《最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~》32話

「もう大丈夫?」

マイが頭上で小さく呟いた。シーンと靜まり返った俺の部屋に、彼の聲と、俺のしだけ引きつっていたしゃっくりの音だけがあった。

すこしだけ楽になった俺は、ゆっくりとベットから起き上がるようにしてを起こした。

同じように彼く、そして彼の顔を首をずらして、お互いに見つめ合った。

「うん、ははっ」

俺はいままで泣いていたことが恥ずかしくて、むずくなってしまったのか笑ってしまった。彼も同じように笑みを返すと、こう話した。

「もう大丈夫だね」

にこやかな顔で彼は僕を見ていた。まるでいつも見ているよと言っているように。

ちょうど二人に橙である秋の夕日が眩しくもないような控えめの明るさで照らしていた。久しぶりにたくさん泣いてしまったのか瞼が腫れているのがわかった。

「そうだな…… たくさん泣いたらお腹空いちゃったわ」

ちょっとだけ気を間際らすように、俺の瞼をりながら言った。

「よしじゃあもうすぐご飯だし、いっしょに食べにいこ!」

健気に彼は、気な聲でう。

どんよりとしていた今までの俺を照らすようにそう言った。。

「ああ食べに行こうか」

俺はまたしても、彼の太のようで包容力のある彼の笑顔に救われてしまったのだ

は、よっこいしょと掛け聲をあげて俺のベットから出た。俺も同じようにベットから出ると、二人はいつものような夕食があるダイニングルームへと足を運んだ。

  その途中である。

ポケットにっていた俺の攜帯端末に著信がった。

ここで時を止めさせていただく、これから先は、ただの希が極薄な狀況下の地獄だ。

そして終わらない戦いへの扉がここで開いたのだ。いいやこれは執行猶予付きの冥府の門である。誰が罰を持ったということではなく、誰かのせいというわけでもなく、ましてや誰かの処罰でもない。そしてこれは全ての滅びへの第一歩であった。

  この世界の終わり、そして全ては……

著信は作戦指令室の伝達係からであった。

  容を要約すると、

『REINAが不可解な文章を読み解いた。その巻容…… 明日、とある戦闘集団がマイを攫いに來るということ。襲撃に合わせてマイを死力を盡くして護衛すること。現、沖永良部島で戦っているAランクの連中がここに來るまで、俺一人で対処すること。正午00:00に作戦は開始される』

というものだった。喜財閥のバックグラウンドであり、俺が元に所屬していた、ESP學園という名の超能力部隊教育所である。となるとマイのお父さんが彼を守るためにと、その自の手中にある組織を使って守るということだった。

  戦闘を開始するのは、俺が通っている學校である。あの何も変わらないような日々であったあの日常が、いとも簡単に壊れてしまったことに俺はしばかり気分が落ち込んだ。

  そんなことよりも、なぜマイが拐の標的になってしまうのかという點について、ここ一番の不可解な點について考えた。マイがこの喜財閥の令嬢であるということで、莫大な代金を強奪するためにわざわざ仕掛けてきたのか……? いいやそんなこの日本の背景を牛耳っているような財閥にたてつくだなんて、そんなの程をわきまえないような人間がいるのだろうか。どこもかしこもここの希財閥のマークがっているこのご時世に、そんな常識を知らないような人間はいないと俺はそう考える。

  この財閥に歯向かえば俺のようなESPが存在そのものを無き者とすることも、たやすいことなんだろうと思う。現に何人もの、この日本を改革しようとした集団(數年前のニュース記事では武裝集団とあった。まさにテロ組織だ)をわずか一日で解させた。なんともえげつないところは集団と長していったところまでを監視しながら、これからそのような集団ができないようにと、見せしめとしてテロ集団を叩き潰したところである。

正義と言うものは案外このようなものであると、歴史で勉強していた。

詳しいことはわからないけれど、政治の世界すら彼のマイのおじいさんが全てり人形のように、この國自を総理さえもっていると聞いたことがある。

そしてあのESP學園で頂點に立った俺が、彼の舞の警護をしているのだ。そんな最強の布陣を前に、おいそれと彼をマイ奪取するなんてことは正気の沙汰とは思えない。

  ここまでリスクを背負っているからには、何か……

  彼に何かがあるということなのか…………?

自らの存在すら捨てていくのかと、自己解釈を混ぜた推測をする。

  

ここはダイニングルーム。

マイとご飯を食べた後に、彼に話をすることにした。どうやら執事達も知っていたようでマイ以外の人達とは話は早かった。

「マイ、これからとても大事な話があるんだ」

できるだけまじめな聲音をして彼にこれからどのようなことがあるのか、あらかじめ察せるようにしていた。彼は俺のそんな表しだけ驚いて、彼もまた引き締まった顔立ちで俺の言葉に反応している。

「どうしたの?」

それは、食事が終わったすぐ後のことで、食卓をマイと俺が囲っているときである。俺の他の執事達も俺の背後に、そして彼の背後に著くと、俺の話すことを黙って、そして彼の質問である。

