粒子が崩壊し、周囲の空間を巻き込んだ閃と連続する音……そして風圧に吹き飛ばされた私は地面を転げながら、土屬の魔法『アースウォール』で土の壁を作り、風をけ止めやり過ごす。

「はぁ……、はぁ……。――っ」

至近距離ではないとは言え、重力崩壊という本來なら天文學的な理現象は、相當周囲に影響があった。

おかげで、強化魔法で強化したですら、中に裂傷が出來ていてが流れでている。

私は回復魔法を発させながら風が止むのを待つ。

は、土壁に預けたまま、荒い呼吸を繰り返す。

「これでダメなら……」

月読という存在。

それは名前からして闇と月の神の名前であり、日本では最も有名な神様の一人。

神様であるという事を差し引いても、月読というの力は……、その実力は底が見えない。

何せ、こちらの攻撃を本気でない狀態にも関わらず防いだから。

それは、まるで私という存在が何も自の脅威とじていなかったからだと思う。

そこから見るだけで、圧倒的な実力差というのは理解できる……理解できてしまう。

だからこそ――。

「ほう……。なるほどのう」

「――ッ！」

丁度、風が止むと同時にの裂傷は――、回復魔法で塞がった。

そして……、立ち上がると同時に煙が晴れた中に立っていたと目が合う。

そんな彼は、微笑んではいたけど、目は私を睨みつけてきた。

「無駄だ」

風の魔法を発させようとしたと同時に、私のは唐突に認識できない衝撃に吹き飛ばされる。

を吐きながら、何度も石畳の上を跳ねる。

あまりの威力と速度に、魔法を展開する速度も追いつかない。

30メートル近くを転げたところで、何とか立ち止まることはできた。

ただ――。

「な、何故……」

あれだけの発。

重力崩壊という天レベルの崩壊に巻き込まれて、どうして無事なのか？　と、そんな疑問が中を駆け巡るけど……。

――解析完了。斥力により、重力崩壊によるガンマバーストを含む破壊を全て反、無効化したことを確認。

視界の中――、半明のプレートに流れる文字列に苦笑するしかない。

それは大賢者であり、直人さんの妹である山岸鏡花さんの分析の表示。

つまり、私の手持ちのカード……つまり、魔法では月読さんに勝てる可能は限りなく低い事を意味する。

「妾に、そのようなことを質問することは愚問であると分かっていると思うが？　そうであろう？　當代の巫よ」

私の質問に答えずに、私とリンクしている鏡花さんに語り掛けてくる月読さん。

まるで、私なんて歯牙にもかけないという様子に、私は彼――、月読さんを睨みつける。

「ふむ……。佐々木よ」

「……」

「貴様に提案をしよう」

「提案？」

「そうじゃ」

彼はコクリを頷くと口を開く。

「我が主から手を引け。そうすれば、汝の消えたの蘇生をしてやってもよい。そして、元の世界に帰るとよい」

「何を言って……」

「言ったであろう？　提案だと――、譲歩案と言ってもよい。主のことを忘れて、元の世界に戻り世界が崩壊するまでの一時、安らかな安寧を貪る。どうだ？　魅力的ではないか？」

「まったく――」

私は即答する。

ここまで來たのは先輩を……直人さんを助けるため。

それを――、その気持ちを譲るという選択肢は、私の中にはない！

「愚かであるな。當代の巫しかり――、愚かな契約を結んだ者のデコイしかり」

一度、目を閉じた月読さんは意を決したのか再度、目を開ける。

「見せてやろう！　人間が見る事のない妾の力を！」

唐突に月読さんの瞳孔に縦筋の線がり朱に染まる。

そして、160センチほどの軀であった月読さんのが巨大化していくと漆黒の狼へと変貌していく。

「あ……」

その姿を見て、思わず口から聲がれる。

目の前に姿を現したのは、直人さんが姿を変えた巨大な漆黒の獣と同一であったから。

「グルルル。我が名は、月読！　汝を消し去るモノである！」

荘厳な聲が周囲に鳴り響いた。