《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》彼岸の邂逅

「早く行きなさい!」

鏡花さんは私の背中を力強く押してくる。

「お兄ちゃんをよろしくね」

「鏡花さん!?」

出現した扉は何の抵抗もなく開く。

扉の中は、星空の様相を呈しており、私のは、その扉の中へ――、星空へと吸い込まれる。

そして――、扉は無常にも音と立てて『バタン!』と閉じた。

扉が閉じ――、そして扉が消えたあとは落下が始まる。

どこまでも落ちていく覚。

それは終わりをじさせない。

「どこまで落ちるの?」

そんな私の疑問に答える存在はなく、私の聲は空間に溶け込むようにして掻き消える。

時間として、どのくらいの時間落ちたのか分からない。

ただ気が付けば、落下速度はゆっくりとなっていた。

「あれは……水面?」

落ちていく先には、大きな湖が存在していた。

辛うじて理解できるのは、時折、小波が起きる波紋により湖だと言う事くらい。

さらに私の落下速度は緩慢になっていき、湖の上に著地した時には、落下時の衝撃は何もなかった。

「ここは、どこなの?」

星明りだけが周囲を照らしていて、薄暗く、それでいて水面にも星の姿が映っていて境界線が不確かな事から、とても神的に見える。

「ここは、神棟木の間だ」

「――え? や、やま……山岸せん……ぱい?」

振り返ると、そこに立っていたのは私が初めて會社で出會った頃の山岸直人先輩。

「佐々木、久しぶりだな」

「久しぶりって……、それより先輩、いま――」

何から話していいのか分からない。

それでも私は――。

「分かっている。月読の力に呑まれて暴走しているのだろう?」

「は、はい。だから先輩を助けるために、ここまで――、鏡花さんの力を借りて!」

「そうか……」

山岸先輩は、視線を私から逸らすと空を見上げる。

「佐々木。事は理解した。お前は、元の世界に帰るといい」

「――え? でも! 山岸先輩のは!」

「それは大丈夫だ。お前が來てくれたからな、投との接続が出來た。あとは、俺の方でやっておく」

「それって……、先輩を助ける事が出來たと言う事ですか?」

「…………そうだな」

し間を開けて山岸先輩は笑顔で頷くけど、その表はどこか噓を語っているように思えてしまう。

「先輩は何か私に隠し事をしているのではないですか?」

「そうか? 人間は誰しも隠し事をするものだろう?」

「――でも……」

何故か分からない。

でも、彼は――、山岸直人さんは何かを――、致命的な何かを隠している気がする。

それは理屈ではなく直的に――、そうじてしまう。

「先輩」

「戻る気になったのか?」

「鏡花さんが言いました。私のは、もう存在していないと。だから……」

「そういうことか。その程度の事なら、俺が何とかする。だから、すぐにこの場から元の場所へ帰るように」

何故か分からない。

だけど、先輩は私をこの場から遠ざけようとしているようにじてしまう。

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