《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》世界の岐路(7)

天照さんと、漆黒の獣と化した月読さんの視線が絡み合うなら、私は、回復魔法で傷口を塞いでいく。

「穢れか……」

間を置いたかと思うと、靜かに重厚な音を漆黒の獣が吐いたかと思うと、その姿に霧が掛かっていく。

そして、すぐに漆黒の獣は姿を消し――、元の著姿のが姿を現す。

「そうであったな」

その月読さんの言葉に頷く天照さん。

二人の視線が、私に向けられる。

その目には敵愾心が強く宿っているのがじられた。

「……」

私は無言のまま、視界に表示されていく大賢者のログを見ながら、二人に対抗するを――、考えるが既に魔法を使う時間のカウントダウンは盡きていて魔法を使用する事は出來ない。

要は時間切れと言ったところで……。

大賢者も、それを知っていたかのように長考していた。

だからこそ――、

「お二人は、先輩……山岸直人さんが消滅してもいいと……、そう考えているという事ですか?」

「そのとおりだ」

「そうなる」

時間を稼ぐ為に、問いかけた私の言葉に即答してくる二人。

やはり相容れることはないと――、そうじとる。

「そうですか……」

「佐々木。汝は、我が主を助けようと考えている。それが本人の為であると――。そして、その問いかけが時間稼ぎだという事も既に分かっておる。汝が、魔法を使う時間を超過している事はすでに判明しておるからな」

その言葉と共に、一歩一歩近づいてくる月読さん。

その手には漆黒の刃を持つ日本刀が握られていた。

「戦う以外の決著方法はないという事ですよね」

「そうだ。最初にも互いに宣言したであろう? 互いに譲り合えないのなら――」

「押しのけていくしかない……。そういうことですよね?」

「うむ。天照、手を出すなよ?」

「わかっておる」

どうやら、天照さんと同時に攻めては來ないことが分かった。

それで、しは安堵はしたけれど……、魔法が使えない以上、不利な事は変わらない。

――歪の発生を確認。

そう――、視界のテンプレートにログが流れたと同時に、何かが罅割れる音が聞こえてくる。

「なっ!? ど、どういう――」

「まさか!?」

が呑み込めない私を他所に、月読さんと天照さんの視線は、ある一點――、先輩の方へと向けられた。

そこには、化けに食われ絶命している男と、それを見つめている先輩の姿があった。

それだけを見れば分かる。

無數の化から、先輩が――、山岸直人さんが男を守り切れなかったということが。

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