《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》人類の罪過(31)
「……何を……、何を言って……」
彼の言葉が何を指しているのか薄々だけど気が付いていた。
この世界を――、この世界の在り方を――、どうして不必要だと思われる部分を私に見せてきたのかということを。
最初は、この世界はどういう場所なのかを私に見せようとしていたと思っていた。
だけど……それは……。
「もう薄々づいているのでしょう?」
月読さんは小さく――、それでもハッキリとき通った凜としたハリのある聲で歌うように呟く。
「それは……」
――そう。
この世界は、人々の営み。
そして、人間の本質とはどういうモノなのかという事を私に見せる為のものであった。
もっと簡単に言えば、人という存在は――。
「そう。人間は、どこまでも醜く愚かで愚鈍で猜疑心と劣等に塗れた愚かな存在」
月読さんは、泣きそうな表を見せながら笑うようにして――、泣き顔を作り、そのからは言葉が零れ落ちる。
「自らを鍛えようともせずに――、他者を蹴落とし、誰かを引き摺り下ろし、悅に浸り、騙し、盜み、殺す。それも利己的に……そして無意識的に。平気で他者を見下し、見下ろし、自らが過ちを犯している事を無意識ながら理解しながらも、理不盡までに自己を肯定する」
「それは……」
「貴も知っているわよね? ねえ? 佐々木。ガイアと契約を結び世界の崩壊の引き金を引いた貴なら……理解していないとは言わさないわよ?」
「……」
「だんまり? それとも、いまだに自分が犯してしまった過ちから目を背けるつもりなの?」
「――ッ! で、でも!」
思わず聲を張り上げてしまう。
ガイアと契約を結んだというのはたぶん……。
「上落ち村で、もう一人の私が迷宮で何かをしたこと……ですよね?」
「そうね」
私の予想どおり月読さんは肯定してくる。
「――でも! それと、実際に起きた出來事は……」
「貴の言っていることも分かるわ」
月読さんの視線が、この世界の日本國の総理大臣と呼ばれていた初老の男に向けられる。
初老の男は、まるで時が停まったようにかずにいて――、拳銃を山岸直人さんに向けて凍り付いていた。
「そう。本當は……、上落ち村で発生した集落を呑み込んだ災害は人為的なだった。ただ、それを當時の人間は理解していなかった。本當の狙いは、『悠久の命』を中國政府の命令で、日本國政府は手にれようといていたの」
「――え?」
一瞬、月読さんが何を言ったのか理解できなかった。
ちがう……、言葉の意味は理解出來たけど、何を言っているのか? と、浮かび上がってきた意味に対して自問自答していただけで――。
「全ては、意識の還元が為された時に分かった事だけど、気が付いた時には全てが終わっていた。だから、人間が私は大嫌い――」
「月読さん……」
「世界を――、先史世界を作り出した消去者(イレイザー)の意味を否定した人間が、どれだけ愚かっただったのか……。それを祝という意味で、本當の――本質の意味合いから遠ざけてしまった人という種が嫌い」
「それじゃあ、どうして! 私達に協力してくれているんですか?」
本當に人が――、人間が嫌いなら、山岸直人さんを助ける為の助力をするなんておかしい。
それなのに、月読さんは私の問いかけにし笑みを浮かを開く。
「それが盟約であり契約だから」
「盟約であり契約?」
「そう。全てのことの発端――、ガイアと消去者に纏わることだから。人は王であり、王は人。そして、それを守り世界の秩序を取り戻し世界の構築と世界を創世する。それが祝の王であり消去者(イレイザー)の役目」
「消去者って……山岸直人さん……のことですよね?」
「そうね」
「なら――、人は王というのは……」
「言葉どおりの意味よ? 人は王であり、王は人なのよ?」
どういうこと?
彼の言葉にはいくつか分からない部分がある。
だけど……。
「祝の王というの神の力を振るう者というのを以前に聞いたことがあります」
「そう……。でも、祝というのは正確ではないのだけれどね」
「どういう……」
「世界と人の本質というのは表裏一であり、それらは、また切っても切り離せない。だから、世界は消去者を求めた」
「……一、消去者って何なんですか?」
「簡単なことよ? 人が作り出した願いの産」
「それが山岸先輩だと……?」
「ええ。でも――」
「でも?」
「私も、それが――、その願いの願のであり、全ての神々の王であり、そのが、どう作られたかまでは分からないけど」
「どうしてですか?」
「言ったでしょう? 人は王であり、王も人であると」
「……」
「まだ分からないの? 私達、全ての神々は、元々は人だつたのよ? 人々の願いから作られて生まれた存在――、それが全ての神々。そして、その究極とも言えるのが消去者(イレイザー)なの」
「つまり……先輩は……」
「ええ。貴が知っている人である人も――」
そこまで彼は語ったところで、唐突に銃聲が鳴り響く。
思わず銃聲の鳴り響いた方へと視線を向けると、それは総理大臣が撃ったモノでない事が直ぐに分かった。
何故なら、自衛の持つ銃口は天井に向けていたから。
「これは――!?」
「始まってしまったようね……。――というよりも、本當のことを主は聞かれたくないのかも知れないわね」
「主って……山岸先輩のことですよね?」
「ええ。まぁ、見ておくといいわ。世界の終わりをね」
月読さんが、そう未來を暗示したように呟くと共にドーム狀の天井が、唐突に散し無數の赤い鬼がその姿を見せた。
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