１０層まで攻略し、ケイと花は一度拠點に戻った。

翌日、殘りの階層を攻略するため、２人はまたダンジョンにる。

２４時間経過していないからか、５層、１０層に侵してもボスが出なかった。

花への案も含めているので、無駄な時間が省略できてよかったかもしれない。

「狼はいたけど、ちょっと無理そうね……」

「そうだね……」

１２層にると、狼が群れを作っていた。

ただ、気が荒く、実力差を分からせるために痛めつけてもお構いなしに向かって來た。

従魔にしようにも、これでは指示を聞かなさそうだ。

花が言うように、狼を従魔にするのは諦めた方がよさそうだ。

下層にったが、ケイと花は上手く連攜を取って、ダンジョンの最下層にあたる１５層に到著した。

「最下層だから気を付けて」

「分かった」

ここまでは危なげなく進んでこれたが、流石に最後のボスはどうなるか分からない。

ケイも時々手こずることが多い。

そのことは昨日のうちに花にも伝えてある。

なので、花もちょっと表がい。

「カニ？」

「カニだね……」

ケイと花がボス部屋にると、待ちけていたのはカニだった。

「でかいな……」

「そうね……」

カニはカニでも、大きさがまともではなかった。

とんでもなくでかい。

島の周りで見つけるカニは、手のひらくらいの大きさしかない。

がないので、たまに捕まえたりする程度だ。

「一先ずハサミに気を付けて」

「了解！」

カニの攻撃で思いつくのは、やはりハサミ。

ケイは花に警戒するように言った。

そして、言ってる側からカニは巨大なハサミを振り回してきた。

その質量から威力は確かにすごそうだ。

だが、所詮當たらなければどうってことはない。

重そうな攻撃ではあるが、速度はかなり遅い。

「攻めてもいいかしら？」

「いや、ちょっと待って」

２人とも難なく攻撃を躱せている。

なので、花はそろそろこっちから攻めようと提案してきたが、ケイがそれを止めた。

カニの様子がし変わったからだ。

「泡？」

カニが口から泡のようなを出してきた。

ポコポコと幾つも吐き出した泡の１つが、花の方にゆっくりと飛んできた。

“パンッ！！”

「っ！？」

その泡が破裂したと思ったら、空気の塊のようなが花に襲い掛かった。

「ぐっ！？」

その空気が直撃すると、花はを浮かされ吹き飛ばされた。

吹き飛ばされた花は、そのままボス部屋の壁に背中を打ちつけた。

「花！？」

突然のことでケイも何が起きたのか分からず、慌てて花の安否を確認した。

「だ、大丈夫……」

打ちつけた背中をさすりながら、花はケイに返事をした。

結構痛かったのか、表は曇っている。

「泡自に攻撃力はないみたい。けど、割れた後の圧された空気に気を付けて」

「分かった」

泡自は攻撃するためではなく、弾けて出た空気で吹き飛ばすことが目的のようだ。

そうやって獲を壁に追い込んで、ハサミで仕留めるつもりなのかもしれない。

「思ったより厄介な魔だな」

“パンッ！！”“パンッ！！”

部屋中に巻き散らした泡を、ケイは銃を撃って破壊する。

離れた位置から割る分には、衝撃波のようなものは屆かないようだ。

「切りがないな……」

ケイが銃で何度割っても、カニは何度も吐き出してくる。

確かにケイが言うように切りがない。

「花は泡とハサミを避けていてくれ！　俺がやる！」

「分かった！　任せたわ！」

花に指示を出した後、ケイは泡にれないようにしながら一気にカニに接近していった。

「ギッ！？」

近付いてくるケイに向かって、カニはハサミを振り下ろす。

“フッ！！”

そのハサミを避けると共に、ケイは更に加速した。

それによって、躱されたカニのハサミが床を打ちつける

「ギッ！？」

ハサミを躱され、カニはケイの姿を見失う。

「こっちだ！」

「ッ！？」

聞こえたケイの聲は、カニの背後からだった。

巨大であるがゆえにカニのの下は隙間だらけだ。

加速したケイはそのままの下を通って背後へと回ったのだ。

カニがケイの姿を見失っている間に、ケイはカニの上空に魔力を集めていた。

「ハッ！！」

その魔力が巨大な水球へと変化した。

その水球が落ちると、カニ全を包み込んだ。

「ギャッ！？」

その水球に包み込まれると、カニは悲鳴のような聲をあげた。

ケイによる火と水を組み合わせた熱湯攻撃。

熱さに苦しみし暴れた後、カニはすぐにかなくなった。

巨大なゆでガニが出來あがりだ。

「…………不謹慎かもしれないけど、味しそうね？」

「……うん」

真っ赤にゆで上がった巨大ガニを見ていると、花は真面目な顔をしてそう言った。

ケイも同じように思っていたので、すぐに頷いた。

「「ちょっと持ち帰ろうか？」」

ダンジョンのを持ち帰ると、部の魔力が減って出てくる魔の質が落ちる。

今でもボス部屋以外でそれほど強い魔が出ていない狀況なのに、これ以上質が落ちたらレベルアップどころではない。

でも、それが分かっていても目の前のカニは食べてみたい。

全部はともかく、しくらいは持ち帰ってもいいのではないかと２人とも思い、聲がそろってしまった。

「ハハ……」「フフ……」

同じことを思っていたことがおかしくなり、２人は思わず笑ってしまったのだった。