「……熊とかいないよな？」

ケイはもしものことを想像しながら、発見した窟の奧を恐る恐る覗いた。

熊の姿はないようなので、ケイはそのまま中を確認した。

ぱっと見で奧行き５ｍ、橫幅１ｍ半、高さは２ｍといったくらいだろうか。

「拠點はここでいいとして、明日からのことを考えないと……」

そういってケイは魔法の指から木の棒と、漁に使うような網、小さい釘を取り出した。

持っている食料はじゃがいものみ、しかも今後を考えるとそれに手を出すのは躊躇われる。

そうなってくると、

「釣りっきゃないっしょ！」

すぐ側が海なのだから思いつくのはこれだった。

直接海にって銛で突くことも考えたが、海の中にも魔が存在しているかもしれない。

それを考えると銛は駄目だ。

なので、釣りをすることにしていたケイは、焚火で服を乾かすために木を集めていた時に海岸に流れ著いていた流木の中から釣竿にできそうな木を、同じく流れ著いたであろうの開いた漁の網と木に打ちつけてあった小さめの釘を見つけて魔法の指の中にいれておいた。

「よし！　作ろう！」

窟の前に座り、ケイは拾ってきたたちを細工し始めた。

ナイフで木を削り、網を解いて一本の紐になるようにしたり、釘を石でコツコツ叩いて針のように形を変えていった。

大工の息子というのがあるからなのか、ケイは手先が用である。

こういったチマチマした作業も嫌いではない。

「できた！！　うぅ、それにしても寒いな……」

しばらく無言で作業をしたおかげか、結構早く作り終えた。

作業をしているうちに日も暮れ始め、しずつ寒くなって來た。

「……え？　南半球？」

この場所でもついてすぐに焚火をしていたのだが、それでもちょっと寒い。

それが気になっていたら、アンヘルの記憶が浮かんできた。

現在この世界は、ケイが前世で溺れたのと同じ８月。

にしては気溫がおかしいと思っていたが、どうやらここは南半球らしい。

「……寢たら死ぬんじゃね？」

南半球なら８月の季節は冬。

９月ぐらいから暖かくなりだすとはいっても、あと１か月は寒いまま。

そんな中布も何もない狀況で窟で寢たら、凍死する恐れがある。

「どうしよう…………っ！？　魔法か！？」

そのことを悩んでいたが、すぐに答えが出た。

単純に魔法で窟を改造すれば問題はなくなる。

小説でよくありがちな、エルフは魔法が得意な人種というのはこの世界でも同じらしく、焚火を著火した時のようにアンヘルも魔法が使える。

ならばそれを利用しない手はない。

「…………あっ！？　できた？」

試しに土魔法で窟の部の形を変化させてみたら、しずつ形が変わっていった。

予想以上に簡単にできたため、ちょっとが薄かった。

もしかしたらアンヘルの記憶があるからだろうか。

それはともかくとして、ケイは窟の部を変化させていった。

といっても、寢る場所の床を平らにしたのと、寢ている時の寒さを改善するため、奧に暖爐を作っただけだ。

「り口も塞いだ方が良いかな？」

海を漂流して疲労したのことを考えるともうすぐに眠りたいが、この世界には魔が存在する。

寢てる最中にパクリとされたら話にならない。

そう考えたケイは口も塞ぐことにした。

「これでいいな！」

ちょっと時間はかかったが、なんとか口を塞げた。

當然ながら、完全には塞がず空気をれ替える用の小さな隙間は作ってある。

「あ～ぁ、もう疲れた。寢よ……」

５歳のでは力がないのも當然だ。

魔法を使ったのもあって結構疲れたので、日が暮れて間もないが、ケイはもう寢ることにした。

◆◆◆◆◆

「……う～ん？　今何時だ？」

起きたはいいが、り口を塞いでいたせいでもあまりってこないため、外の狀況が分からない。

そもそも、時計は持っていないので時間は分からないのだが……。

ケイはり口を開け、周囲を警戒すると太の位置を確認した。

「釣りに行こ」

南半球なので北に見える太を見ると、まだ東側にあるようなので午前中なのは予想できた。

魔法で出した水で濡らした布で顔を拭き、目を覚ますと昨日作った釣竿を魔法の指に収納し、昨日の海岸に向かって坂を下り始めた。

道中は、魔や人間が現れないか注意しつつも、そこら辺の石をどかして釣りの餌になりそうな蟲を捕まえながら進んで行った。

８月なのに冬なのでたいした數は見つからなかったが、とりあえず半日は釣りができそうな分は確保できた。

「始めるか……」

し巖場の場所で糸を垂らし、ケイは釣りを始めた。

海面まで２ｍほどの高さの軽い崖のような場所にすわり、腳をぶらぶらさせながらかかるのを待つ。

流木は結構な量拾って魔法の指に収納しておいたので、を冷やさないように焚火をするのは忘れない。

「やった！　……っ！？」

結構雑なつくりの竿だが、釣りはまあまあ順調な釣果だった。

しかし、５匹めの魚を釣り上げ喜んでいると、ケイはあること気付いて言葉を失った。

ケイのすぐ近くに小さい黒い渦のようなものが空中に出現していたからだ。