《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第18話
一歩間違えたらスライムに殺されていたケイは、軽いトラウマを吹き飛ばそうと、西に向かわずに數日地道に食材手をしていた。
10月にり、暖かくなったおかげで々な野草を発見した。
味と見た目は前世と同じなのだが、5、6cmほどの長さの細いニンジンや、インゲン豆のような実をつける蔓つるを見つけることができた。
「……味噌って豆ならだいたいできるんじゃなかったけ?」
いきなり味噌を作ろうと思っても、普通の高校生だったケイの知識では大雑把にしか覚えていない。
味噌も醤油も大豆を原料にしていて、塩と麹でさせる。
たしかそんなじだったと思う。
テレビの無人島開拓している人たちの番組で、あまり見たことも無いような豆で味噌を作ろうとしていたことを思い出す。
あの時、麹を使っていたかどうかまでは思い出せない。
「……でも、たしか……」
その時できた味噌は、評判がいまいちだったような気がする。
そう考えると、大豆でないとだめなのだろうか。
「そもそも、麹ってどうやって手にれるんだ?」
味噌も醤油も、ついでに言うなら酢も酒も、麹が必要だったはずだ。
塩は作ろうと思えばどうにでもなるが、麹の手法が全く分からない。
「麹なしでもできるんだっけ?」
番組を見ていた時の記憶を懸命に思い起こすが、まさか自分が作ることになるとは思わなかったので、重要なその部分がどうしても思い出せない。
なんとなく覚えているのは無人島に生えている豆を使っていたことで、麹は使っていたかどうかが思い出せない。
「錬金じゃ作れないだろうし……」
魔法の書に書かれていた注意には、錬金で生きを作ることはできないと書かれていた。
麹はそもそも菌。
生きが作れないのでは、生きである菌も作ることはできないだろう。
「試すか?」
そもそも、生きを殺したりしてはいけないと言う掟が存在していたエルフだから、もしかしたら命を作ろうなどと言う実験をすることもなく、魔法の書に書かれている可能がある。
書かれている通り失敗するかもしれないが、もしかしたら功する可能もあるのではないかと思う。
しかし、失敗したらせっかく危険な目に遭いながらも手にれた魔石が無駄になるかもしれない。
「魔法があっても、何もかもがどうにかできる訳ではないんだな……」
今更ながら魔法の不便さをじたケイだった。
「とりあえず、塩と豆だけで作ってみるか?」
野菜として食べる用と、麹なしで味噌が作れるかどうか実験してみる用に、ジャガイモの近くに作って置いた畑に植え替えることにした。
細く短い人參も、野生ではなく手れすれば大きくなるかもしれないので育ててみることにした。
「こっちに來るの久しぶりだな……」
ケイの言う通り、拠點の小島の西にある陸地に來るのは久しぶりだ。
弱いことで有名なスライムでも、気をつけないと5歳のこのではあっという間にあの世行きだということを理解した。
「気を引き締めて行こう!」
以前のような危ない目に遭わないように、ケイはきっちりと周囲を探知をすることに決めた。
毎日魔法の練習は行っているので、前よりも魔力の扱いはムーズになって來ている。
油斷さえなければ危険な目に遭うことはないはずだ。
「んっ? …………スライムと蛇か?」
探知をし、ゆっくりと周囲を見渡す。
そもそも、西に來るのはこちらの陸地がどれほど広く、人がいるのか。
拠點にしている小島では手にらないような、魔や食材が見つからないかの探索をするためである。
エルフの壽命がどれ程なのかは分からないが、長命だということだけはアンヘルの知識から読み取れる。
ここの全貌を把握するのに、慌てる必要はない。
しずつ先を進んで行くと、探知に反応があった。
離れた所で、一度だけ冬眠中の狀態で捕まえたことがある蛇と、何度も見たことがあるスライムが向かい合っていた。
お互い警戒し合っているのか、かないでいる。
「チャンスじゃね?」
どっちが強いのか見ていたい気持ちもあるが、二匹ともこちらの存在には気付いていないようだ。
慌てず、騒がず、ケイは両手に魔力を集め始めた。
「フッ! ハッ!」
右手で風の刃を放ち、左手で火の玉を放つ。
蛇とスライムが飛んできた魔法に気が付いた時にはもう遅く、風の刃で蛇の首が斬り飛ばされ、火の玉が著弾したスライムは蒸発して消え去った。
「……他にはいないな」
ちゃんと他に魔が潛んでいないか探知してから、ケイは収穫を拾いに向かった。
ちなみに、手にれた魔石を使い、最近は錬金で大工道を作っている。
いつも命の危険がある狀況なので、気が休まる時間がない。
その張り詰めた気持ちを落ち著かせるために、広げた拠點の中に設置する家なんかをその大工道を使って作っている。
別に錬金で作ろうと思えば家も作れるのだが、それだと味気ない。
「キュウ! お前用のベッドだぞ」
蛇とスライムの決闘を邪魔し、他にもちょこちょこ野草の採取をしてきたケイは、キュウのための篭型のベッドを作ってあげた。
“ピョン! ピョン!”
「嬉しいか?」
“コクコクッ!”
キュウも新しい寢床が嬉しいのか、らかい葉っぱを集めたベッドの上で飛び跳ねた。
喜んでくれているキュウが可かったので、ケイは優しく頭をでてあげた。
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