《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》千城臺病院への訪問

部屋に戻り、スーツ姿のまま充電しておいたスマートフォンを手に取る。

スマートフォンには、2件の著信メールが確認できる。

1件は、広告メール。

もう1件のメールは企業からのメールのようだ。

企業からのメールをクリックしアプリを起させると畫面上にメールの容が表示される。

差出人名

菱王コーポレーション・コールセンター

件名

採用にあたりまして

詳細

12月31日 AM10時から面接を行いたいと思います。

住所・必要書類は添付致しましたファイルをご確認ください。

なるほど……。

12月31日か……。

それにしても、ノコモココールセンターよりも遙かに規模のデカい菱王コーポレーション・コールセンターの面接までいけるとは思ってもみなかったな。

個人対応が多いノコモココールセンターより、企業対応が多い菱王コーポレーション・コールセンターの方が多く報が集まる。

「一応、佐々木と牛丼フェアに行くことになっているのが午後6時からだからな。問題ないだろ」

ファイルを開き、必要書類を確認していく。

どれも用意してあるものばかりだ。

とくに問題ないな。

「まぁ仕事が決まるかも知れないのは朗報だな」

メールアプリを落とし電話をかける。

「はい、千城臺通です」

「山岸ですが、車を一臺お願いします」

「畏まりました。それでは、すぐに手配致します」

電話が切れる。

「――さて、いくか」

部屋から出て鍵を閉めたあと、通路を通り階段を降りアパートの前でハイヤーが來るのを待つ。

5分ほど経過したところで黒塗りのクラウンが到著。

「山岸様、お待たせしました」

運転手は、相原。

車に乗り込み行先である千城臺病院を伝えると車は走り出した。

時間にして10分程で病院に到著。

「相原さん、いつも通り待っていてもらえますか?」

「わかりました。それでは何かありましたら攜帯電話の方におかけください」

相原の言葉に俺は頷いたあと病院る。

「思ったより、朝だと言うのに人が多いな」

まぁ、スマートフォンで時間を確認した限り時刻はすでに10時近いからな。

一般診察に來た患者や見舞いにきた客も大勢いるのだろう。

さて――、どうするか……。

轟醫師の名前は知っているが、どこにいるのやら。

とりあえず病院の関係者に聞くのが最良だろうな。

「すいません」

聲をかけたのは目の前を通りがかったの看護師。

「はい、どうかしましたか?」

「轟先生を探しているのですが……」

「轟先生ですね。轟先生でしたら、午後まではレントゲン室にいると思いますので呼んで參ります。しお待ち頂けますか?」

「はい、よろしくお願いします」

午後まで? つまり、午後以降は居なかった可能があったと?

