《エルティモエルフォ ―最後のエルフ―》第54話
獣人のみんなが流れ著いてから15年の月日が経った春。
その間に、好作・不作の波がしあったが、特にみんな苦しい思いをすること無く乗り切ってきた。
「村長!」
「ん?」
変わったことと言えば、人が増えて小さい集落になってきたため、ケイがとりあえず村長ということになった。
とは言っても、特別なことをする訳でもないので、ケイとしては名ばかりの村長でしかないと思っている。
村長になっても昔からやっているように、現在魔法で畑の作をしている途中だ。
多くの畝をあっという間に作り、種をまいていた所で、一緒に作業をしていたイバンがケイに話しかけてきた。
「じーじ!」
「おぉ、ラウル! おいで!」
呼んだイバンに顔を向けると指を差しており、ケイがそちらを見るとちっちゃな男の子がケイに向かって元気に走ってきた。
ケイの近くまで來ると、男の子は両手を上げた。
いつもの抱っこの合図だ。
ケイは、それをデレデレとした表でけれて抱き上げる。
この子はケイも言ったように、名前をラウルという。
ケイの2人目の孫で、現在3歳。
レイナルドとセレナの間に生まれた2人目の子供だ。
孫になると、もうエルフ特有の長い耳はなくなり、人族の耳と変わりなくなっている。
しかし、獣人(狼人)のハーフでもあるので、母親のセレアと全く同じ尾が生えている。
自分を見て嬉しそうにその尾がブンブン揺れるのを見ると、ケイも嬉しくなって顔がほころんでしまう。
唯一エルフっぽい所と言えば容姿が良い所だけで、両親の特徴をバランスよく引き継いだじの綺麗な顔だちをしている。
同じくレイナルドたちの子供で、ラウルの3歳年上の兄であるファビオも似たような雰囲気の顔立ちをしている。
最近は祖父であるケイのことよりも剣の訓練をしている方が楽しいらしく、相手をしてくれなくなりつつあるのがケイは悲しい。
「イバン、リリアナ、後は頼んでいいか?」
「はい。大丈夫ですよ」
「どうぞ。ラウルちゃんの相手をしてあげてください」
種をまく範囲ももう殘りないので、仕事を終えてラウルの相手をしようと思ったケイは、イバンとリリアナに聲をかけて先に上がることにした。
一番大変な畑を耕す仕事をケイがあっという間にやってくれ、しかも畝まで作ってくれるだけでイバンたち夫婦にはありがたい。
後は種をまくだけの仕事なのにもかかわらず、ケイはそれも手伝ってくれた。
し申し訳ないという気持ちを持ちつつ手伝ってもらっていたので、途中であがって貰っても全然構わないため、イバンたちは快くケイが上がることをけれた。
「リリアナも無理するなよ。お腹の子に悪いぞ……」
「大丈夫ですよ。まだお腹も大きくなっていませんし」
畑仕事をしているリリアナだが、し前に妊娠が発覚した。
この世界だと高齢出産にるだろう。
男のだと、この時期のの大変さとかの合が分からないため、ただ心配することしかできない。
リリアナも2度目の出産で多慣れているせいか、普通にき回っている。
無理している様子もないので、ケイはそのまま畑から離れて行った。
ケイたちがいるのは西側の島で、人も増えてきたことで住居も増えてきた。
東側の畑だけではそのうち食料が足りなくなってしまうかもしれない。
なので、西側にも畑づくりをするようになったのだ。
「じ~じ、シリアコしゃん!」
「あぁ、そうだな」
「おや! ケイ様! ラウル様!」
西側は魔がいるため、畑を荒らされては困る。
そのため、畑を守るためにケイが魔法で壁を作っている。
壁を作った當初は、ケイとレイナルドとカルロスの親子が代で見張りをするようにしていたのだが、今はその3人にシリアコという青年も加わっている。
「おいおい、いつも言ってるけど様付けなんてしなくて良いって」
「いいえ! 奴隷の私を救っていただいたのですから……」
彼は紫がかったをしている。
そので分かるように魔人族の人間で、いつものように海岸に流れ著いた人間だ。
小さい頃から人族の豪商に奴隷として使われ、その商人が船で他國へ商談に向かう途中で難破したそうだ。
その船で生き殘ったのが彼一人だったのは、神による救いの手がびたのかもしれない。
その當時ガリガリの14歳だった彼も、3年経った今では屈強な一人の青年に長した。
「もう奴隷じゃないんだから本當に気にすんな」
「はい!」
問題があったのは、主人が死んでも奴隷の首が外れなかった。
別につけていようと、もう行を制限されるようなことはないのだが、見ているこっちの気分が良くないので、ケイが魔力にを言わせてぶち壊した。
命を救ってもらい、奴隷からも解放してくれたことが嬉しかったのか、首が取れた時彼が大泣きしたのはいい思い出だ。
元主人と同じ人族の花とのことが気になったが、日向人と大陸の人間では顔が全然違う。
前世の日本人の顔立ちと同じような花の顔は、確かに大陸の人間とは違い彫りが深くない。
全然印象としては違うというのは頷ける。
それもあって全然何も思わないとのことだった。
見張りの彼に聲をかけたケイは、ラウルと共に東の住宅地へ向かって行った。
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