《最弱能力者の英雄譚 ~二丁拳銃使いのFランカー~》58話

狀況。それは、悪夢のような現実だった。

「だから、渋谷が危ないって言ってるだろ!! 核だよ!! 核がッ」

僕は、アメリカ大使館へと連絡をした。だがしかし、まともに応じるはずはなく、簡単にはじき出されたのであった。

通信が切られて、スマホを叩きそうになったが、いまだに僕を待っている男の子にキャッチできる早さで投げた。

「どうすりゃあいいんだ。どうすればこの狀況を」

目の前には、黒い箱。それは放線標識がられているブラックボックスであった。

だめだ。ミライに連絡はつかない。作戦のためか非常回線に切り替わっているのだ。

しかし一人でも救わなければならないことと、僕だけでも逃げ出せばいいという葛藤。

考える間もなくして、立ち往生している運転手達に、ここから逃げろと説得をした。

「あぶねえから逃げろつってんだよ!!」

「なにがあぶねえんだ! 早くそこからどけや」

だめだ。まともに応じるはずがない。圧倒的な絶が背中に覆い被さっている。

「逃げろ!! 頼むここから逃げてくれ!!」

ぶ。

車は、僕をひき殺すかのようにして、突進してきた。すぐさま回避する。

だがしかし、バスが僕をつぶそうとしてきた。すぐさま回避したが、左肩に車が掠ってきた。

常人ならば複雑骨折であるが、瞬時に肩が再生した。

そしてタクシーが、そんな僕の目の前に止まり、後ろがぞろぞろと渋滯を起こしている。

誰もが僕を見て笑っていた。

そのとき、この國の警察がきたのだった。

誰かが、こんな僕を見かねて通報をしてしまったのかもしれない。

「君、さっきからなにをしているんだい?」

帽子をかぶりなおしながら彼は言ってきたのだった。

「だからこれを見てくれ」

彼に、いくらなんでもわかるであろう彼に、僕はその異常さをわかり得ることができる証拠を見せたのだった。

「そこには…… なにもないだろう」

は? な、なにを言っているんだこの男は、この狀況で冗談を言っているのか。

「そんなつまんねえジョーク言うんじゃねえ!! おめえ本當に目玉がついているのか」

完全におかしくなったのかとでも言うように、警察は僕を見ているのだった。

「とにかく、ここから離れようか」

いつの間にか、僕は両手を二人のおとこにふさがれているのだった。

「だからあ!!」

必死に説得をするべく、激にまかせてかしている。

なにを言っているんだ。見えないのかこの箱が。おかしだろうが。

ふと思いついたのだった。

敵は魔法をつかう連中だったと。

頭を打ち付けたような絶が僕を襲ってきたのだった。なんで畜生。

そんな僕を、さらに深淵へと押しつぶすような、機械音が聞こえた。

神病棟からかなこいつ?」

左の警察があざ笑うかのように言っていた。

「コスプレからして、クスリでもキメちまったんだろう」

なにげなく右の巡査の人間が言っている。

僕は返す言葉すら失っていた。

ああ、畜生が。

誰もがまた、普通の日常に戻るかのように普通の人間になったのだった。

そんなとき、天國ののような一瞬の閃が、僕の視界を襲ってきた。

瞬きよりも長い閃の中、核発で僕のは治るだろうかという疑問が浮かんだ。

まあ無理だろうな。

なんて人生なのだ。

どせならば、僕だけ逃げればよかったのだろうか。

そんなの僕には選択できない。

ああ、くそったれが。

ごめんなトウマ、ミライ。

言えなかったけれど、君が好きだよエマ。

のような闇が僕の視界を覆い盡くしたのだった。

白だった。

それはがあるような真っ白な空間だった。

そこに僕は一人でいるのだった。

不思議とそこでは暖かくもなく、寒くもない。

目を薄めたような白い霧の中。

どんな方角を見つめていても果てが無いほどにき通った空間。

僕はそんな場所でうずくまって座っていた。

ただそこで僕はぼーっとしていたのだった。

ここが天國というのならば、そうなのかもしれない。

「演出家だよなお前って」

「黙れって、ほらやってきた」

二人の男なのかそれとも、一人の男が自問自答をしているように、しゃべっているのだった。

その聲がどこから聞こえてくるのかは、僕にはわからないが、だんだんと近づいてくるのがわかった。

「これって初めましてでいいのかな?」

「なに普通に張してるんだ」

そんな心の中の聲が聞こえたような気がしていた。

「よう」

と一人の男が頭の上で言ってきたのだった。それから僕はその頭上にいる男を見上げようとした。

しかしその男が視界にってくることはなかった。

「後ろだよ」

そう諭すようにして男はいってきたのだった。

僕は、なされるがままに、その聲にしたがったのだった。

そこには、二人の男が立っているのだった。

顔はぼやけて見えないが、しかし、そこにはちゃんと二人いたのだ。

