《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》アパート(3)

そういえば、言い忘れていることがあったな。

「田中さん」

「どうかしましたか?」

ドアにを開けている最中の彼は、手を止める。

「実は、家の外に通じる窓に鍵を付けて頂くことはできますか?」

「ちょっと見せてもらってもいいですか?」

田中が一通り部屋を見たあとに戻ってくる。

「窓はサッシタイプですので、ウィンドロックが使えますね。金額は2000円ほどですがどうしますか?」

「お願いします」

「それではお風呂場とお部屋、あとは――、臺所で3か所で6000円です。いいですか?」

「はい」

「では、他の方が部屋の中を見ていますので先にドアの鍵を換してから窓のサッシに鍵をつけることにします」

それだけ言うと鍵屋は、ドアにを空けたあとに鍵を手際よくつけていく。

今度、ドアを鉄にしてみるかな……。

いまの俺のステータスなら木のドアなら素手でぶち破れると思うし――。

他の人間が同じことが出來ないとは言い切れないからな。

――作業を開始してから30分が経過。

「山岸さん、窓ガラスの換が終わりました。確認をしてもらってもいいですか?」

「――あ、はい」

橋本ガラスの職人に言われるがまま、換したガラスをチェックする。

特に問題はない。

「大丈夫です」

「そうですか、それではお支払いですが――」

「3萬円でしたね?」

「はい。今、領収書を切りますのでお待ちください」

橋本ガラスの職人が領収書を切っている間にスーツのポケットから札束を取り出し3枚抜く。

「それでは、こちらが領収書になります」

領収書を預かりながら3萬円を渡す。

「それでは、また何かありましたらお呼びください」

「あ、名刺を頂けますか?」

「これが名刺になります」

「橋本龍太郎ですか……」

「はい。それでは失禮致します」

さすが職人といったところか。

を纏めると颯爽と帰っていってしまった。

まぁ、名刺が貰えただけ良しとしておくか。

また窓ガラスが壊れるような事があれば、今度は自分で電話してお願いできるからな。

――できれば、そんな事態は來ないでほしいが、世の中には絶対という事はないからな……。

「山岸様」

「はいはい」

本當に良く名前が呼ばれる日だ。

「山彥さん、どうかしましたか?」

「とりあえず出てきた盜聴ですが、數は11個ですね」

おいおい、6畳一間の部屋に盜聴11個とか多過ぎだろ。

どれだけ稅を無駄にしてるんだよ。

チラリと、ドアの方を見ると涙目になった藤堂が何度も頭を下げてきているのが見える。

まったく――。1個や2個なら分かるが11個とか……。

「まず、部屋には7個ありました。お風呂場には1個、トイレには1個、玄関付近には1個、臺所には1個です。これは明らかに常軌を逸した數です。警察に相談された方がいいと思います」

「あ……、はい――」

その警察が、まったく役に立っていないからな。

とくに千城臺付近を警備している千城臺警察署とか、市民に発砲とかもしたし。

「それでは、私の方からは以上となります。あとは、探偵としてお伝えしますがお金があるのでしたらアパートよりも、もっと警備がしっかりしているタワーマンションに引っ越しされた方がいいと思います」

「……そうですね」

まぁ、なんというか……、このアパートからは離れる気はしないんだよな。

よく分からないが――。

「それでは金額は――」

「13萬円プラス消費稅で良かったんでしたっけ?」

「はい。14萬3000円になります。それでは、おつりは7000円になります」

「はい」

おつりと領収書をけ取る。

探偵が帰ったあとは鍵屋が部屋の中の窓サッシに鍵を付けていく。

作業が終わったあとは、お金を支払う。

「それでは、また何かありましたら呼んでください」

「お疲れ様でした。また、何かありましたらよろしくお願いします」

一応は、社會人として対応する。

鍵屋が階段を降りていくのを確認してから、スマートフォンで時間を確認する。

――時刻は17時20分。

思ったよりも時間が掛かったな。

まぁ、これからはしは安心して過ごせるからいいか。

「あのー、山岸さん……」

「――ん?」

鍵屋を見送り部屋にろうとしたところで、藤堂が俺の腕を摑んでくる。

「本當にごめんなさい」

「別に藤堂さんが悪いわけじゃないから。ただ、俺は自衛隊という組織を信用していないだけだから」

「はい……、あの! お詫びにもなりませんけど……。私に何か手伝えることはありませんか!」

「陸上自衛隊という組織に屬している人間には何かを頼むことはない。俺は、君たちを信用していないから」

実際、組織にを置いている藤堂に何かを頼むという行為は、俺自の手で自分自の首を締めることに他ならない。

「あの……、ということは私が退職すれば何か手伝えることがあると言う事ですか?」

退職すれば?

簡単に退職できないのは、俺だって竹杉から聞いて知っている。

駆け引きのつもりかどうかは知らない。

だが! そんな駆け引きで俺が何か手伝いを頼むということはあり得ない。

「そうですね。君が、自衛隊を本當に退職したら雇用してもいいです」

まぁ、退職は難しいと言っていたし、表面上で退職と言われてもスキル「神眼」で看破できるからな、

「雇用どころか俺専屬の就職(書)も視野にれます」

「本當ですか!? 山岸さん専用(結婚)を!?」

「もちろんです。俺は、噓をつきませんから」

「わかりました! 明日、即日で辭めてきます!」

やれやれ、簡単に退職できないと竹杉が言っていたのに、そんな適當でいい加減な約束をしてしまっていいのかな?

吐いた言葉には責任を持たないといけない事くらいは社會人としては常識なはずなんだがな。

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