「外とあまり変わらないのね」

昨日の約束通り、ケイと花は島唯一のダンジョンへ向かった。

ってしばらく経ち、ここまでに出現した魔の想を花は率直に述べた。

「魔とか俺が捨ててるからかな？」

このダンジョンには、ケイが魔や魚の臓や骨をゴミ捨て場のようにしていた。

それを多く吸収していたからか、外と大差ない魔ばかりが出現しているのかもしれない。

ケイは花の想に返すように答えた。

「もう５層になるけど準備はいい？」

「えぇ！」

外と変わり映えのない魔ばかりだからか、すんなりと５層のボス部屋の前にたどり著いた。

昨日も言ったが、ここのボス部屋は毎回変化するタイプで、ると扉が閉まって倒すまで出出來なくなる。

倒せば１日たたないと再出現することはなく、通行自由の狀態になる。

強さに當たりハズレがあるので、注意が必要だ。

ボス部屋の前でケイが確認すると、花は元気に返事をした。

「……今回は蛇か」

「でかいわね」

中にって２人が出した想はこれだった。

外で時折見つける蛇の魔がボスとして出現した。

しかし、いつもみる容姿ではあるが、大きさが全然違った。

いつものが最大でも全長３～４ｍほどだというのにもかかわらず、このボスは１２ｍはあるのではないかという程にでかい。

長さもそうだが、も厚い。

いつもは簡単に倒している魔でも、でかいだけで圧迫を覚える。

「危なっ！？」

「大きさが違うだけで、いつも通り噛みつきと尾に気を付けて！」

「なるほど、了解！」

この手のボス戦は、ケイは経験済み。

蛇が獨特のきで２人に迫ると、花に噛みつき、ケイに尾を振って攻撃してきた。

それをケイは危なげなく、花はちょっと慌てたように躱した。

大きさが違うだけなら注意點はそれ程変わらない。

ケイが注意點を言うと、花は納得した。

それから噛みつきと尾の攻撃を躱していると、ケイが言ったように攻撃パターンが変わらない。

そうなればでかいだけで、別に脅威ではなくなった。

「ハッ！！」

“ザシュッ！！”

パターンが読めた花は、噛みつき攻撃を躱すと共に蛇の脳天に剣を突き刺した。

その一突きが脳に直撃したのか、巨大蛇はそのまま地面に崩れ落ちてかなくなった。

「フゥ～……」

攻撃パターンが分かっていたとしても、その一撃はかなりの威力。

食らえば一発で瀕死になりかねないと考えると、思ったより力を疲労した。

ダンジョン初心者の花は、息を吐くと共に額に掻いていた汗を拭った。

「一息ついたら次へ行こうか？」

「うん」

ボスの蛇が倒され、次の階層に行く扉が開いた。

し疲労した花のことも考え、ケイはここで軽く休憩をしてから進むことにした。

「今日は１０層をクリアしたら帰ろうか？」

「そうね」

休憩を終え、次の層を探索している途中で、これまで使った時間からケイは花に拠點に帰る予定を提案した。

危険だからと置いてきたキュウとマルのことが気になる。

元々日帰りの予定で來たので、花も異論はなかった。

「地図はあまり変わっていないみたいね？」

「そうだね」

ケイはこの島に流れ著いてから數年、島の植を使って紙が作れないか錬金で試しまくった。

その結果、質は悪いが紙と呼べるものは作れるようになった。

ダンジョンを発見して中を探索するうえで、部の地図があった方が良い。

そのため、毎年記録するようにしている。

花にも同じ地図を渡し、去年と変化がないか１層から全部調べながら進んできた。

最短距離ではないので時間がかかるが、危険な目に遭わないためには必要だろう。

結局、しだけ変化があったが、去年と大きな差はなかった。

そして２人は順調に進み、１０層のボスに挑むことになった。

「カウチョ（ダンゴムシ）！？」

中にって目にったボスを見て、花は驚いた。

島までは見ないような魔が出現したからだ。

「俺も見たことないタイプの魔だ」

この魔は、ケイも見たことがなかった。

だが、島には普通の蟲も存在しており、ダンゴムシも存在している。

偶々ったダンゴムシを吸収したのだろうか。

大きさは３～４ｍ程の大きさなのは全然違うが……。

“ギュルギュル！！”

「っ！？　橫に避けて！！」

「わっ！？」

ダンゴムシが丸まったと思ったら、高速で回転を始め、一気に２人に向かって転がって來た。

その攻撃にいち早く気付いたケイは、咄嗟に花へ指示を出した。

その指示にすぐ反応した花は、なんとか躱すことに功する。

「何あれ！？　まともに當たったら潰されちゃう」

回転による攻撃を躱されたダンゴムシは、そのまま壁へとぶつかった。

しかし、その速度と重量によって生み出された破壊力はかなりのもので、壁が大規模に凹んだ。

その威力に、花は顔を青くした。

「……大丈夫！　あの速度で急激に方向転換はできない」

慌てる花とは反対に、ケイはすぐにさっきの攻撃の弱點を発見した。

威力はすごいが、ぶつからなければなんてことはない。

「剣じゃ駄目だ。花は今回は避けることに集中して！」

「分かった！」

自分でも分かっていたのか、花はケイの言いたいことをすぐに理解した。

回転しているあの相手に攻撃しても、剣が弾かれるだけだ。

花は指示通り躱すことに専念した。

「ここだ」

“パンッ！！”

「ギギッ……！？」

回転しているから正面からの攻撃は通用しない。

なので、橫から銃による攻撃を放つと、ダンゴムシのにを開けた。

ダンゴムシも痛みで丸まるのを一旦止め、ケイを睨みつける。

“パンッ！！”“パンッ！！”

効くのならそのまま繰り返すだけでいい。

何発もけたダンゴムシは、をだらけにして崩れ落ちた。

「やっぱり遠距離攻撃も必要ね……」

今回は役に立たなかったからか、花は以前言われた攻撃の引き出しを増やすことの重要を再認識した。

「じゃあ、帰ろうか？」

「うん」

これ以上先へ進むと、帰るのが深夜になってしまうかもしれない。

キュウたちのことを考えると、ここが引き際だろう。

予定通り２人はキュウとマルの待つ拠點に戻っていった。