「……まずは何をしよう？」

焚き火にあたり、しばらくを溫めて服も乾いて來た頃、ケイはこれからのことを考えた。

まず、今のであるエルフの事を理解しようと、アンヘルの記憶を探り始めた。

「…………ひどいな」

記憶を呼び起こすと、エルフが減っていったのも當然のように思えた。

エルフには幾つかの守るべき使命があり、それを馬鹿真面目に守ってきたことも數が減ってきた原因かもしれない。

１つ、エルフは生の命を奪うことをずる。

２つ、エルフはを食す事をずる。

３つ、エルフは他の生を使役することをずる。

これらが、神によって長命を與えられたエルフに課せられた使命であると、代々け継がれてきたらしい。

この使命を守るとなると、人族がエルフを奴隷にすべく近寄ってきても大した抵抗ができないではないか。

怪我はさせても命を奪うななどと言っていることと同義で、「生の命」といっていると言うことは、魔のことまでもっている。

この世界では魔も存在して、魔素によって生や質が変異したり、魔素が自然と集まる事で自然発生したりと々原因はあるらしいが、いずれにしても人々にとっては危険な生だ。

それらの命を奪うことで、人に限らず他の生は自然とが強化されていく。

「ＲＰＧで言ったら、一生レベル１でなければならないってことだろ？」

ケイが呟いたように、その概念があるか分からないが、レベルが上げられないエルフが、普通にレベルを上げた人間に勝てるはずがない。

２つ目の、を食べてはいけないということは、ベジタリアンだということだろう。

そういった設定の小説を読んだことあるので理解はできる。

しかし、最後の魔の使役まで駄目だとなったら、完全に詰みだ。

この世界には魔法もある。

そして、その中には従魔と呼ばれるものがある。

や魔と契約して、戦闘や生活に利用することができるようだ。

自分が戦闘に長けていなければ、従魔が代わりに戦えばどうにかなるという発想からできた魔法らしい。

エルフが自分で命を奪えないなら、従魔に命令して命を奪えばを守ることができるかもしれないと考えたが、その従魔を持つことも許されていないらしい。

「……教唆犯になるってことか？」

ケイの思った通りで、命令したことは自分がしたことと同じだということになるみたいだ。

レベル１では抵抗しても無駄。

従魔にやらせても駄目。

エルフにはこれまで逃げの１択しか存在していなかったようだ。

「冗談だろ？　そんなクソルール守ってたらあっという間にまた死んじまうよ！」

流れ著いたここがどこだか分からない。

もしかしたら人や魔に遭遇するかもしれない。

それなのに、そんな訳の分からない使命を守っている訳にはいかない。

「エルフの掟だかなんだか知らないが、こんなの死んでまで守るべきもんじゃない。こんなの無視だ！」

これまでどれ程の年月が積み重ねられた伝統だか分からないが、今のエルフの狀況から考えるに、こんなのは悪しき伝統でしかない。

今のこの命は、ケイがアンヘルという年から奪い取ったという気持ちも僅かながら存在している。

そんなバカげた伝統なんかよりとてつもなく重い。

良いものはけれ、悪しきものは切り捨てる。

中はどちらかというと日本の男子高校生のケイは、それが生きていく上で大事だと考え、この掟には従わないことにいあっさり決めた。

「それはもう良いとして、まずは寢床探しだな！」

掟のことはもうどうでもいい。

それよりも、今はこれからのことが大事だ。

海面に映った今のケイはく、アンヘルの記憶からだと５歳。

そんな子供が生き殘るためには、なるべく人や魔に見つからないようにしなれければならない。

そのためにも、まずは安全に寢泊まりできる場所の確保が必要だと考え、ケイは焚火の火を消し、周囲を警戒しながら海岸から離れ始めた。

「……そうだ！　何か武になるは……」

海岸から離れ、人が通っていないような草むらをゆっくり歩くケイは、今このとき何かに出くわした場合のことを想像し、今さらながら持ちから武になりそうなものを確認し始めた。

「ナイフだけか……」

魔法の指の中で武になりそうなものは、薬草や食材となる野草を採取するときに使うナイフしか見つからなかった。

リーチの短い五歳児がナイフで魔に挑まなければならないなんて、何の罰ゲームだろう。

しかもこの、さっきじゃがいもを食べたとはいえ、碌に食事をしていないせいで痩細っていてに力があまりらない。

こんな狀態では、どんな魔でも出た瞬間殺されること間違いなしだ。

とはいっても、これしかないのでナイフを出して腰に裝著した。

「……主食はジャガイモしかないようだから、植えて増やしたいところだな……」

警戒をしながら進むが、ケイはこれからの食料のことが気になった。

先程魔法の指のなかに何か食料がないか探ったが、ジャガイモしかっていなかった。

この付近に米や麥が生えている訳もないだろう。

となれば、今持っているじゃがいもを増やすしかない。

魔法の指には、他に炭水化となるは何もない。

唯一の食料ジャガイモがなくなった場合どうしたらいいか分からない。

これから先のことを考えたら、軽々に食べてしまうのはいかがなものか。

先程大きめと小さめのジャガイモは食べ、殘りは８個しかない。

「畑もつくらないとな……」

そんなことを考えながらし坂になっている茂みを登っていった。

◆◆◆◆◆

「ん？」

周囲を警戒しながら１０分ほど歩いていくと、そこだけぽっかりと空いたように樹々が生えていない場所にたどり著いた。

その中央には小さいの開いた大きめの巖があり、今の小さいケイなら雨風凌ぐには十分そうなじだ。

「ここなら海岸に近いし、多の畑も作れそうだし、良いんじゃないか？」

ケイが上って來た坂は流れ著いた海岸の上にある平地、もしも嵐や悪天候で波が高くなってもよっぽどのことがない限り波にのまれることはないだろう高さだ。

好條件の場所が見つかり、ケイはここを拠點にすることに決めたのだった。