《【書籍化作品】自宅にダンジョンが出來た。》れ違う願い

「やっぱり先輩は、私に隠し事をしていますよね!」

「お前には関係の無い事だ。それよりも、外界とこの場は、本來は繋がってはいけない場所。すぐに立ち去るといい」

「すぐにって……」

「そう邪険に扱うべきものではないと、妾は思うがの」

そう、聲が私の右肩から聞こえてきた。

視線を向けると、そこには手のひらサイズにまで小した『狂の神霊樹』さんがちょこんと肩の上に座り足をブラブラさせながら口元に笑みを浮かべ山岸先輩の方を見ていた。

「狂の神が口を挾むことではないだろう?」

そこで初めて棘が混じった口調で山岸先輩は吐した。

「先輩?」

「たしかにな……。消去者(イレイザー)にとって、狂の神は抹消するべき存在であるからの」

「消去者?」

「余計なことは――」

「余計ではないであろう? この娘は、消去者である貴様と縁が繋がっているのだから、だからこそ、この場まで來られたのだろう?」

「神霊樹さん。ここって、何なんなんですか?」

「さてな――」

私の疑問に狂の神霊樹さんは肩を竦めるばかり。

「ただ、一つ分かることは、ここは普通の手段では神々すら到達しえない場所と言う事は確かじゃ」

「神々って……、月読さんや天照さんでも?」

「うむ。妾の力も、かなり制限されておるからの。――さて、ここが何処かは分からぬが、一つだけ確かに言えることは、目の前にいる者は、山岸直人本人と言う事だけはたしかじゃな」

「――なら、先輩?」

「そうじゃのう。本は、そうかも知れぬが、マスターである佐々木が知っている存在と同一人かと言われれば、その限りではないのう」

「どういうことなの?」

「こやつは、佐々木が出會った山岸直人で本人ではないということじゃな」

「狂!」

「いいであろう? もはや、この娘は自が生きてきた世界が作られた世界だと言う事を理解しているのだからの」

「なるほど……」

溜息と共に先輩が私を見てくる。

「佐々木。君は、世界が再生されたという事実を見てきたのか? 世界の崩壊を見てきたのか?」

「はい」

「佐々木や、その関係者がガイアとどのような契約をしたのかも見たのか?」

「先輩を助けたいという方々が、繭のようなモノに囚われたのは見ましたけど……」

「そうか……」

先輩は、短く答えると無數の星が輝く星空を見上げると口を開く。

「佐々木、君には本來であるなら幸せに暮らしてしかった。何も知らずに――」

そう、ポツリと言葉を呟き始めた。

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