「君を狙って、とある集団が君を攫いに來る」

できるだけ端的に、わかりやすく、そして彼ができるだけ混しないようにとゆっくりとした発音で話した。

  マイは視界を一度、俺から外すと、數度のまばたき後ゆっくりと俺の目と合わせた。

「え、どう…… どうして? マイなの?」

はまるで意味がわからないと言っているように、目を大きくさせて訴え抱えるようにそのを揺らして俺に質問を返した。

  そりゃ誰だってこんな質問をするだろうと、このような狀況下でならそんなことを思い付いてしまうだろう。

のお父さんは海外で暮らしている。時たまに彼の姿を確認するためにも月一、二日で帰ってくるそうだ。実は彼と話す前に彼と話をした。どうかマイを守れとの命令があった。それは俺が彼の傭兵でもあり、彼の一番そばにいる人間だからだと言っていた。

「それはわからないんだ。分かっているのは名前くらいだよ。でも大丈夫だよ絶対になんとかしてみせる」

にそれがどれほど小さくて、俺の眼中にっていない相手なのかと分からせようとちょっとだけ明るめのトーンで言った。それは、彼の心の負擔をできるだけ軽くしようと、彼にそれは俺の敵ではないと察しさせてしまおうと考えての行であった。

  もちろん、相手がどれだけ強いかなんて俺にはわからないことであった。それはどうしようもないことでもあるが、しかし絶対的に倒すためにも、ここで自に彼を安心させるという”枷”を作らなければ、彼を守るだなんてできないだろうという勝手でとても無責任な判斷でもあった。

それを彼は見抜いていたのかもしれない。だからこそ彼は俺を信じるように

「わかったよタスク、いつも言ってるけど無理だけはしないでね」

そんなことを言っている彼しだけ何かをごまかしているように見えた。

  彼の表を見ながら俺は彼に何をさせているんだろうと落ち込んだ気分を見せないようにポーカーフェイスになって、彼にまた甘えるように笑顔で答えた。

「ああ、無理はしない」

俺はお風呂にった後、部屋に戻っていた。

なんでこうなるんだろうかと、自の行の裏目に出てしまうことに嫌気がさしながら、それでも彼を守るべきだと自に言い聞かせた。

が軋んでしまいそうな強迫観念の気分が沸きあがりながら俺は眠ることにした。

そして今までのただひとつであった、変わらないもの青春が明日で終わってしまうのかという、夏の季節の終わりごろにじる焦燥がむくむくとに募っていく。

  そしてベットに転がり、鬱々とした気分を眠ることによって解消しようとした。

だんたんと、霧が立ち込めるようにして眠気が襲ってきた。

そしてばったりと眠ってしまった。

ハッと気づくと、周りは白い雲のようなものが立ち込めていた。

  まるで空の世界といえばいいのか、自分すらも浮いている場所でひとつの聲が聞こえた。

「よう」

ぼそっと聞こえる聲は、生気がまったくとなく。

しかし、その超えは、全くと狂いなく、疑いの余地なしにそれは、その低い聲は……

  

「だ、誰だ!?」

  

  俺の聲であった。

「『俺の聲であった』なんてお前は思っているんだろう。まあわかってるさ。なんだって”俺のこと”だからな」まるで未來をいや、自分というものを嫌悪しているかのように、それは嫌味に染まった印象のある言い方であった。イライラしているのかギィっと歯軋りをして「クソったれなほど綺麗な瞳をしやがっておめえは主人公かよ。っていうか”ここ”の、主人公だったなお前」

そう言い終ると鼻で笑ったのか、小さな笑い聲が聞こえてきた。

  目の前に立っていたのは、俺だった。

  しかしそれは”俺”とは細かなところは全くと違うものであった。

 

 まずは世界全てを恨んでいるかのように死んだ魚の腐った目であり、何もかもを無常に切り捨てるような何も寫っていない目だった。不健康そうな顔はまるで何年も監生活を送っているような不髭に、汚らしくはいくつものできものによって覆いつくされていた。中に傷という傷の痕があり、まるで尋問にあっていたのかと、聞いてしまうかのようにボロボロであり、それを印象付けていたのは、切り捨てられたように無くなっている右足と、その細いを支えている松葉杖である。

  全くと俺と違う人間である。

  いいや”それ”は、俺であった。

「なんだか、自問自答しているようだな…… まあ俺がいつもしていることだけど」

ドュフと、口を軽くあけて彼は、いや俺は笑っていた。

  見ているだけで周りのに人間に環境に、不幸を撒き散らす醜悪の化であると、そんな想が直的に出た。

言葉の節々からじ取れる、ナイフのような無盡蔵に罪のない人間を切ってしまいそうである。守るべき信念も、大切なものが無い。無敵の人間だ。

  いままでぞっぽを向いていた視線は、ギロッとこちらを見た。

  まるで羨むように、しかしそれには嫌悪をするような眼でもある。

「ったくよ、これじゃあ対局すぎてよ。俺はお前がどんな人生歩んできたのか知りてえよ」

まあ知ってるんだがとそう言って彼はその口を閉じた。

「ここはどこなんだ。そしてお前は誰なんだよ?」

俺は、それに招待を確認した。知っていたがしかし、聞いてられずにはいられなかった。

「まあ、お前の”元”の俺だよ。そしてこの世界、ファルスワールドの創設者でもあり、全ての黒幕でもあり、俺の世界で、常世すべての悪『現代のアンリマユ』たる稱號を與えられた人間。俺が死んだ未來だと不幸の債務者なんて呼ばれ方だったな。なんせ世界相手にたった一人で喧嘩を売った唯一の愚者だぜ。自分でも自らの行いに笑っちまうよ」

ったく、クソオタクどもが不名譽な名前なんて付けやがって…… 不幸だぜと。

大膽不適にそう言った。それの目には何も映ってはいなかった。

 

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