《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》人類の罪過(23)第三者side

「……人間の意識の集合?」

その言葉に、私は心――、首を傾げる。

私が知っている神という存在は、神たる者であって人とは一線を隠す存在だと思っていたから。

それなのに、人の意識の集合というのはどういう事なのか?

私が理解する前に、彼は――、山岸鏡花さんは口を開く。

「――さて、アレらの攻撃が本格的になってきたから潛できそうね」

たしかに、鏡花さんの言う通り、コンクリート製の建り口を守っていた自衛隊員の姿は見當たらない。

それどころか銃聲が増えている事から、鬼のような姿をした化けの襲撃が増えているのは簡単に想像がついた。

「いくわよ」

「は、はい」

が走り出し、金網を登っていく。

私も、鏡花さんの後を追い金網に手を掛ける。

そこで、ふと上を見上げる。

そこには有刺鉄線があり、普通には上がれない。

だけど、鏡花さんは手が傷つくのを気にした素振りも見せずにが裂けていき、が滴れても表一つかさずに上がっていく。

「鏡花さん、怪我が……」

私の聲に、彼は、その瞳を一瞥するだけで、金網を上がってしまう。

それは、覚悟がないのなら付いてくる必要はないと言っているように見えた。

「――ッ」

先輩を助けにきて、金網と有刺鉄線で邪魔されているだけで挫けるわけにはいかない。

私も有刺鉄線に手をかけて必死に上がる。

上著を有刺鉄線に被せて何とか軽い怪我だけで金網を登り切り、基地側へ降りることに功する。

そして、すぐにズタズタになった上著を有刺鉄線から外し、腰に巻き付けると鏡花さんの後を追う。

の前に到著したところで、鏡花さんが建のドアノブに手を摑む。

――ギイッ

重苦しい音が鳴り、しだけ扉が開く。

「良かったわ。鍵は開いているわね」

鏡花さんは躊躇なく建の中にる。

った場所は、畳10畳ほどの小さな部屋。

壁はコンクリートを打ちっぱなしのままで灰の壁だけ。

凝った裝飾品のようなモノは一切、見けられない。

「中にも人はいないみたいね」

の言葉に頷き、私と鏡花さんは建の中を見ていくけど、たしかに鏡花さんの言う通り、建の中には誰もいない。

「それにしても困ったわね」

「――え?」

「銃聲の音も殆ど聞こえない事に気がつかないの?」

「そういえば……防音仕様が施されているんでしょうか?」

「そうね。――でも、厄介ね。外の様子が分からないのは……」

二人して會話しながら、建の中を見ていくと最後の扉――、奧まった場所の鉄の扉を開けた鏡花さんが作を止めた。

「どうかして――!?」

鏡花さんの橫から、室を見た私は思わず息を呑む。

目に飛び込んできたのは、コンクリート製の壁――、そして一つの椅子。

「まさか……」

私も理解してしまう。

椅子の周辺に飛び散った赤黒い斑點。

それは、なくとも真っ當な手段でつけられたモノではないと分かってしまったから。

「これって先輩の……」

「――ええ。そうね……」

思わず唾を呑み込む私。

そんな私の言葉に坦々と言葉を返してくる鏡花さん……、その様子から――、が抜け落ちたような反応から、私は、カッ! と、なって思わず鏡花さんの肩を摑む。

こんな狀況になるのを、まるで! 鏡花さんは! 知っていたかのようだったから。

むしろ全てを知っていて――!?

「鏡花さんっ! ここって! この世界って、どういう意味なんですか? どうして、先輩が、こんな狀況に置かれているんですか! どうして、全てを知っていて、こういう手順を踏んでいるんですか!?」

私の問いかけに、鏡花さんは何一つ表が存在しない、黒い水晶球のような瞳で私を見てくると――。

「だから、言ったでしょう? ここは、お兄ちゃんの意識の中であり記憶の中。そして、これは、もう終わった世界。だから先に進むには手順は必要だし、何より……変える事なんてできないの」

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