一人は、傷だらけのをしていた。

もう一人は松葉杖をしていて、右腕、そして左足が無い。

まるでのような対照的な二人であったという印象が強い。

「初めましてって言えばいいのかな」

「だからなんで張しているんだよ」

二人は笑いあう。僕はしばかり警戒をしていた。

「あなた達は?」

そうポツりと質問をした。

二人は考えるようにして黙る。

しばらくの沈黙の中、僕はここが天國なのかもしれないという発想が考えついた。

だけれど、二人も神がいるのだろうか。

「俺が、お前とお前の世界を作ったと言えばいいのかな」

「そして、この私がこの右の男、その右の世界を作った」

なにを言っているだこいつらは。

まあ、死んでここに、この天國にいること自変なことなのかもしれない。

「僕は死んだのでしょうか?」

僕はそう質問をした。

「そりゃあ、お前がどうしたいかだよ」

「私は君たちの選択を眺めているよ」

二人は、そう言ったのだった。

「僕がどうしたいか、ですって?」

僕は、審議を確かめるようにして質問をする。

「ああ、まあ、なんて言うんだろうな。結局はお前がどうしたいかなんだよ。このまま終わるか。それとも、足掻いてみせるか。なにをどう選択してもいいんだ」まるですべての選択権は僕にあるよと押しているようにして彼は言った。そしてこうも続ける。「ただ一つ、俺はお前には選択する権利があると教えておこう。お前を作った俺を差し置いても、お前に選択肢はあるんだよ」

笑ってそう答えた。

「ちょっと君は強すぎるんだよ」

「うるせえ。お前が俺を作ったんだろうが」

二人の男は言い合っていた。そこには僕にも知らないような親な関係があったのだった。

「この佐部君の言うとおりだ」

「で、この男が森っていうんだよ」

彼らは日本で言う、名字をお互いに教えあっていた。

「とにもかくにも、君にすべての選択肢があるというのは、その通りなんだよ。水流タスク君。君が始まらないといけないんだ。この世界も、この私の世界も、そしてこの佐部君の世界も」

森という男はそう言ったのだった。

まるですべてを知っているかのように答えたのだ。いいや本當にすべてを知っているのかもしれない。

世界が始まるとか、始まらないとか僕にはそんなことはどうでもよかった。

だけれど、ただ一つ。

この人達はただ僕を待っていたのかもしれない。あんなミスをしてしまった僕を。

なぜなのかというのは、僕が考える必要もないのかもしれない。

このまま、ありのまま進めば……

「そう言うことだ。もう一度お前に聞くぜ、水流タスク。お前はどうするんだ? お前の選択肢を聞かせてくれ」

佐部という男は、彼はそう聞いていた。

そんなもの答えは決まっていたんだ。

「僕は、僕をやるよ」

堂々と僕はそう言ったのだった。

「よく言ったね、水流タスク君」

森という男は安心しているようだった。

佐部という男も、どこか達観して笑みをこぼしている。

その瞬間、彼らが歩んだ人生を見てしまったような気がしていた。

何度運命に叩きつぶれても、それでも彼らは這いずり進んでいた。それがどんなにみっともなく、無様で、背徳的な行為だと理解していても、ただ一つの未來のために進んでいったんだ。

自分という、別の自分を信じていた。

それが彼らだった。

まるで僕のようじゃないかとそう思うのだ。

よくよく見れば、ただの一般人のようだが、その運命は人生は、奇々怪々でただ猛進していた運命だったのだ。

まるで奇跡のような人生だったのかもしれない。

互いに失ったもの、得たものがあったのだ。

それもまた僕もそうなのかもしれない。

「行けよ水流タスク。俺がお前を作ったんだ」

そう佐部タスクが言った。それを森タスクがただ見ている。

「うん、行ってくる。僕は君たちのようになれるかな?」

僕は彼らにあこがれてしまったのだ。この狀況で。

「俺はお前だ、お前は俺だ。そしてみんなは俺なんだよ」

いいやこの私だよと、森は言ったのだった。

まるで大丈夫だなれると教えられているようだ。

しかし、なにをーとがちゃがちゃと、言い合う二人。

そして、ふとやめた後に二人は僕を見たのだった。

「あばよ」

そう佐部は言って、森もまたうなずいていた。

「あばよじゃないですよ」

僕は二人を否定する。

「ここで一緒でしょう?」

の服を絞り僕はそう言った。

佐部は、拳をうれしそうにぶつけようとしてきた。そして森もまた、やれやれと一緒になっている。

二人の拳を両手で答えた。

「では、またどこかで」

振り向いて、僕は僕のなすべきことをやるというようにして、その背中を見せた。

そうして僕は現実に戻ってきた。

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