《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》世界の岐路(12)

私の発した言葉――、その真意を問うかのように真っ直ぐに私を見つめてくる彼。

「仕方ない。このままでは契約者との契約が失効されてしまうからな」

「それじゃ!?」

「だが、生き返らせることは出來ない。この神棟木(かみむなぎ)のり口にってきたという事は、世界のり立ちを見てきたのだろう?」

その言葉に私は頷く。

見てきた凄慘な世界を――。

地獄のような場所であった世界を。

「それは、全て起きた出來事だ。だからこそ、契約が為された。そして、契約が為される前に世界の構は崩壊した。だからこそ――」

「だからこそ?」

「いや……、これより神棟木(かみむなぎ)のり口より、デコイの元へと汝の神を送る。そこで、デコイを戻してみるがいい。だが、一つだけ教えておこう」

「何をですか?」

「ことが上手く行ったとしても、デコイは、神世界で汝と話した記憶を持ち越すことはできない。それを覚悟することだ」

その言葉に、私はコクリと頷く。

「よい返事だ。ならば――」

山岸直人さんの恰好をした男が、指を慣らすと、扉が現れる。

その扉は見たことがあった。

「これって……アパートの……」

「さあ、いくがよい」

私は、鏡花さんと一緒に行くために、彼の方へと視線を向けるけど「私は、行けないわ」と、拒否される。

「どうしてですか?」

思わず聲がれる。

あんなに山岸先輩を救おうとしていたのに……、どうして……。

「だって、本と繋がっている存在に私が會うのは盟約に反するから」

山岸鏡花さんは、泣きそうな表で笑みを浮かべながら私を送り出そうとしている。

それは、とても悲痛な思いを抱えているように私は思えた。

それと同時に、分かってしまった。

そう――、の勘として理解出來てしまった。

「そんなことを言ったって!」

だから、私は聲を荒げてしまう。

そんな私を周りに居る山岸直人さんの姿をした存在や、月読さんや天照さんは見てきていた。

「鏡花さんは、先輩が好きなんでしょう?」

その言葉を発してようやく気が付いた。

が――、妹である山岸鏡花さんが、山岸直人さんに好意を抱いているということに。

それと共にが切なくなる。

助けたいけど、誰かの力を借りなくてはいけない。

そして、自分の力では助けられない。

それらを何かしらの盟約や契約で縛られている鏡花さんに。

――違う。

この場に居る誰もが――、何か分からない契約に縛られているんだ……。

それは、とても殘酷なこと。

「そうか……ここに來ているのか。オモイカネよ」

「え?」

私の鏡花さんという言葉に反応したのは、山岸直人さんの姿をした存在で。

その存在は、鏡花さんをまったく別の名前で呼んだ。

    人が読んでいる<【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください