《最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~》5話
「終幕フィナーレだ!! Aランクさんよお!!」
俺はヤツの隠れているへと全速力で向う。
すると彼は、茂みに隠れて覚悟を決めたのようにから出てきた。
「君は強い、それは認めよう。だが最後に勝つのはこの僕だ――。君だけには、ここまで僕を追い詰めたお禮として、一日一度限りの”奧義”を、見せてやろう」
そうして彼は構える。それも今までに無いようなドッシリとした構えになる。
俺はドバドバと溢れ出たアドレナリンによって、警戒を怠り、獣のようにぶ。
「ほざけッ! クソナルシストッ!!」
最後の最後である銃弾を、ヤツのを目掛けて放つ、放つ、放つ、放つ。
「慙・時雨鎌イ太刀――」
それは一瞬だった。
何が起きたのかなんて俺には分からない。だが分かることはただ一つ。
彼は、俺を切ったのだ。
な、何なんだ? 何が起こったんだ?
思考は現実を認識せずに、左手で銃を構える。
すると右腕からは何かが落ちたような音がして、心なしかそれは軽くなっていた。
目標を捉えた瞬間、俺の痛覚が目覚め始めた。
そしてから腹にかけて、噴水の水のように飛沫が切り跡から出る。
腹からは強烈な熱線をあびたような痛み、右腕には劈くような痛覚が襲う。
「いてえええええええええええええええええ」
自我を保てるような痛みではないと、全神経が俺に命令を送っていた。
「これで無能力者と笑われることもなく、能力者と蔑まれることもない。右腕を無くし、これで君は晴れて”普通の人”になれる」
後ろから聲が聞こえた。今にでも首を切りそうな位置に彼が立っていた。
「元々こんな戦いフェアじゃないんだ。能力者と無能力者の戦いなんてたかが知れている。まあ、あえて僕がハンデを使ったんだ。必殺技を使わないという”ハンデ”をね」
ついに目の前が漆黒の世界へと進み始めた。
わずかながらの理で俺は慢心をしていたと自分を分析する。
(あれだけ頑張って、剣先生に修行までついてもらったのに…… こんな一つの間違いで俺は)
薄れていく後悔と意識の中で、今までのことが走馬燈のように駆け巡る。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
剣先生と修行していた時のことを思い出した。
「し私の昔話をしようか」
いつもの1対1のトレーニングを終え休憩していたところ、剣先生が話しかけてきた。
「聞きたいです」
その時の俺は剣先生については、スリーサイズと家の場所ぐらいしか分からなかった。
「そうだな…… 私が傭兵を始めた時の話をしよう」
そう言うと彼は、遠い過去を懐かしむように視界を前に向けた。
「傭兵をやる前の私は警察という治安を維持する仕事をしていたんだ。當時の私はな、どうしても多額なお金が必要だった。そのために當時勤めていた警察をやめた。まあ元からあのような卑劣な場所は、すぐ辭めるつもりだったんだがな」
そう言い彼は続ける。
「前払いで何千萬とくる傭兵にしばかりに合っていると思ったよ。それが傭兵になるための機ってところだ。私は金の為に人を殺せる人間なんだ」
まるで自分に言い聞かせるような言いぐさだった。
數々の伝説を殘してきたと言っても、彼は一人の人間だった。
「昔はでしょう? 今はどうかは知りませんけど、昔は昔でしゅよ」
めるつもりが、思いっきり噛んでしまった。伝わったのかドキドキしてしまう。
「ふふっ、君でも勵ますのか。すこし驚きだよ」
彼から笑顔が溢れ出る。俺が噛んだおかげ?
「初実戦は凄かったよ、弾が、どちらかが殲滅されるか、撤退するまで凄い量が飛びっているんだ。スリル満點で楽しかったね」
笑顔で話す。よほど楽しかったようだ。
「戦地に行く前はというだけで散々ものを言わされたよ。そのたびに片っ端から全てぶっ潰してきたが」
これまた笑顔で話す。この人にかなう人なんて絶対いないだろうに……
「まあここからが楽しくなる。私が三度目の戦地に出向いたときの話だ」
先ほどとは違い。真剣な顔になった。よほどなことがあったんだろうか。
「2003年、2月14日、世間一般ではのバレンタインなどと呼ばれているな」
「確か能力者同士の初めての大抗爭ですよね。第1戦がカナダ、第2戦がここ日本國の北海道、他は忘れましたが」
「全く…… 授業をしっかりけろ。とにかくあそこに、トリックスターズの囮小隊として派遣されたよ。當時、超能力者なんてアニメや妄想の話だと思っていてな、何も知らない私たちはESP達の殺し合いに參加してしまった……」
彼の顔が険しくなる。
「バカげていたさ、突如津波が現れたり、何もない空が突然と夜へと変わったりな。仲間の一人が『ここが天國か?』ってジョークだけは笑えたよ。そいつは死んだがな」
続けて彼は話す。
「ESPの報すら無かった時代だ。仲間は無殘にも殺されまくった。しかし私だけは運が良かったのか悪かったのか生き殘ってしまった。逃げもできず、仲間が誰もいない狀況なんだ。お前に想像できるか?」
うつろな目で彼は聞いてきた。こんなにも壯絶な過去話が聞けるなんて想像もしてなかった。
「絶したさ、戦場は幻想による津波で、前線は無茶苦茶。何が何だか分からなかった。どう逃げるか、後ろへ退避すると弾丸が私達を襲ってくる」
「その銃弾の音が、私のお父さんのよく言っていた『ださんかーーー』という言葉に聞こえてな。とにかくそれのおかげで私は頑張れたんだよ」
「あそこが死線だったんだろうな。その言葉をに全ての敵を倒した。今では伝説となっているが、ただ運が良かっただけだ」
先生の遠くを見つめるようなそんな瞳だ。
彼の腕にある大きな傷跡で、痛覚によって幻想を取り払ったんだなと分かった。
そこで彼が何をしてきたのかなんて、俺には分からない。
だけどこれだけは言いたかった。
「先生…… トイレってどこにありますか?」
「人がこんな話をしているに! このバカ者! このこのこの」
その後めちゃくちゃボコボコにされた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「僕の必殺技を食らった大抵の人間は死んでいった。だから使うということはあまりしたくは無かったんだ。君のような本來勝てるべき人間に使ってしまったのは、僕の慢心のせいだろう。まあ無能力者の君となら、どうあがいても僕が勝っていたけどね」
猛然とした意識の中、俺はこう思っていた。
ああ、ごもっともだ。俺には”能力さいのう”がない。
でもこんなに屆かなかったのかよ……
それでもあきらめない人が俺を見ていた。
「佑!!!!!!!! ださんかぁああああああああああああ!!!!!!!」
聞き慣れた聲が會場に唯一繋げられるマイクで絶していた。
そんなことをするのは彼しかいない。
そう剣先生だ。
彼の聲に反応した、消え掛かりそうな神界にある俺の魂が、朽ちたを損傷構いなしに、起パルスを叩き起こす。
反応するように中の細胞が目覚めていく。
からひっきりなしに湧き出るような力を使い、平然と這い上がった。
「そうだッ…… 最後の一滴まで…… 俺はッ」
そうだ俺は剣先生に戦いだけを教えてもらったんじゃない。
諦めない気持ちまでもを教えてもらったんだ。ここで朽ちるわけにはいかない。
自然と腕の傷と、を切り裂かれた大きなの激痛が全くというほど無くなっていた。
そして、落ちていたナイフを素早く口で摑む。
全速力で萬丈王也の方へと走った。
「もうやめろ、出多量で君が死ぬぞ。審判! 早くやめさせろ!」
彼は激に任せ審判に抗議した。しかし審判は剣先生の手により気絶させられていた。
「チッ、あのクソアマ教師!! しっかし君は、ハハッ――なんてやつだ」
舌打ちをして、彼はあの大きな鎌を構えた。
その顔は何か覚悟を決めたような、形相たる顔だ。
「化めッ!!」
來る。鎌を彼の右側に大きく振りかぶる。その振りかぶった角度だけでも、全てを一刀両斷するほどだ。
冷靜に彼の攻撃を思い出す。ある程度近づくと彼は消え、俺の真右限定に現れるんだったはずだ。
彼は、俺の予想していた範疇に空間ジャンプしてきた。
こいつは単調すぎる。
すかさず俺はしゃがみ、彼のジャンプしたての地に付いていない足を、右足で回し掛ける。
激痛が走るが、構い無しに、切れた腕で重を支える。
彼が右回りに倒れる姿を確認した。
彼は頭を強打するように地面に打たれた。
貓のように彼のに飛び乗り、咥えていたナイフを首元に突き刺す。
ブウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウ
試合終了の合図が會場全に鳴り響いた。そのまま俺は意識を失った。
【書籍化】え、神絵師を追い出すんですか? ~理不盡に追放されたデザイナー、同期と一緒に神ゲーづくりに挑まんとす。プロデューサーに気に入られたので、戻ってきてと頼まれても、もう遅い!~
【書籍版発売中!】 富士見L文庫さまから2022年1月15日に書籍化されています!! ========== 【あらすじ】 「仕事が遅いだけなのに殘業代で稼ごうとするな! お前はクビだ。出ていけ夜住 彩!」 大手ゲーム開発會社のデザイナーとしてデスマーチな現場を支えていたのに、無理解な無能上司のせいで彩はチームを追放され、自主退職に追いやるための『追い出し部屋』へと異動させられる。 途方に暮れる彩だったが、仲のいい同期と意気投合し、オリジナルのゲーム企畫を作ることにする。無能な上司の企畫にぶつけ、五億の予算をぶんどるのだ。 彩を追放した上司たちは何も分かっていなかった。 ――優秀すぎる彩にチームは支えられていたことを。 ――そして彩自身が、実は超人気の有名神絵師だったことを。 彼女を追放した古巣は瞬く間に崩壊していくが、デスマーチから解放された彩は華やかな表舞臺を駆け上っていく。 夜住 彩の快進撃はもう止められない――。 ※ほかの投稿サイトでも公開しています。
8 109妖刀使いがチートスキルをもって異世界放浪 ~生まれ持ったチートは最強!!~
あらすじ:主人公の両親は事故によって死んだ。主人公は月影家に引き取られそこで剣の腕を磨いた。だがある日、謎の聲によって両親の事故が意図的に行われたことを教えられる。 主人公は修行を続け、復讐のために道を踏み外しそうになった主人公は義父によって殺される。 死んだはずの主人公を待っていたのは、へんてこな神様だった。生まれながらにして黙示録というチートスキルを持っていた主人公は神様によって、異世界へと転移する。そこは魔物や魔法ありのファンタジー世界だった。そんな世界を主人公は黙示録と妖刀をもって冒険する。ただ、主人公が生まれ持ったチートは黙示録だけではなかった。 ※★星がついている場所には挿絵があります! アルファポリスで重投稿してます。
8 198女顔の僕は異世界でがんばる
主人公はいつもいじめられていた。そして行き過ぎたいじめの果てに“事故”死した。はずだったが、目が覚めると、そこは魔法も魔物も存在する異世界だった。 *以前小説家になろうというサイトで投稿していた小説の改変です。事情があって投稿できなくなっていたので、こちらで連載することとしました。
8 192天才少年、異世界へ
自身のことを、ありふれた高校生だと思っている主人公木村弘一郎が、異世界で一人だけ加護を貰えなくて苦労する、と思いきや持ち前のハイスペックで自由に生活していく話です。 初めての作品なので、期待しないでください。
8 162異世界不適合者の愚かな選択
両親を事故で失い、一週間家に引きこもった久しぶりに學校へいくと、突如、クラス転移された そこは魔法とスキルが存在する世界だった 「生き殘るための術を手に入れないと」 全ては生き殘るため しかしそんな主人公のステータスは平均以下 そんな中、ダンジョンへ遠征をするがモンスターに遭遇する。 「俺が時間を稼ぐ!!」 そんな無謀を世界は嘲笑うかのように潰した クラスメイトから、援護が入るが、逃げる途中、「お前なんてなんで生きてんだよ!!」 クラスメイトに、裏切られ、モンスターと共に奈落へ落ちる、そこで覚醒した主人公は、世界に仇なす!
8 68世界にたった一人だけの職業
クラスでもあまり馴染むことができず、友達にも恵まれず高校生活を送っていた高校二年生の主人公の柏沢蓮斗。そんなある日、クラスでいつも通り過ごしていると先生の魔法詠唱によって足元に魔法陣が現れた。魔法陣に吸い込まれた後、目を覚ましたら異世界の王宮の中にいた。皆それぞれ職業に目覚めており、主人公もまた例外ではなかった。だが、主人公の職業はー 異世界の複雑な事情に巻き込まれていく ストーリーです。 新作 「スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、超萬能スキルでした~」も興味のある方は見に來てください。 お気に入り1000突破! ありがとうございます!!
8 134