コンクリートで作られた窓すらない建。

そこは自衛隊が守っていた場所であろうビルのようなモノではあるのに、生活がまったくじられない。

ただ――、そこに存在しているだけ。

１階まで降りた所で、外へと通じる扉を一瞬開ける。

そして、建の外を見るけど、すぐに銃聲が聞こえてきた。

戦っている姿を見ることは出來ない。

だけど……。

「戦っている？」

「ええ。日本の自衛隊は優秀だもの。なくとも兵裝が盡きるまでは相思から作られた化けに遅れを取ることはないわ」

「相思から？」

「ええ」

地下へと通じる階段に足を踏み出しながら、鏡花さんは答えてくる。

「どういうことですか？」

「時間がないわ。お兄ちゃんが居ないという事は祭壇に向かっているという事だから。早く行かないと間に合わなくなるわ」

鏡花さんは、すぐに階段を降りていく。

私は、彼の後を追うようにして階段を降りる。

コンクリート製の階段は、十數段降りると折り返す。

そして、更に下へと――、地下へと通じている。

どうして、エレベーターが配置されていないのか……。

「鏡花さん」

「何？」

階段を降りていく彼のあとを追いながら私は背後から彼に聲をかける。

「相思とはどういう意味ですか？」

「何度も貴には言ったわよね？　あの鬼は、お兄ちゃんを狙っているって」

「それは聞きましたけど……」

「そう……。つまりね――、あの鬼は人間そのものなのよ」

「――え？」

２メートル近い、表皮が真っ赤に――、マグマのように煮えたぎっていて、瞳の部分は空で何も映していない死者のような存在。

四肢は、皮が存在しておらず真っ赤な筋が律しているグロテスクな姿。

そして……、その手の指先からは、３０センチほどの爪が生えていて鋼鉄すら切り裂くような化け。

それが人間と同じだとは、どうしても思えない。

「そんな……同じ人間とは……」

「信じられない？　理解できない？　そうよね――」

彼は――、鏡花さんは私の方を見てくると眉端を落しながら口を開く。

「あれは、人間の罪過そのものだから。だから、決して、人間は認めようとしない。自らの罪を――、自らの過ちを――、自らの選択の結果を……、その結果が、あの亡者の姿なのだから」

「人間の罪過？」

一人呟くと同時に途中から螺旋狀に変化した階段を降り切った。

辿り著いた場所は、巨大な空間と――、視線の先には上落ち村で見たことがある祭壇。

「ええ……。そうよ。そして、全ては――、「當代の巫よ。契約を違えているのではないのかえ？」――ッ！？」

話しを続けようとした鏡花さんの言葉を遮るかのように、唐突に聲が空間の上空から降ってくる。

それと共に、私と鏡花さんの前に白い巫服を著た１６歳ほどのが姿を現した。

髪のは、月読さんとは相対する金髪の髪が腰までびている。

目鼻立ちは、人とは思えないほど整っていて、まるで人形のよう。

その立ち姿も凜としているからこそ、そうじてしまうかも知れない。

それよりも契約がどうとか……。

「山岸鏡花。汝との契約に、この場に來る盟約は含まれてはいないはずじゃが？」

「お久しぶりでございます。天照大神様」

目の前に姿を見せたの名前を――、鏡花さんはアマテラスと呼んだ。