《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》人類の罪過(33)

「もう……誰かが――、目の前で誰かが死ぬのは……俺の前で! 誰かが死ぬ景を見るのは――」

「あれは……」

「そう。言ったでしょう? 人の願いを――願を葉える。人が願えば、それを助けるのが――」

月読さんの言葉に呼応するかのように、私の目の前で――先輩――、山岸直人さんが両手を広げながら口を開く。

「見たくない!」

確固たる意志を包する聲が、ドームの中に反響する。

それと共に周囲の鬼がいっせいにき出す。

鬼に毆られ腕を食いちぎられながらも、その都度、再生しつつ助けを懇願してきた、ただ一人の為に立ちながら壁となり続ける。

「き、君――」

「無事か?」

「……君は、何故……」

得心行かないのか、三宅という男は先輩に語り掛ける。

その口調は震えているように見えた。

「何故だ? 私は、君を――、君のを散々……」

「……気にする事はない」

「――だが!」

「……俺も良く分からない。自分が、どんな狀況に置かれているなんて理解していないし、どうして、こんな場所にいるのかなんて分からない。それでも……、俺は、もう――、目の前で誰かに死なれるのは嫌なんだ! 助ける事が出來たかも知れない。でも! 助ける事ができなかった……。妹を! だから! もう誰かを目の前で――、誰かが死ぬのを見るのは……だから……」

「だから、私を助けたというのか?」

「ああ……。助けられているかどうかは分からないけどな」

中が欠損していき、服が真っ赤に染まり、足元には夥しいだまりが出來ていく。

そんな中、先輩は――、山岸直人さんは、三宅という男を守る為に必死に壁となっていた。

「まるで道……」

「そう。窮地に陥っただけを守る為に、誰かが願いを伝えた時に、その願いから生じるのが――」

思った事が口から零れ落ちる。

そんな私の想いを掬い取り答えを導き出す月読さん。

「彼なのよ?」

「――でも、先輩には戦う力なんて……」

この世界で見て來たから分かる。

山岸直人さんのは異常ではあったけれど、戦う力なんてない。

それは、Sランクの冒険者である先輩とは違う部分。

「すまなかった。私は、何て馬鹿なことを……。本當は、分かっていたのだ。このような事態を引き起こしたのは私だと……。妻も娘も……それで……だから……」

私と月読さんが見ている中で三宅の獨白が続く。

「だから全てを元に戻したく……」

男の言い分は、何て勝手なのだろうと私は思った。

事の発端を作ったのが三宅であるのなら、全ての責任こそが日本國総理大臣にある。

そして、大勢の人間が死んだ。

今更、懺悔をしても遅いというのに、なんて利己的な――。

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