「ようやく終わりが見えてきたな……」

下の階層へと向かう通路を進むケイは、慨深げに呟く。

魔王サカリアスを封印した結界にできたダンジョン。

その攻略を始めてから、もうしで３ヵ月になる。

これほどの長期間になってくると、思い出す國のみんなの顔が懐かしくじる。

島の子供たちの面倒を見たり、農業をしてのんびりした生活に戻りたくなってくる。

「殘り５層だ。気を付けて進もう」

階層ボスのリザードマンから聞いた報が確かなら、このダンジョンの最下層は１００層。

殘り５層進めば、ダンジョン核のある場所に行きつくはずだ。

ここまで來ると、あとしと気が弛み、思わぬ罠にかかりかねない。

木を引き締めるために、ケイは従魔であるキュウとクウに注意を促した。

【うん……】「ワフッ……」

主人であるケイの言葉に対して、キュウとクウは反応が弱い。

何だか元気がないようだ。

「キュウもクウも元気出せって！　ここまで來たら魔が強力なのは分かっていただろ？」

【うん……】「ワフッ……」

２匹が元気がないのは、９０層を過ぎた頃からキュウとクウではなかなか倒せない魔が現れ始めたからだ。

ケイでも油斷すると危険な魔ばかり。

２匹が苦戦するのも仕方がないことだ。

特に、２匹が気落ちしている要因はもう１つある。

戦闘でケイも傷を負うようになってきたからだ。

傷といっても、かすり傷程度のものだが、２匹は従魔のくせに主人を守り切れていないと、自分を攻めているようだ。

しかし、これまでの人生で、この程度の怪我なんて數えきれないほど負ってきている。

回復魔法もいらないような傷なんて、気にする必要がない。

「それに、役に立ってないってことはないんだから」

２匹がいることで、ケイも助かっている。

戦闘面だけでなく、神的な面でもだ。

１人でこのダンジョンを攻略しようとすると、平気で無茶をしかねない。

もしかしたら、罠にかかって危険な目に遭っていたかもしれない。

しかし、２匹がいることで無茶をせずに進むという選択を取らなければならない。

そう言った意味で役に立っていると言えなくない。

「癒しでもあるし……」

そういうと、ケイは２匹をでまわす。

ケイにとって、２匹は心を落ち著かせてくれる存在だ。

何も考えずでまわしていると、余計な考えも吹き飛んでしまう。

これがアニマルセラピーというのだろうか。

「よし。行こうか？」

【うんっ！！】「ワウッ！！」

２匹をでてし心が安らいだケイ。

でられたことでキュウとクウも元気を取り戻したようなので、ケイは改めて先へ進むことにした。

「……何だ？」

【あれっ？】「ワウッ？」

９５層にった途端、ケイはに違和をじる。

キュウとクウも同じようにじたのか、不思議そうな聲を上げた。

「魔力が抜ける……？」

常時魔闘を発しているのだが、そのに纏う魔力が何かに吸い取られるように消えていく。

初めてじるその覚に、ケイは一旦通路に戻る。

そして、もう一度魔闘を発して、に異変がないかの確認をした。

「……ここは問題ない。やっぱりこの中か……？」

通路にいる分には、先程の魔力が抜ける覚はない。

しかし、フロアにると、力が抜けるような覚に陥る。

そのことから、このフロアに何かしらの仕掛けがあるのだと理解できた。

「魔法は……？」

に魔力を纏わない狀態なら、魔力が抜けていくような覚はけない。

それなら魔法を放ったらどうなるのか。

これからこのフロアを攻略するのに、それが分かっていないと危険すぎる。

そのため、ケイは々と魔法を試してみることにした。

「全然飛距離が出ない！」

々と魔法を試した結果、ケイは思わず愚癡をこぼす。

どの魔法も、距離をばそうとすると魔力を多く消費する。

これでは遠距離からの攻撃が難しくなった。

【魔法使えないと、キュウたち役に立てない……】

「ワウッ……」

この狀況に、せっかく元気が出たはずのキュウとクウがまた落ち込む。

キュウは、魔の餌と呼ばれるほど弱小のケセランパセランという玉の魔。

ケイのおで強くなったが、あくまで戦闘は魔法特化。

それが魔法が使えないのでは、完全に足手まといでしかない。

柴犬そっくりの魔のクウは、まだ當たりや牙を使った攻撃ができるが、こっちもどちらかと言うと魔法重視の戦闘方法。

つまり、２匹ともこのフロアの攻略に參加するのは危険すぎる。

「……そうだな。悪いが、拠點で待っていてくれるか？」

【うん……】「ワフッ……」

２匹には悪いが、攻略に連れて行くのは躊躇われる。

そのため、ケイは転移で地上にある拠點まで転移で送ることにした。

【気を付けてね。ご主人！】「ワウッ！」

「あぁ」

転移の魔法を発して拠點に送ると、２匹は別れ際に聲をかけてきた。

最後まで付いて行けないことが殘念そうだが、我が儘を言うわけにはいかないとちゃんと認識しているようだ。

その見送りの言葉をけて、ケイは攻略の再開をおこなうことにした。

「探知もか……」

フロアにると、ケイは魔と罠を確認しようと探知の魔法を発する。

魔力を薄く広くばすことによって、その魔力にれたものが何なのかを探知する魔法だ。

しかし、この探知にも他の魔法と同様のことが起こる。

魔力が吸われ、長距離を探知することができないのだ。

この狀況に、ケイは苦蟲をかみつぶしたような表へ変わる。

まずは探知。

これこそ、ケイが生き殘るために導き出した答えだ。

それが底から覆されたのだから、どうするべきか悩むところだ。

「しかも、エルフの俺に魔闘を解いた狀態で進めっていいたいのか？」

生を殺すことによって、殺した相手は長するが、同じ人族でも度合いが違う。

その中でもエルフという人種は、的な長はごくごく僅かで、それに反するように魔力量の長が著しい。

人種の中でも並外れた魔力を使うことで、ケイは他の種族以上の戦闘力をにつけたと言ってもいい。

エルフにとって最大の武である魔力の使用を制限されるということは、他の人種よりもきつい狀況だ。

「念のため持ってきたこれで何とかするしかないようだな……」

的長は僅かとは言っても、塵も積もれば山となる。

長年魔と戦い続けてきた自分なら、生の狀態でもなんとかなるはず。

長距離攻撃も出來るいつもの２丁拳銃はひとまず使用せず、たまたま持ってきていた花の形見の刀を使うことにし、ケイは慎重に探索を開始した。