「…………」

不機嫌そうに眉を顰めた金髪のは、一度――、目を閉じると口を開く。

「挨拶なぞ、どうでもよい。それよりも何故、ここに來た？」

「兄を助ける為に――」

「なるほどのう……。だが、それは本當に必要なことか？」

「はい」

「……」

無言になり、私達から視線を逸らす天照大神と呼ばれた。

その目は、彼の背後――、巨大なドーム狀の部屋の中央部から、さらに奧まった場所。

「あれは……」

そこで、私は気が付いた。

今まで何も存在していなかった巨大な空。

壁は、コンクリートとも金屬ともつかない沢のない黒い壁で作られている。

そして燈りは何も無いのにも関わらず視界が闇の閉ざされる事はない不思議な空間。

そう――、何も視界を遮る事もなく全てが見渡せる場所であったはずなのに、唐突に――、その姿が――。

「先輩っ！」

この世界に來て、２度目の邂逅。

それだけじゃない……。

旅館で、私が勝手に行してしまってから、れ違いが多く――、わす言葉もなかった思い人。

「罪過よ。くでない」

「――ッ！？」

が――、意思に反して……かなくなる。

それは金縛りと言うには、あまりにも異質なモノで、まるで自分のが自分のではないようで……。

「！？」

先輩に向かって、無意識のだったのか一歩踏み出した私がけなくなったことに気がついた鏡花さんが私の名前を呼んでくる。

「この者と話すのは時間の浪費となろう。それよりも、先ほどの話であるが山岸直人を助ける為に、この世界に足を踏みれた……、そういうことか？　當代の巫よ」

「――ッ！？」

巨大な空に、唐突に吹き荒れる風。

だけど、すぐに気が付く。

服も髪も靡いていなかったから。

つまり……、風だと錯覚するほどの何かをじたという事になる。

「はい……」

「なるほど……。當代の巫よ――、お前には失をじ得ない。我らとの契約を行った際の止條例に抵する行為を行うとは……」

目の前に存在している存在。

人間を超越したかのような神々しい姿をした存在。

それと契約したのが鏡花さんで――、そして……そこには止條項が存在していて……。

「（そういえば……）」

聲も自由に出せない。

心の中でしか事を考える事が出來ない。

だからこそ、私は思考する。

私にコンタクトを取ってきた時に、鏡花さんは言っていた。

約束を破るようなことを……。

その約束というのは――、天照大神と呼ばれる頂上的な存在と契約を結んだ？　つまり……、日本神話において最高神とも言える太の化――、アマテラスとの約束を反故にすると言うこと……？

「（……でも、それは……）」

神から背信するという……。

「兄は！　兄は！　十分に苦しみましたっ！　もう――、解放してください！」

「解放か……。だが、それをあの者は本當にんでいるのか？」

「それは……」

鏡花さんと天照大神との會話は肝心な所が私には教えられていないというのが薄々と分かってきた。

それは――。

「やれやれ――」

「……」

「……」

唐突に、聞いたことのある聲が木霊する。

その聲は、私でも――、天照大神でも、鏡花さんでもない。

だけど――、私の髪の中から、小さな植の種が元に転がってくると、それはの上で停まると、種が割れて新芽が育つ。

そして、それはあっと言う間に小鉢ほどの大きさまで育つと１０センチほどの小さなの子の姿へと変化した。

「あなたは……」

「久しぶりだのう。佐々木」

「狂の神霊樹さん？」

「うむ」

気が付けば金縛りが解けていた私に頷き返してきたのは、夜刀神に殺されたと思っていた狂の神霊樹であった。