《最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~》4話
「ファイッ!!」
アナウンスの合図が放たれた。
作戦通り後ろに素早く距離を取った。
すぐさま懐から相棒のSIG SAUER P228 XXダブルクロスを2丁取り出す。
「し話をしないか?」
彼は戦いというのに白線に突っ立ったまま、俺に話を求めてきた。
その顔はどこか悲壯めいていた。
「あいにAランク相手にそんな余裕はねーよ」
皮げに彼に言う。しかし彼の表は変わらずだった。
いまだに相手にはきが無い。先手必勝だと、彼の足と右手を狙い引き金を引いた。
彼は予測していたのか綺麗に、躱す(いや、ここは當たらなかったという表現が正しいか)。
筋力強化能力による移なのか?
「なんで君は勝ち目のない戦いに、そんなに闘志を燃やせるんだ」
彼はいつの間にか俺の右方向へと移しており、なんとも幻のような移だ。
「まあやってみなくちゃ分かんないだろ。それとなお前、そんなこと言って俺に失禮だとか思わないのか?」
焦りを隠しながら彼に言う。常識が無いのか、煽り方が上手いのか……
もしかすると、これは相手の作戦かもしれない。油斷は大敵だ。
「わかった」
彼はそう言うと、俺の方へと凄まじい速さでき出した。
き出したというよりも、壊れたビデオテープのように映像が途中で途切れて、先の方に映像が変わったような覚だ。
クッこんなに近くまで、気づけば彼は、俺の右の位置まで移していた。
一瞬のまばたきが生死を分ける。必死で相手のきを追う。
そして彼は、俺のあたりを切ろうと鎌を振りかぶった。
上をめいいっぱい後ろに倒す。顔の目の前で鎌の鋭利な沢が、瞬く間に通り過ぎた。
し掠ったのか元のシャツが切れる。不意打ちのような攻撃を間一髪でかわしきった。
一度距離を取るため、サバイバルナイフをバックで回転をしながらその回転力で投げる。
手をめがけて投的をしたが、あの大きな鎌で見越していたように、はじき返された。
「一瞬で決めようと思ったのに。よく躱したね」
彼は、俺との戦いをし舐めてかかっていたのだろう、苦いカメムシを噛んだように顔を歪める。
「次は本気でいくよ」
さっきよりも彼の聲音も変わっており、顔からも本気モードがうかがえる。
スッキプ映像のように俺の真右へと移し、鎌を降ろす。
運良く彼の屆く範囲を避けていた俺は、カウンターを仕掛ける。
この瞬間移方は剣先生が使っていた、古武の類なんだろうか。
きながら頭のなかで、彼に対する対策をひたすら考える。
「ちょこまかと…… 君はハエなのかい? 殘念ながら僕は蟲は嫌いでね」
言ったかと思うと、またもや俺の右方向におり、能力を存分に使ったすさまじい剣撃が、俺の頭上へと通り過ぎる。
すかさず俺は、上手く常態を拗じらせ鎌の形に、ギリギリで彼の攻撃を避ける。
剣先が俺の鼻先を通り、刃のコーティングされた金屬波が存分に見えた。
そして顎を引き、ムチを唸らせるように、肩、腰、、裏太もも、ふくらはぎ、そしてで剣先を避けきったかと勘で察知したあと、足を前に手を使わずに後転する要領で避けた。
らかにいたそのは、まるで水のようなのこなしだ。
――佑の卓越された反神経と、高度の思考予測により、この能力者のような、いや神のような回避は可能なのだ。
佑本來の凄まじい天のセンスを、剣先生は見抜いていたのである。
先ほどとは明らかに違う、攻撃頻度、威力、磨かれた絶剣の如く剣筋だが、俺は完全に見切っていた。
距離を取るためすぐさま弾丸を放つ。彼は予測するように弾丸を切り落とした。
俺は彼のあまりの強さ、そして自分がこれほどまでに、渡り合えていたということに心が踴る。
ついつい口元が緩んでしまう。
「なんで笑ってるんだい?」
繰り返すきの中、彼は不思議そうに、こちらを橫目に見ながら質問をした。
「そりゃ初実戦が、強いお前みたいな奴となんだから嬉しくない訳がないだろう」
あちらのきが止まり、俺もきを止め質問に答えた。
そうだ俺は戦いが大好きなのだ。剣先生に見込みがあると言われたのはこのことなんだろうか。
剣先生が以前言っていた「私と同じ”匂い”をした初めての人」だと言われた。
そうだ俺は”絶狀態の殺し合い”が好きだ。
