《【完結】辛口バーテンダーの別の顔はワイルド曹司》41.お片付け
聞き慣れない電子音が靜かな部屋に響く。
マサは目を覚まして腕の中で眠る道香を確かめると、そっと抱きしめる腕を強める。
「んー。マサぁ」
自分を呼ぶ甘ったるい聲に芯が疼く。陶のような白いに赤い花びらをいくつも纏い、それが獨占の証だと思うと、マサは苦笑いが溢れた。
電話のような電子音はどうやらコンシェルジュからの線を知らせるインターホンのようだ。
とりあえず下著と服をに付けて起き上がると、モニター越しに通話を押して音聲を拾う。
『おはようございます、盛長様。先日ご報告をいただいております家電量販店のお荷の手配に業者の方がお見えになっておられます。ご案は如何いたしましょう』
エアコンの取り付けがあるので、道香を起こして著替えさせなければいけない。
「すみません。し寢坊してしまったので、あと10分ほど待ってもらえますか。すぐに線を返しますので、業者に伝えてください」
『承知いたしました。ご準備が整いましたらご連絡くださいませ』
通話を切るとマサは道香に聲を掛け、エアコンの設置があるから起きて服を著るように促す。
「んー。おはよ」
道香は寢ぼけ眼をると、徐々に理解したのか、大慌てで服を著てベッドの手直しを済ませると顔を洗って嗜みを整える。
「やーん。寢坊した。もう!マサさんのせいだからね」
怒っている様子だが、聲は甘えている。それにし安堵しながらマサは部屋の段ボールから取り出したデニムを履いてインターホンをコンシェルジュに繋ぐ。
「すみません。お待たせしてます。用意が整ったので作業にって貰ってください」
『かしこまりました。それではご案いたします』
線を切って5分も立たないうちに、部屋のインターホンが鳴る。
扉を開けて寢坊を詫びると、配達員は気にする様子もなく笑顔で作業に取り掛からせていただきますと部屋の中にってきた。
エアコンの設置は手分けして三人が作業し、ほかの家電を殘りの二人が運びれて作業を進める。
「奧さん、冷蔵庫はこの辺りで大丈夫ですか?」
スタッフの何気ない問い掛けに、道香は一瞬たじろいだが、位置の微調整を頼みながら冷蔵庫のかし方を確認している。
洗濯機の設置も道香が立ち合い、作の簡単な説明を確認した。
大きなテレビは壁に取り付けて貰うように指示して、マサはその位置をソファーに座りながら確認する。
全ての部屋にエアコンを取り付けて貰うと、試運転で稼働を確認してスタッフが全ての作業を終わらせる。
道香はペットボトルのお茶を人數分取り出すと、小分けのお菓子も手渡して、ご休憩のお口汚しにとスタッフを見送った。
「はあ……」
ソファーにもたれて道香が大きな溜め息を吐き出す。
「どうしたんだよ」
「疲れた」
「これから本格的に片付けだぞ」
「分かってるから萎えてるんだよ」
道香は手帳を取り出して、用にページを切り取ると、どんな家や家電が足りないか、手元に揃ったを見ながらメモに書き出して行く。
「サイズを測って、そこに収まるように買わないとね」
「そうだな」
「やることいっぱいだよ」
道香は取り急ぎ洗濯機に洋服をれると、部屋の段ボールから持ってきた洗剤や剤を取り出して洗濯機を回す。
次に買ったばかりの掃除機をセットすると、全ての部屋に掃除機を掛けて回る。
マサはカーテンを開け放して窓を開けて空気をれ替えると、外から10月末の冬が迫った冷たい風が部屋の中にり込んでくる。
「マサさん暇でしょ。フロアモップ掛けて」
「仕方ねえな」
道香に渡されたモップに専用のシートを取り付けて床の拭き掃除をする。
道香が掃除機を掛けた後なので、さして汚れていないはずだが、作業で人が出りしたので念にモップを掛けた。
「あ、マサさん。電話回線ってどうなってるか分かる?」
「なんでだ」
「おばあちゃんがファックスしか使えなくて、固定電話を置きたいの。電話機は持ってきてるんだけど、すぐ使える?」
「固定電話か。道香は退去の時解約したのか?」
「マサさんが回線使ってるからわからないから引き継ぐかもとは伝えてある」
「ならほどな」
道香の契約先に連絡して回線工事の依頼を済ませると、今日の夕方には作業員が來るらしい。
マサは寢室のクローゼットに設置したローチェストに下著などの服をしまい込むと、自分の荷ほどきは終わったと言って道香に手伝えることがあるか尋ねる。
道香はドレッサーの置き場を迷っているようだったので、二人で寢室に運びれ、ベッドをし窓際に寄せると、壁際のスペースを空けてそこにドレッサーを設置した。
次に、道香の部屋の家電をセッティングしていく。機にデスクトップをセットして、下の段にプリンターを設置するとBluetoothで接続し、無線LANに繋いでパソコンのネットの作を確認する。
AVラックにテレビとコンポをセットすると、道香が持ち込んだCDやDVD、Blu-rayを次々と収納する。
本棚には仕事関連の資料らしいファッション関連の専門書やビザリーの特集が組まれた雑誌やビジネス書など、その他に小説などの本を高さを揃えて棚を微調整してれ込んでいく。
洋服は仕事用と私服に分けて、カジュアルな私服は私室のクローゼットに、通勤著は寢室のクローゼットにしまった。
玄関の大きなシューズクローゼットにブーツやパンプス、冠婚葬祭用に買った13センチの厚底のピンヒールや、サンダルやスニーカーを次々と並べるように片付けていく。
「あれ?」
そこでようやく違和に気が付く。マサの靴がない。マサに尋ねるとすっかり忘れてたと言って、一人マンションに取りに戻った。
道香はその間に段ボールを次々と開封して片付けを済ませる。
食は數がないので、収納棚に全て収まった。持ってきた調味料も適當に置いて並べると、フライパンや鍋がこのキッチンには不釣り合いで笑いが込み上げる。
メモにそれらを書き足すと、バスタオルやタオルを備え付けの棚にしまう。
洗濯が終わった音を確認して洗濯を干そうとしたが、干し竿を置いてきてしまったことを思い出して、仕方がないので乾燥機で乾かした。
道香はメモに干し竿と書き込むと、殘った段ボールとトランクケースの中を取り出して、各々収納すべき場所にそれらを片付けた。
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