《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》人類の罪過(35)

「……」

遠くで戦っているはずの狂の神霊樹の聲が耳元で聞こえた……?

距離は離れているはずなのに?

しながら、私は周辺を見渡す。

――だけど、姿を見つけることは出來ない。

「何を呆けておる! 全ては、目の前のこやつが! 月読と言ったモノの意見であろう? 主を助けたいというな……」

「だけど……」

月読さんが語ったことは、的をていて――、それに……。

「だって――、この世界は……」

救いようの無い――、助けようの無い――、そんな世界と人が存在していると、見せつけられて、どうすれば……。

「それは、マスターとあの者の考えであろう?」

諭すような呟き。

その聲がした方へと視線を向けると肩の上には、10センチほどの緑を持ったセミロングのが立っていて、私を見上げてきていた。

ただ、その表は怒っているというよりは、呆れているようで――。

「私と……、月読さんの考え……?」

「うむ。マスターが、助けたいと思っている山岸直人という人はどういう人間だ?」

「それは……、自分のを顧みることなく他者を守り、見返りを求めない……。それに――、どんな時でもする……」

「――で、あろう? なら、何を迷う必要がある?」

「え?」

「佐々木! 聞く必要はないわ!」

私と、狂の神霊樹との會話に割ってってくる月読さん。

その様子に、若干の焦りのが見えるのは、私の気のせいだろうか?

「黙っているがよい! 新しき神よ」

威厳を纏った聲が、月読さんを一蹴する。

「よいか? どんな生であろうと、そこに生きていて――存在している限り、何かしら迷をかけ影響があるものだ。それら全てに責任を負うことは酷かも知れんが、それは業としてれよ。それに、マスターは山岸直人に戻ってきてほしいと願って、此処に來たのだろう? ――なら、それを貫き通すのだ。それに、我の真のマスターである山岸直人という人間は、誰かを救ったあとに後悔するような者か?」

その言葉に私は、首を振る。

先輩は――、山岸直人さんは、そんな後悔なんてしない。

警察の兇弾から親子を助ける為にした時に大怪我をした時だって、それに対して悔やんだり、愚癡を言ったりすることはなかった。

「ううん。そんな事は無かった……」

「――で、あろう? ――なら、どんな絶に曬されても、どのような窮地に立たされても、それを悔やむような人間ではない」

「さっきから聞いていれば!」

私と狂の神霊樹との會話を聞いていた月読さんが聲を荒げる。

「私の主は! 人間ではないわ! 言ったでしょう? 人の願いとみから作られた存在だと! 狂った世界に存在する事が、どれだけ苦痛だか、貴は見てきたでしょう? この世界で! 貴は、山岸直人という人が――、私の主が! どのような狀況に置かれていたのか見てきたでしょう!」

「見て來た……」

月読さんのびにも近い獨白に私は頷く。

「――でも……」

「でも? 何よ!」

「それでも、私の知っている山岸直人さんは――」

「悔やまないと!? 絶しないと? こんな終わった世界とのままに蠢く救いようのない人類というゴミが存在するが世界が! こんな世界に存在している事が! どれだけ苦痛か理解しないの!」

が歪み――、痛みに耐えかねるかのように苦痛を心のに抱えながら吐する彼――月読さんを見ながら私はようやく悟った。

も、天照大神というも、先輩を……山岸直人さんを大事に思っているという事に。

だからこそ、自らの意思で、私や鏡花さんの歩みを止めているという事に。

そして――、諦めさせる為に、この世界を見せていたという事実に。

「理解は出來たけど、納得はできない」

――でも……。

だからこそ……、私は彼たちの考えには賛同する事はできない。

だって――、そこには私がする人の気持ちは反映されていないから。

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