《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第44話
「広い所となるとここになるんだけど……」
ルイスに手合わせを頼まれ、皆で海岸に歩いてきた。
広い場所といったら、ここが一番最初に思いついた。
「足場が悪いんだけどいいか?」
「問題ありません」
ケイに言われたが、ルイスは首を橫に振った。
足場の砂では、確かに余計な力を使うことになる。
しかし、人した獣人の腳力ならたいしたことはない。
「ルイスって強いの?」
「え~と……、まあまあですかね……」
ケイとルイスが軽くをほぐしている間に、花はアレシアにルイスの実力のほどを尋ねた。
以前の村で近所に住んでいたアレシアなら分かると思って聞いたのだが、曖昧な答えが返ってきた。
まぁ、近所に住んでいたからって、全ての人間のことを知っているわけではないのだから仕方ない。
それに、話を聞いたら、アレシアの家は村でパン屋をしていたそうだ。
ルイスの父親は常連だったが、ルイスはそれほど買いに來ることはなかったらしい。
「彼のお父さんのレミヒオさんは村でもかなり強い方でした。レミヒオさんと比べたらまだまだだと思いますよ」
「ふ~ん」
漂流し、ルイスの父のレミヒオは海の魔と戦って亡くなったと聞いている。
自分を犠牲にしてまで船に乗る仲間を救おうとしたらしく、彼のは特に損傷が激しかった。
その姿が思い出されたのか、アレシアはし表が暗くなっていった。
「あっ! でもレミヒオさんが言うには、訓練さえサボらなければ自分より強くなるんじゃないかって言ってましたね」
「そう……」
アレシアたちのいた村の、近くの森にいる魔を狩りに行くのは大実力上位の人間の仕事だったらしい。
時には強力な魔も出ることがあったらしく、かなり危険な場合があるのだから、若者を連れて行く頻度が低くなるのは仕方がない。
しかし、ルイスからしたら稽古ばかりでなく、魔を相手に実踐を行いたい気持ちが強かったのだろう。
実力上位の者が魔を倒して強くなる(レベルアップする)中、村で自分は訓練をするばかり。
モチベーションが上がらないのも當然だろう。
才能があるだけになおさらだ。
花も、父になかなか魔退治をさせてもらえないことを不満に思っていた時期があるのだけに、その気持ちは分からなくはない。
「花、合図頼む」
「うん!」
話し合いの結果、ケイの武はいつもの銃と腰に差した木でできた短刀を、ルイスは腰に差している2本の木の短剣を使うこと。
ケイの方は銃は威力を抑える。
気絶や降參をさせたら勝ち。
當然殺しは駄目というルールになった。
殺し合いなら合図はいらないが、これは手合わせ。
審判という訳ではないが、開始の合図は花にしてもらうことになった。
「…………始め!」
“ドンッ!!”
『速いっ!?』
花の合図と共にき出したのはルイスの方。
足の筋が膨れたような気がした瞬間、発したように砂が舞い上がった。
ケイが予想していた以上の速度で右に回り込んできた。
左手には走りながら抜いたらしい短剣で、首を狙って來ていた。
“ガンッ!”
「くっ!?」
「ムッ!?」
首へと振り下ろされた短剣を、ケイも抜いた短刀で防ぐ。
木と木がぶつかった音にしては隨分でかい音が鳴る。
短剣と短刀がぶつかって、ルイスはそのまま鍔迫り合いに持ち込んできた。
獣人の筋力は足だけではない。
腕に込められた力も相當なものだ。
ほぼ互角といった狀態で、両者ともそのままかない。
しかし、ルイスと違いケイは利き手、パワー的にはルイスが上かもしれない。
“バッ!!”
お互い押し合い、鍔迫り合いの狀態から後方へ距離を取る。
「そのような細いで俺の力と拮抗するとはやはりすごいですな」
「持ってる力を使ってるだけで、生なら完全に吹っ飛ばされてるよ」
ルイスと違い、ケイは開始當初から魔闘を発している。
その狀態のケイと、生の狀態で同等なルイスの方がとんでもない。
強がって言うが、ケイが生でけたら吹っ飛ばされるというより、即骨折して負けだろう。
「……小手調べはここまでです」
どんな力でも、それを使えるのならその者の力。
互角なのに変わりはない。
ケイはルイスが思っていた通りかなりの実力者だった。
なので、ルイスは全力をぶつけてみることにした。
“バッ!!”
「おわっ!?」
ルイスは今度は直線的に向かって來た。
口に出したように、先程よりも速い。
しかも、短剣は2本とも抜いており、左右の攻撃が暴風のようにケイに襲い掛かる。
その攻撃を躱したり、短刀で防いだりと、ケイは防戦一方になる。
『しずつ速くなってる?』
攻撃を躱し続けるが、どんどんギリギリになっていく。
そのことから、ルイスの速度が上がっていっているのが分かる。
“ガンッ!!”
「ぐっ!?」
全力のルイスの力はやはりすごい。
利き手の短剣を短刀で防いだケイは、軽くを浮かされた。
その力を利用して距離を取るが、ケイの右手はビリビリと軽く痺れた。
『すごい! 全然當たらない!』
全力でやっても、ルイスの攻撃は一度もケイのにヒットしない。
普通それを悔しがるものだが、ルイスは逆だった。
當たらないのが何故か嬉しくじていた。
『親父くらい……いや、まだ本気じゃないじだ……』
村にいたころ、ルイスは父を目標にしていた。
その目標がいなくなってしまってすぐ、ケイという強い男に會えた。
戦う前からルイスはケイには負ける気がなんとなくしていた。
ルイスだけでなく、アレシアたちも思っていたのかもしれない。
獣人特有の、強い者を嗅ぎ分ける嗅覚がそう判斷している。
何であれ、負けると分かっていても、全力を盡くす。
ルイスは全に力を込めてケイに斬りかかった。
「ガーッ!!」
両手の短剣で、上下から同時ともいえる速度で斬りかかる。
父から教わった斬牙と呼ばれるルイス唯一の必殺技だ。
“フッ!!”
「ッ!?」
ルイスの攻撃が當たると思った瞬間、ケイは今までとは比べにならないほどの速度で移した。
まるで消え失せたようにいなくなり、ルイスはケイを見失った。
“スッ!”
「……參りました」
次の瞬間、ルイスの後頭部にはケイの銃が付きつけられていた。
から分かったのか、ルイスはそのまま負けを認めた。
「それまで!」
花の聲が上がり、立ち合いはケイの勝利で幕を閉じたのだった。
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