《【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド曹司》28.ゆっくりと朝ごはん
ピピピピ。
聞き覚えのある電子音はスマホのアラームだ。道香は目を覚ますと寢息を立てるマサの腕を用にすり抜けて靜かにロフトから降りる。
スマホを手に取りアラームを止めると、時刻は6時。風呂場の洗面臺で顔を洗った。
部屋のドアを靜かに閉めると、道香は朝ご飯の支度を始める。
パンの類が殘っているし、卵も早く使い切りたい。冷蔵庫を見ながらサンドイッチを作ることにして、卵を3個茹でる。
ツナの缶詰を開けると、刻んで冷凍していた玉ねぎの微塵切りと混ぜてケチャップで味を整えて、きゅうりとトマト、ハムを切って、殘っていたレタスは手でちぎる。
茹でた卵はボウルの中で荒く潰してマヨネーズと塩胡椒で味を整えて卵サラダにした。
バターロールは割るように切れ目をれてトースターで焼く。
湯で溶ける狀のスープを棚から出すと、そろそろマサに聲を掛ける。気付けば6時半になっていた。
「マサさん。朝ご飯食べられる?」
「んー。食う」
「起きる時、頭打たないでね」
「んー」
寢ぼけてし掠れた聲がロフトの上から返ってくるので、道香はカーテンを開けて太のを部屋にれる。
キッチンスペースに戻るとトーストしたバターロールにマーガリンを塗って材を挾んでいく。
「これじゃ足りないな」
道香は呟くと、殘ったら晝に回せば良いので食パンにマーガリンを塗って追加でトーストする。
サンドイッチを作っていると、目をりながらマサが道香を後ろから抱き寄せて首筋にキスをする。
「うまそう」
「顔洗って。タオルはそれを使ってね」
「ん」
短く返事をすると、寢癖でボサボサになった頭を掻きながら風呂場の洗面臺で顔を洗い、髪を濡らすと手櫛で寢癖を整えている。
焼き上がったトーストに材を挾むと食べ易いように半分にカットする。
吊り戸棚から大きめのプレートを取り出すとバターロールのサンドイッチを盛り付けて、カットした食パンのサンドイッチは別のお皿に盛り付けてテーブルにセットした。
マサが大きくあくびをしながらソファーに座るのを確認すると、ポットからお湯を注いでスープを作って部屋に向かう。
「おはよ。よく眠れなかった?」
「いや、逆に睡。めちゃくちゃ寢た」
用に肩を捻って座りながら筋をばすと、マサはテレビをつける。
「7時半まであっという間だな」
「そうだね。著替えもあるから早く食べちゃおうか」
「いただきます」
二人で手を合わせると、マサは迷わず大ぶりな食パンのサンドイッチを手に取って食べる。
道香もバターロールのサンドイッチを手に取ると、大きく口を開いてかぶりつく。
「朝から贅沢だな。ありがとな」
マサはマグカップのスープを飲みながら道香の頭をでる。
「いやいや、ただのサンドイッチだから」
「次これにしよ」
マサは卵サラダがたっぷりったバターロールを手に取ると、味しそうに食べる。
道香はスマホでタクシーの手配を済ませると、配車予約完了のメールをマサに見せた。
「7時半にはマンションの前まで來てくれるから、それに乗って帰ってね」
あ。予約名は石立だよと補足する。
「助かる。大通りで拾えない場合は電車使うつもりだった」
マサはツナのバターロールを取ると、スープのおかわりは出來るか尋ねるので、道香はマグカップをけ取るとまたポットからお湯を注いでスープを作った。
「この贅沢サンド食べて良いか」
食パンの方の材が溢れたサンドイッチの殘り半分を指差してマサが道香を見る。
「なにその呼び方」
ひとしきり笑ってから好きなだけ食べて良いよとスープをマサの前に置き直す。
「晝ご飯は別の食材使えば良いし、食べれるだけ食べて構わないから」
豪快な食べっぷりにそう言うと、道香はマグカップのスープを飲む。
「ツナとケチャップも合うのな」
「マヨネーズばっかりだと味の変化無いしね」
し話すうちにマサは大半のサンドイッチを平らげ、遠慮の塊のようにひとつだけ殘してごちそうさまと手を合わせた。
「これも食べれば良いのに」
「道香食ってねえじゃん」
「マサさんに作ったから良いんだよ」
「じゃあもらう」
結局食べるんだと道香が笑うと、味いからとマサも笑った。
空いた食を下げ、別のマグカップにコーヒーを淹れる。
部屋に戻るとマサはスーツに著替えている途中だった。
「コーヒー飲むならここにあるからね」
道香はコーヒーをテーブルに置いてソファーに座ると、マサが禮を言いながら著替えを済ませて靴下を履くとソファーに座る。
「髪の、なんならワックスあるけど」
「それくらいの時間の余裕あるから家で済ませる」
「そっか。ものの匂いがしても変だもんね」
「そこは気にしないけど」
マサはコーヒーを飲むと、今日も六時過ぎくらいに來れそうだと言い、替えのスーツも持ってくると、また泊まる話をする。
「忙しいのに。うちじゃ寛げなくない?」
「居ないでなんかあってヒヤヒヤするのはやだからな」
「そう?疲れないならいいけどさ」
「今日は段ボールが屆くんだったか」
「そう。荷造りの日」
「殘ってたら手伝うわ」
「マサさんの方の荷造りは?」
「前日で余裕。俺は取りに行けるから」
そうだった。マサの場合は住む場所を変えるだけで持ち家なんだった。道香は転出屆をどうするか考えて引っ越し當日に區役所に行きたいとマサに申し出る。
「じゃあ荷けが終わったら行くか」
「助かる」
「それ考えたらバタバタするな」
「そうなんだよ。役所関連は基本的に平日だからね」
そうこうしているに、時計の針は7時20分になった。
「そろそろ出る時間だね」
「あっという間だな」
「朝はバタつくよね、どうしても」
マサはビジネスバッグを確認して中をチェックしている。
「スマホの充電大丈夫?」
「會社行ってするわ」
まだ充電余裕あるし大丈夫と言ってスマホをポケットにしまうと、マサはふうと息を吐き出す。
「あー仕事行きたくねえ」
「困ります専務」
「道香が書ならやる気も出るけどな」
「やだ下ネタっぽい」
「なんだよそれ」
聲を出して笑うと、時計を確認してそろそろだよとマサを玄関に送り出す。
靴を履いて振り返ったマサにキスをすると、道香は戸締りはしっかりするからと、言われる前に切り出す。
「なんだよ言わせろよ」
「なんかあったらすぐ連絡する」
「おう。じゃあ行くわ」
「はい!いってらっしゃい」
マサを元気な笑顔で送り出すと、しばらくは玄関先で手を振る。早く中にれとジェスチャーでお小言を言われたので、じゃあねと口パクで挨拶すると道香はドアを閉めた。もちろん鍵は二重でロックする。
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