「行くぜAランクさん、お前の変な能力も見極めたし、後はお前を倒すだけだ」
彼の能力は、おそらくだが、超筋力系統の能力者、理法則を超えた力で瞬間移を可能にしてるのだろう。
今までの途切れた映像のような行が何よりの証拠だ。斷片的にしか使えないのか、ある一定のリズムと距離で、能力を使っている。
おそらくだが、その時間間隔は一秒よりもない。
そしてインターバールがおおよそ10秒。それはいい報だ。
まさに接近戦に特化した能力と、それにあわせた相のいい武だと俺は納得した。
瞬間移ができるなら、それに合わせて間合を調節し、粘り強く攻撃を避けて、相手の攻撃手段を著実に減らしていき、最後の最後に渾の一撃を……
まず先決することは、接近戦で強烈なあの武を壊すことだ。
壊せなくても使えなくすればいいのである。そういえばあの曲がり刃の剣で銃弾を防いでいたな。となると剣はかなりの強度になるはずだ。
あんな大きさで全がチタンの武を使うなんて、どんなに大男でも無理な話だ。刃以外は必ず軽量化の為に軽いものを使っていると思う。
綺麗な曲線の刃の付けあたりを観察する。赤のカラーリングは統一されているが、明らかに違う金屬のパーツを見つけた。
見た目は綺麗ではあるが、とりあえずくっ付けたようなわずかな”違い”を見つけたのだ。あそこを狙えばあの武は壊れるだろう。殘りの銃弾は替えをれて三〇発。
いける。
「(まずは……)おらああああッ!!!!!!」
雄たけびをあげ、俺は最後のナイフを彼の顔に投げる。
「……やけくそなのかい?」
そう言いながら彼は投げられたナイフを軽々と刀で塞ぐ。
チャンスだ!!
彼は狙い通りに鎌の剣をちょうど俺のほうに向けていた。
すかさずリロードを凄まじい速さで終え、頭を狙うように、奴の鎌の弱點を狙う。
この距離ではお得意の瞬間移は屆かない。
命中。次々に弾を剣の付けに當て続けた。
劈くような金屬と金屬の衝突音が會場に響く。
狙い通りに段々と変形していくその刀の付けは、皮一つ繋がった首のようにへし折れた。
俺は、唯一けられる撃訓練だけは最高評価の5を取った。
これくらいはな。
「デッカイ鎌もぶっ壊れたんだから、お得意の空間ジャンプ攻撃ももう意味は無いよなあ!?」
最後の銃弾を卍城の顔面に狙う。
防ぎながらも攻撃を読んでいた彼は、咄嗟に刀で縦斷を防いだ。
最後の一撃は鈍い音が鳴り、刀の付けは、後方の方へ帰ってこないブーメランのように吹き飛んだ。
「ほう、僕が防ぐと見込んで溶接への集中攻撃…… そしてこの武で防ぐことを予測して僕に壊させるとは…… なかなかやるね君」
先程までの心底見下していたような顔とは違い、彼は希を見るかのような明るい瞳で俺を見た。
彼の武も壊れたが、俺の殘りの銃弾が盡きつつあることに、若干の焦りが芽生えた。
「だが……まだ甘い」
彼はそう言うと武を今までとは違い逆手に持つ。
裝飾と思っていた弧を描いたような先端部が、金屬音をぶつけたような荒い音を立てて刀が出てきた。
2つもあった刀に俺は乾いた笑いが出る。
「二太刀で使うのは僕には出來なくてね――。それよりも君のような努力による真の境地に立っている人間が大好きだよ。ESPここには、自分を諦めているような人間が大半を占めるからね。僕は君という自分を諦めない數派に、価値を見出しているんだ。僕って見所も考え方も凄い人間だろう」
ああこいつは実力もある、まさに完璧人間だろう。
顔だけがいい俺とは違って能力も最高ランクに強い。
しナルシストなところに腹を立ててしまったが、この世界で選び抜かれたらひょいっと飛んでいきそうなくらいには選ばれた人間だ。
俺はこんな完璧な人間は好きだ。まさに人が目標にするには丁度いい人間だろう。
そんな俺よりも戦闘力も人間的にも、勝っている相手にどう勝つか――簡単だ。
”今”のありったけをぶつける。ただそれだけの話だ。
「ガタガタうるせえんだよクソナルシスト」
俺はそうぶとヤツの方へと全力で蹴り出した。
こいつにとっておきのをぶつけてやるぜ。空になったマガジンを捨てる。
走りながら、両手の人差し指で2丁を銃を円狀に回すと、右手の小指と薬指で、太もものマガジンベルトにあるマガジンを、右足を上げる作と一緒に、小指と薬指で目の前に浮きあげるように前の方へと投げる。
