《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》人類の罪過(30)

「何を……何をしているのっ!」

自分でも――、自分でも言葉に出して――、ようやくハッキリと理解できるほど大きな聲でんでしまった……、そんな事実を……私は理解した……理解してしまった。

――だけど! 仕方ないじゃない!

そういう気持ちが――、心の聲が! 自分の中で、わたし自を……、私の行を後押しする。

目の前の――、目の前に――! そう! いま! 私の眼前の前……、すぐ視線の先に灰のパイプ椅子に座らされて、額からを流しているだけでなく、白い類が真っ赤に染まっている思い人である先輩である山岸直人さんがいるのだから。

「くそっ! どういうことだ! 安田主任!」

「そ、総理」

んだ私の聲など、まったく屆いてないかのように目の前の――、山岸直人さんの前に立っている男二人が會話をはじめた。

一人は、総理と安田という人から呼ばれていた男。

私が知っている日本國首相である夏目とは風貌も漂ってくる雰囲気も異なる。

見た目からして齢60歳を超えるであろう男からは、苛立ちや焦り、そして怒りなどが伝わってくる。

そして、その怒りの矛先は安田と名前を呼ばれた40歳ほどの安田という男に向けられていた。

安田という男は、総理と呼ばれた男からの叱責に怯えているようで――、

を……の契約をすればガイアとの契約が出來るはずなのです」

「それは古文書に書かれていた、それは聞いた! だが! 実際には、これだけのを契約の祭壇に流しても、まったく反応がない! 本當に、その古文書に書かれていた容は合っているのかね!?」

「――そ、そのはずです」

「だが! 実際は、何の反応もないだろうが!」

話している間に、怒りを発させた総理と呼ばれた男が拳銃を山岸直人さんに向けると、引き金を引いた。

撃鉄が落されると同時に、発砲音が鳴り響き、鉛の銃弾は先輩の太を撃ち辺りにが撒き散らされ傷口からは夥しいが溢れ石で作られた床を真っ赤に染めていく。

「なんて……こと……を……」

私は総理と呼ばれた老人に駆け寄る。

そして、拳銃を奪おうとするが――、手がすり抜けた。

「――ッ!?」

「くそっ! くそっ! くそっ! くそっ! 全てだ! 全てが、コイツのせいで!」

何度も何度も銃聲が鳴り響く。

「やめてーっ!」

止めることができない。

どんなに止めようとしても……拳銃を奪おうとしても……山岸直人さんの壁になろうとして銃口の前に立っても、全ての銃弾は、まるで私が、いま! この場所に居ないと教えるかのように、私のを貫通して山岸直人さんのを傷つけていく。

「どうして……。どうして……」

どうにもできない。

救いたいのに救えない。

そんな酷い現実を――、事実を――、無理矢理見せられ続けて……。

「どうして! こんな事ができるの! どうして! 直人さんにこんなことをするの! どうして、この男を誰も止めないの!」

私は周りに居る自衛や、シークレットサービスであろう男達に懇願する。

だけど、私の聲なんてまったく屆かない――、私なんて居ないかのように銃聲は鳴り響く。

「どうして……。これが先輩への……山岸直人さんへの罰だというの! 何の反応も示さない! そんな人に! こんな仕打ちをするのが日本國の総理大臣のやる事だというの!」

――ぶ。

心の底から。

「そう。だけど、これが人間の本質なのよね」

唐突に、目の前の男達からの話聲が聞こえなくなる。

継続的に聞こえてきた銃聲も止まる。

そう――、唐突に反響してきた聲と共に。

「月読さん……。どうして、ここに……」

そこには、この世界に來るときに出會った月読さんが立っていて、その視線は天井を見上げていた。

「理解した? 理解できた? 人間の本質と愚かさと、どれだけの虛栄に塗れた腐った世界に人々は存在していたのかを――」

そう、彼は呟くと私へと視線を向けてきた。

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