《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第8話
「錬金を試そう!」
蛙のを食べた翌日、ケイは魚釣りに1日を費やした。
しかし、前回ほど釣れず釣果は8匹だった。
釣りをしている間、竿に何の反応もない時間が続いたので、暇つぶしに魔法の書に目を通していた時、あるページで手が止まった。
ラノベなんかでもよく見かけた技である錬金だ。
魔法陣、魔石、素材、それに大量の魔力があれば使えるらしく、人族の間では大量の魔力を必要とするわりには効果がないことから魔力食いの技と有名らしい。
それでも、材料さえあればイメージ通りのが作れるというのは今のケイにはありがたい。
ただ、大量の魔力と言うのが気になるところだ。
魔法の書に、魔力を使いきったら気絶すると書かれていた。
もしも、錬金をして魔力を全部使ってしまったとき、外で気絶しては魔の餌になりかねない。
夜にちゃんと拠點で魔進阻止の対策をしてからやるべきだろう。
蛙ラーナを捌いた時、心臓の側に小さい石が見付かっていて、これが魔石だとアンヘルの知識から分かっていたので取っておいた。
夕食を食べ終わり、後は寢るだけ。
拠點のり口に蓋をして萬全の狀態で錬金を試すことにした。
「何を作るべきか……」
いざ、試すとなると何を作るか悩むところだ。
薄い板の上に書いた魔法陣の前で胡坐をかき、ケイは腕を組んで首を捻る。
「実験の意味も込めて、竿とかをもうちょっと良くしよう」
現在使っているのは、手作りの竿、網を継ぎはぎした糸、釘を曲げた針。
それでも何とか釣れているが、もうし良くなればもっと釣れる気がする。
錬金だとそれが修正できるみたいだ。
失敗して使えなくなっても、今日の釣りでちょっとだけ食材に余裕ができたのだから試してみたい。
もしもの場合は、魔法の指にもう一度手作りで作り直すだけの材料はっている。
「どうせならリールが作れないかな?」
松田啓の頃、伯父さんの海の家に手伝いに來ていた時、お盆が過ぎると海水浴客は減る。
そうなると啓が手伝う必要もなくなる時もあり、暇になった啓に伯父さんが、近くの釣り場で釣りをしたらと進めてくれた。
それで釣りにちょっとハマったので、その時の慣れた道に近付けたい。
「よし! ハッ!!」
一息ついて気合いをいれ、ケイは材料を乗せた魔法陣に魔力を流し始めた。
魔法の基礎は魔力のコントロール。
アンヘルも毎日やっていたようなので、ケイも暇を見つけては練習をしている。
しかし、まだ魔力を使い切るような経験がないので、どれほどで気を失うのか分からない。
限界を見極めるためにも流す魔力は一定に、ゆっくりと流していく。
“ポンッ!!”
「おぉ、……功か?」
しの間魔力を注ぎ込んでいると段々と魔法陣が輝きだし、一気に輝いたと思ったら煙が噴き出した。
しずつ煙が治まると、魔法陣の上には綺麗に真っすぐの竿、一本の糸、返しのついた針が乗っかっていた。
リールも一緒に作ろうと思っていたが、リールはリールで錬した方が上手くいくような気がしたので今回は止めておいた。
その分、功時のイメージをしっかりできたのが良かったのか、完璧と言って良いほど自分の思った通り釣竿ができた。
「やった! でき…………た……」
功に喜んだケイだったが、急に襲った疲労にクラッとした。
「結構注いだのにギリギリ間に合うくらいか……」
初の錬金の功は嬉しいのだが、この疲労はかなりつらい。
どうやら錬金一回で今のケイの魔力ほぼ全部といったところらしい。
「あ~駄目だ。キュウお休み……」
“コクッ!”
襲い來る疲労に耐えられなくなったケイは、寢床に倒れるようにうつ伏せになり、側で見ていたキュウに聲をかけて目を瞑った。
「……魔石がしいな」
翌日、いつも通りにキュウに起こされて目を覚ましたケイは、昨日の錬金の功に気分が良くなっていた。
気を失うように眠りについたが、調を確認するに、特に後癥のようなものはないようだ。
あの疲労はしんどいが、我慢できないほどではない。
魔法の書に書いてあったように、たしかに錬金は魔力食いというのは理解できた。
しかし、材料があればしいが作れるならこれほど使える技はない。
材料の中でも、魔のに存在している魔石の手が一番困難だ。
「安全面を考えると、冬眠中の蛙を倒した方がいいかな?」
今回使った魔石は、ある意味偶然見つけたに過ぎない。
とはいっても、今回も眠っていて攻撃される心配がない蛙を見つけるのが一番安全かもしれない。
それに食材にもなって一石二鳥だ。
「次はリールかな?」
昨日は作るのを見送ったが、今度はリールの作を試したい。
功験から、もう楽しみでしかたがない。
「そうだ! 武も考えないと……」
魔法の練習は毎日のようにしているが、まだちょっと発までが遅い気がする。
エルフは魔法が得意な人種らしいが、相手の命を奪わない程度に痛めつけることは認められているため、武の訓練もしているらしく、アンヘルも父や叔父に基礎の型を教わっていたらしい。
しかし、ちょっと訓練しているからと言って、5歳のこので接近戦は期待が薄い。
やはり魔法で遠距離攻撃がましい。
その攻撃手段はケイの中では見つかっている。
「やっぱり銃でしょ!」
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