ワンテンポ遅れながらも左も同じように、マガジンを空中へと放つ。叩きつける作の遠心力と、後方に突き上げるような腕のフリでマガジンを綺麗にはめ、2丁の拳銃のリロードを完了させた。そして腕をクロスさせるように構える。
ジャンプをしながら、獲に飛びつくように飛びかかった。左手の引き金を引く。
「遅いッ!!」
當たったと思いきや、彼は読み通りに瞬間移で俺の右へと移している。
チャンスだ、すぐさま前に倒れるように回避行をとり、空中で右足の靴底を彼に向けた。
靴底には時速200キロの威力がある投刀ナイフが仕込まれている。
左肩にあるスイッチを、機械人形のように素早く押し、首から骨の音が聞こえたが、構いなしに前に転がりなから前方へと撤退。
凄まじい速さのナイフは一直線に彼の肩へと突き刺さった。
一撃必殺の隠し技が、狙っていた首とは違い、肩に當たってしまったため、しばかり癪に障った。
肩へと深く深く突き刺さるそのナイフに、彼は耐えきれずに地面に膝を付けた。
「すごい威力だろ、チッ肩に當たったのかよ」
距離をとった俺は、そんな舌打ちを投げかけ、怒濤の銃撃を容赦無しに彼へと目掛け放つ。
彼は痛みに悶え、その肩を構いながらも、全ての銃弾を防ぐため障害にを隠した。
放った1発が彼の左膝の上に當たったらしく、左足を引きずっていた。
彼が右に出るとは、彼の行から予測できた。なぜなら彼は俺を中心とした、右回り90度に瞬間移ができることと、彼はある程度近づかない限り、瞬間移は使えないと、彼の傾向からわかったからだ。
いろいろと小細工の準備をしておいてよかった。
それを読んで今まで隠しておいた必殺の時速200キロナイフ。
まあ肩に當たってしまったのだが。
「クハハハハハハハハ」
から彼の笑い聲が聞こえる。その狂ったような笑い聲に、ついに壊れたのかと勝利を確信した優越が俺の中で溢れ出てきた。
「Fランクの俺に追い詰められる気分はどうだよ、Aランクさんよお!!」
まるで小悪黨のように俺は彼へとんだ。
最弱が最強に勝っているという願めいた現実が俺の目の前に広がっていたため、俺の本にも近い小悪黨振りが、表のになって現れたのだ。
気持ちいい、今一瞬のために俺は生きてきたんだと、”生きる意味”というものを実できた。
今までさんざんげられ、軽んじられ、バカにされ、罵倒され、権利を剝奪され、住む場所さえも奪われ、ボロ雑巾のような扱いをされて、今こうして最強とも言える相手に、悠々としてるのはたまらなく気持ちがいい。
たまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらないたまらない。
俺は無能力者。それが才能頼りの有象無象よりも強いという現実が、俺の生涯今までに押し付けていた負のが放出される。
脳の興作用の質が限界を突き抜けて、俺の中へと駆け回る。
俺の反逆の見せしめに、まずはこいつの首を取ろう。
気の油斷は後の大慘事と剣先生が言っていたが、今の俺には全くと浮かばず、目の前の現実にただ興しているだけのクソ人間となっていた。
《書籍化&コミカライズ決定!》レベルの概念がない世界で、俺だけが【全自動レベルアップ】スキルで一秒ごとに強くなる 〜今の俺にとっては、一秒前の俺でさえただのザコ〜
【書籍化&コミカライズ決定!!】 アルバート・ヴァレスタインに授けられたのは、世界唯一の【全自動レベルアップ】スキルだった―― それはなにもしなくても自動的に経験値が溜まり、超高速でレベルアップしていく最強スキルである。 だがこの世界において、レベルという概念は存在しない。當の本人はもちろん、周囲の人間にもスキル內容がわからず―― 「使い方もわからない役立たず」という理由から、外れスキル認定されるのだった。 そんなアルバートに襲いかかる、何體もの難敵たち。 だがアルバート自身には戦闘経験がないため、デコピン一発で倒れていく強敵たちを「ただのザコ」としか思えない。 そうして無自覚に無雙を繰り広げながら、なんと王女様をも助け出してしまい――? これは、のんびり気ままに生きていたらいつの間にか世界を救ってしまっていた、ひとりの若者の物語である――!
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