とやら」
「ひ、ひゃい!」
「お主が、今困っていることは我にも手に取るようにわかる」
「は、はい……」
「そこでじゃ、そこに浮いている丸いのに手をれてはもらえんかの?」
「いやです!」
「どうしてじゃ?」
「だって……、ここまで私を呼んだのって狂の神霊樹さんですよね?」
「……そうじゃが……」
「なら無理です! 番人ということはダンジョンのボスってことですよね? 何か悪い事考えているんじゃないんですか?」
「そんなことは考えていないのじゃ! 我も、もうすぐ死んでしまうのじゃ! じゃから……」
「それじゃ、なんで私をここまで呼んだんですか?」
「……………いや、べつに誰でも良かったんじゃが……、えれべーたーというを用意すれば誰か來てくれるのではないのかなーって思ったのじゃ」
「…………つまり、私は偶然に連れて來られたということですか……」
「う、うむ。半ば諦めておったが、うっかり娘で助かったのじゃ」
「なんですってー! もう絶対に手をれないからね!」
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