「えっ？　エルフを知らないの？」

「うん。エルフという種族がいるなんて聞いたことないわ」

雲一つない快晴。

もうすぐ夏にる１１月後半。

気な気候にのんびりしたくなったケイは、今日は釣りをしようと思った。

花も一緒にどうだとうと、二つ返事で楽しそうについてきた。

「子供の頃、家族３人で釣りに行ったな～……」

テキパキと餌をつけて糸を投げる仕草で経験者だと分かる。

久々の釣りに懐かしく思ったのか、花はしみじみ呟いた。

ケイとしては、子っぽく餌をつけるのにワーワーいうようなら面倒だと思ったのだが、その心配がなくて助かった。

楽しんでもらえて嬉しいのだが、家族のことをいう時に表が暗くなるのはし困る。

何があったのか聞いてもいいものか判斷に困るからだ。

「あっ！？　釣れた！！」

その表も、し経って魚が釣れれば霧散した。

釣れた魚を見せてきた花の表は、とてもいい笑顔だった。

花がちょこちょこ釣り上げる中、ボウズのケイはサマーチェアに腰かけてキュウとマルを相手に暇つぶしをしていた。

ケイの方が予備の竿だからといっても、この差はちょっとへこみそうだ。

そんなケイをじっと見ていた花は、

「ケイの耳は長いのね？」

と言ってきた。

そして冒頭のようなやり取りになる。

どうやら花は本當にエルフを聞いたことがないようだ。

エルフは元々人族大陸の西の端に住んでいた數種族、両親とも極東の國の日向出だから仕方がないかもしれない。

「々あって人族大陸では生きにくくなってね……」

知らないなら、貴族に獻上したら大儲けなどとか教える必要はないだろう。

せっかく話ができる人間ができたのだから、多くを語ってギクシャクした関係になるのは控えたい。

ケイは言葉なにこの話をきりあげた。

「じゃあ、私と同じようなものね……」

花も祖父の追っ手からずっと逃げ続けてきた。

ケイも自分と同じように何かを隠しているようだが、同じ境遇にし気が楽になる。

似た者同士なのだということが、なんとなく嬉しい気持ちも花には沸いていた。

「それにしてもいい天気ね……」

釣りたての魚をおかずに海を眺めながら晝食をとると、花の竿の方も當たりが來なくなった。

し暇なじがして不安だったが、どうやら花もこんな時間を楽しんでいるようだ。

暇を楽しんでいると心に余裕が生ませる。

辛いことを忘れるとまではいかなくても、一時考えなくてすむ。

そだけでも今の花には新鮮な発見だった。

「昨日ケイが使ってた筒のような武はなんなの？」

「あぁ……、これ？」

暇な時間が続き、眠くなってきた。

その眠気を飛ばそうと、花は昨日見て気になっていたケイの武のことを尋ねた。

ケイも釣れずにいたので丁度良かった。

「これは銃っていう武で、ここを引くと弾が出るんだ」

“ポンッ！”

そう言って、ケイは一発海に向かって発した。

魔力は纏っていないため、飛び出た弾は大した距離飛ばずに落ちた。

「魔力を纏わないとこんなもんだけど、魔力を纏うと……」

“パンッ！！”

軽く銃に魔力を纏い先程と同じように引き金を引くと、先程とは比べにならないほどの威力で弾が沖へと飛んで行った。

「流木とかで小さい弾を作ってそれをれてあるんだけど、それを魔力を覆った銃で発ってわけ」

「なるほど……」

原理は分からないが、昨日の腕前を見る限りケイは遠距離の攻撃が得意なのだろう。

ケイの長所を生かすには最適な武かもしれない。

「でも、それが通用しなかったら？」

「発された弾にも魔力が纏ってあるから、撃った後でも多はコントロールはできるし、相手の弱點に合わせて弾の魔力を屬付與・変化できる。この島ではその可能はないけれど、外の世界ではありえるかもね」

この１０年で魔力の総量や作もかなり上がったと自負している。

それでも世界は上には上がいる。

その謙虛さを失った人間は傲慢になりがちだ。

々な狀況を想定しておかないと、命が軽く扱われるこの世界では淘汰される。

エルフ族がいい例だ。

とは言っても、ケイも四六時中そんなこと考えている訳ではないが。

「別にこの銃は遠距離で戦うだけのではないよ。ちゃんとこれを使った近接戦も想定している」

“ボッ！”

「こうやって全に魔力を纏って戦えば大丈夫」

銃に魔力を纏えば威力が増す。

ならば、自分に魔力を纏ったらどうなるかとケイは考えた。

銃や手に集められるのなら他の場所にもできるはずだ。

そう思ってやってみたらかなり難しく、使いこなせるようになるまで數年かかった。

「魔、魔闘……」

全に魔力を纏ったケイを見て、花は目を見開いた。

ケイは１５歳といっていたが、日向の剣士にとって中の技ともいえる技を、その若さで、しかも獨學で使いこなせるようになるなんて信じられなかった。

相當な鍛練をおこなったことが容易に予想できる。

「へ～……、これ魔闘って言うんだ？」

どうやらケイはこの技の名前すら知らなかったようだ。

父の憲正は使いこなせたが、花はまだ無理だ。

『もしかしたら、ここに流れ著いたのは本當に天からの導きなのかもしれない』

ケイに教われば、自分も父のように魔闘を使えるようになるかもしれない。

追っ手が來ても返り討ちにできる。

そう思うと、花は心の中で神に謝した。