《【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド曹司》31.ストーカー被害

「教えた覚えはないのに會社攜帯が鳴って道香が出たのは驚いた」

「數字の羅列を覚えるのは得意なの」

「そのおかげで、助かった」

芝田は人が泥酔したと言い、タクシーを降りるなりホテルのスタッフに介助を頼んで部屋までマサを連れ込んだらしい。滅多にあることではないのでホテルのスタッフはすぐに証言をしてくれたと言う。

「とりあえず今は戸熊さんに任せるしかないが、出せる証拠は全て出した」

あとは今日の通話の畫だとマサは道香を見る。

「今転送する」

道香はマサに畫を転送すると、畫面に映った芝田を見て吐き気がした。

マサは戸熊のアドレスを知っているらしく、そのまま戸熊にデータを転送している。

「道香。それと申し訳ないが、ビザリーの方には、お前が俺の婚約者で、酷いストーカー被害に遭ってると報告させてもらった」

「え?」

「上司は把握していたようだが、木曜の商談は別の社員が対応するそうだ。勝手に話をしてすまない」

「私、仕事を辭めないといけないの?」

「そうじゃない。あいつらの罪狀が固まるまでだ。そんなに長くない」

「そんな……」

「芝田がどこまで誰を巻き込んでいるか分からない。それがはっきりするまでは、頼むから大人しくしといてくれ」

マサは悲痛な面持ちで頼むと繰り返した。

「……本當に仕事辭めなくて大丈夫なの?」

「お前がどれだけ今の仕事で努力してるかは分かってる。辭めさせないための措置だ」

「分かった……」

「戸熊さんの話では、タクミもだが、芝田もお前の勤務先までは把握出來てない。だが萬が一がある」

お前、タクミに何をどこまで相談した?マサは真剣な表で道香を見る。

「アパレルの事務だとは言った気がするけど社名は出してない。仕事の相談よりは、人が出來ないとか、そんな話しかしてないと思う」

家族の話はどうだっただろうか。よく思い出せない。道香はタクミに好意を寄せていた。今となっては複雑だし自分の甘さを呪いたいが、それもあってマサ相手とは違い酒に酔って失態をおかしたこともない。

「あ、手帳!」

「ん?」

「バカだと思うだろうけど、嵯峨崎と話が出來て嬉しくて、バーに行った後に大抵のことは日記代わりにメモを殘してたはず」

道香はカバンを取り出して、中から手帳を探す。手帳を手に取るとメモのページをめくり、何か余計な話はしていないか確認する。

もちろん何か一言でも見落とさないために、助けて貰ったあたりまで遡り容をよく見る。

「個人的なこと話したか?」

「いや、やっぱりロクなこと話してない。嵯峨崎がどんな香水が好きとか、そんな會話しかしてないし、友だちの話とかも個人が特定できる話はしてない。それに個人的なことを探られた記憶もないよ」

手帳からマサに視線を移すと、道香は私にしては浮かれてた割に口が固かったみたいで良かったかもと呟く。

「道香……戸熊さんにその手帳のコピーも提出した方がいい。お前はあくまでタクミに騙されたんだ。勝手に聞こえるだろうが、お前を守るためだ。それに申し訳ないが、勝手に婚約者だのなんだの會社に伝えたのもビザリー側での対策を取ってもらうためだ」

俺が迂闊だった。と改めてマサは頭を下げる。

「そんな事なら仕方ないよ。マサさんだってどんな報復をけるか分からないじゃない」

芝田はマサの素を知っている。それを考えるとゾッとして震えが來る。

「俺は大丈夫だ。芝田の親にはもう連絡を取ってる。それなりに出來ることは進めてる」

マサはそこまで言うと、そういえばマサって呼んでくれるんだなと苦笑いをした。

「ああ……ごめん」

「いや、仕方ない」

恐る恐る道香の手を取ると、両手でそっと包み込むようにその手を握る。

「俺のせいでこんなことになってすまない。興信所まで雇って芝田が異常者なのは分かってたのに、まさか道香まで標的に。考えたらすぐ気付くことなのに本當にすまない」

「大丈夫とは言わないけど、助けてもらったから平気だよ。でもこのまま一緒に住むのはお互いにメリットがないんじゃない?」

「道香……」

「お互い、どちらも報復をけてもおかしくない狀況だよね。いくらセキュリティが整ってても、一緒にいることで余計に相手を刺激することにならはいのかな」

「道香お前……俺と別れたいのか?」

「分からない」

道香は表を曇らせる。マサと別れてしまえばなくとも自分に矛先を向けられることはない。薄にもそう思う。けれど誰がマサを守るのだろう。優秀な弁護士が付くだろうし社會的には問題ないかも知れない。しかし誰が心まで支えてやれるんだろうか。道香はそれを考えると心が締め付けられた。

自然とマサにしがみつくように彼を抱き寄せると、その腕の中で嗚咽する。

「私が、私が居てあげないと、マサさんの心まで、支えてあげないと。でも、また、同じことが、無いとは限らない」

「道香……」

「怖い、怖いけど、マサさんを、一人にする勇気もない」

「お前がいない人生は考えたくない」

優しく道香を抱きしめながら、マサは苦しそうな聲で続ける。

「海外に伝手がある。服飾の勉強を兼ねて留學するなら手を貸せるぞ」

「マサさん?」

「確かにお前を四六時中監するようなことは出來ない。俺の目が屆かない場合もあるだろうし、今回のような不測の事態が起きない可能もゼロではない」

守るために距離を置くなら早いうちに考えた方がいい。マサの聲はし強張っている。

「じゃあ誰がマサさんを守るの」

「俺はそんなヤワじゃねえよ」

「私は要らないの?」

「そうは言ってないだろ」

「でも留學しろって」

「それはお前のことを考えたら……」

「こんな時こそ、そばにいろって言ってくれなくちゃ」

「でも道香」

道香はマサを黙らせるようにれキスをすると、そのに噛み付いた。

「痛てえな」

が切れてがうっすらと滲む。マサが手で押さえようとするので、道香は再びキスをすると、今度は優しくれ、唾を絡めた舌先でが滲んだを甘く貪った。

々悩むし考えるところもあるけど、守られて逃げるのはイヤ。私だってマサさんを守りたい。理的なことじゃなくて、あなたの心を守りたいの」

「だから俺はそんなヤワじゃねえよ」

「私が傍を離れたくないの」

「道香、お前」

刑が下ったとして、実刑でも長くても10年足らず、短ければ5年程度で出てくるのは間違いない。道香はボソリとそう溢すと、マサの目を見據えて口を開く。

「また何かされても泣き寢りはしない。何度でも突き出してやる。異常者に屈してビクビク暮らすなんてイヤ」

「言うとやるとじゃ話は違うんだ」

「分かってないのはマサさんだよ。私はあなたが居れば頑張れるの」

「……道香」

「だから離れていけなんて言わないで」

マサのに顔を埋めると道香はまた嗚咽して縋った。

大きくてあたたかいマサの手が道香の肩や背中、髪をゆっくりと優しくでる。

そのままソファーに寢転ぶようにを倒されると、道香もマサも服を著たまま激しく貪りあった。

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