よくよく考えてみれば休みだった可能もあったんだよな。

別に、ポーションを出來ればと彼は頼んできただけで、本當にどうにかできるか半信半疑だっただろうし。

轟醫師を待つ間、病棟の壁に背中を預け視界の下部に表示されている4つのアイコンの中から魔法を選択する。

すると半明な無のプレートが視界の中央に表示されると同時に現在覚えている魔法一覧が表示されていく。

魔法

▽牛丼半額         MP消費1

▽牛丼6割引き   MP消費2

▽牛丼7割引き      MP消費4

▽牛丼8割引き      MP消費8

▽牛丼9割引き  MP消費16  

▽無限の牛丼    MP消費1000

▽アイテムボックス MP消費なし

そしてアイテムボックスをクリック。

魔法が発すると同時に、別のアイテム枠が視界左に表示されていく。

アイテムボックス

流水の革袋 22

バッカスの皮袋 4

百合の花の魔力ブローチ 7

四次元な赤薔薇のポーチ 3

銀花の指 14

萬能中央演算処理裝置 2

四次元手提げ袋 15

逆針(ぎゃくしん)の腕時計 5

黃金の果 3

の眼鏡 2

封印されしピーナッツマンの著ぐるみ(頭) 4

封印されしピーナッツマンの著ぐるみ(右腕) 4

封印されしピーナッツマンの著ぐるみ(左腕) 4

封印されしピーナッツマンの著ぐるみ(右足) 4

封印されしピーナッツマンの著ぐるみ(左足) 4

ミドルポーションの無限製樽 1

牛野屋の牛丼 381

ヌカリスエット 112

ヌァンタババロア 23

ああ、しまった。

樽から、ポーションを取り出しておくのを忘れていたな。

さて、どうしたものか……。

本當ならヌァンタババロアを飲んでから、ミドルポーションにれ替えるのが筋道なんだろうが……。

まぁ、この際だから上手く誤魔化すしかないな。

「これは、山岸さん!」

「おひさしぶりです」

轟醫師と挨拶をわしながらも、彼を呼んできてくれた看護師へと俺は視線を向ける。

これからの話は、なるべく二人だけで話をしたい。

「井上さん、彼は患者である杵柄さんの親戚で、これから治療について話さないといけないんだ」

「そうでしたか。それでは私は、これで失禮致します」

俺の考えを読み取ってくれたのか轟醫師は、看護師を追い払ってくれた。

「山岸さん、その様子ですと何かあったのですか?」

「ええ、まあ……、出來れば人の居ないところで話をしたいのですが……」

「分かりました。こちらへどうぞ」

轟醫師の後を付いていく。

そして辿り著いた部屋――、扉の上には外科部長室のプレートが掲げられている。

「こちらでしたら、急患でない限り會話ができますので」

部屋の中に案される。

は、俺の借りているアパートよりも遙かに広い。

俺の部屋が3つくらいりそうだ。

格差社會をじるな……。

「それでは、そちらにお座りください」

そう言うと、轟醫師は俺に背を向けると冷蔵庫を開けた。

「山岸さん、何か飲まれますか?」

「いえ、大丈夫です」

俺は、すかさずヌァンタババロアを2本、アイテムボックスから出してテーブルの上に置く。

「飲みは持ってきましたので、これは俺からの奢りなので1本どうですか?」

「そうですか、どうもすいませんね」

冷蔵庫を閉めた轟醫師がテーブルの上に乗っているヌァンタババロアを見て口元をヒクつかせた。

「あ、あの……、これは――」

「ヌァンタババロアです。レアですよ? めったに市場に出回らない逸品です」

「レアですか?」

「ええ、轟先生にもお裾分けしたいと考え持って參りました」

「…………これは、あとで飲ませて頂きますね」

轟醫師はテーブルの上からヌァンタババロアを手に取ると冷蔵庫へれて仕舞ってしまう。

もちろん、俺はその間にもアイテムボックスからもう一本取り出してテーブルの上に置いておく。

そして、戻ってきた轟醫師が、ヌァンタババロアを見て観念した表をしたあとソファーに座った。

「それで、人払いまでして話をしたいというのはどういう理由でしょうか?」

「じつは、知り合いの探索者からこんなものを預かってきたんだが――」

俺はテーブルの上に、四次元な赤薔薇のポーチを置く。

「これは?」

「これはアイテムをれておける、まあ簡単に言えば四次元な袋だな」

「ほう……、こんなものが……」

テーブルの上に置いた 四次元な赤薔薇のポーチに恐る恐る手をばす轟醫師。

彼は、袋を開けて中を見たりしたあと、ポーチをテーブルの上に置いた。

「それで、私に見せたいのは――、この花柄のポーチという訳ではないですよね?」

「そうだな」

俺は、アイテムボックスの魔法を起させ――、ミドルポーションの無限製樽をポーチの中へと移させる。

そして、あたかもポーチの中から樽が出てくるように見せかけた。

取り出した樽は、30リットルがるほどの大きさのオーク製の樽。

その樽を床の上に置く。

それと同時に、轟醫師の視線が樽へと吸い寄せられていた。

「これは、一……」

「簡単に説明するなら、ミドルポーションを無限に汲み出すことが出來る樽になる」

「無限に!?」

「ああ、俺も詳しくは知らないんだが、知り合いの探索者にポーションが病院で用だと言ったところ、これを寄付したいと言ってきたんだ。どうだ? この病院で使ってもらうことは出來るか?」

「それは、構いませんというよりも……、ぜひ! こちらからお願いしたいくらいですが……、本當にいいのですか? これは下手をすれば……數億――、いえ數十億から數百億の価値があるものでは……」

「俺に言われても困る。俺が知り合いの探索者から預かったときに聞いた時の言葉は一つ。一人がを占有していても意味がない。必要とされる場所に、置かれるのがいいとな――」

俺は肩を竦めながら、轟醫師に言葉を返す。

そう――、どうせ俺が持っていたところで……、もう意味はないからな。

俺には、もう守りたいは何もない。

だったら――、誰かが必要としている場所。

必要とする人間が來る場所に置いてもらって使ってもらう方が余程いいだろう。

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