「流石はシェリー、貴族院の首席を最後まで貫きました。お見事でーす！」

期末照査の績表を手渡しされながら、お父様の部下である擔任教師が賛辭を呈した。クラスから割れんばかりの拍手を浴びるが別に嬉しくもない。

「當然の結果です。この貴族院は國立ながら我がシュルケン家が運営してますの。首席でないとお父様に叱られますわ。おーほほほほほ……」

わたくしは公爵令嬢。卒業すれば第三王子との結婚が控えている。何もかも予定通りよ。ただ……

席へ戻ると取り巻きのご令嬢からつまらない報告をけた。

「シェリー様、また王子様に厚顔無恥なオンナが群がっていますわ！」

「あら？」

廊下に目を向けると確かにわたくしの婚約者エリオット様の背後に見覚えのあるオンナが追いかけてる姿が見えた。

「ふん。卒業間近とあってファンも必死ね」

「けれどもシェリー様が婚約者だと分かってる筈。その上であんな追っかけするなんて！」

「そうね。アタマ悪いわねー」

「アイツ、前もめたのに懲りないわ。放課後、トイレで水攻めに致しましょう！」

「……え、ええ」

その時、ふと王子様と目と目が合った。わたくしは微笑んで會釈する。でも彼は目を逸らし去って行った。

ーーああ、しのエリオット様……貴方にされてないのは分かってる。でも、わたくし実はね……あぁ、本當のことを言いたいよーーっ！！

＊＊＊

授業が終わると取り巻きに見送られながら職員室へる。いつもの行だ。その奧に用務員室があり、更にその奧に特別室なるのお部屋が存在する。

「失禮します」

そこには豪華なソファーに寢そべっているお嬢様との回りを世話する使用人エミリーが居た。

「お帰りなさい。ポピー」

「エミリー、ただいま。あ、シェリー様、期末照査の績表でございます。最後まで首席でした」

「ふぁぁぁぁあああっ！　ああー、よく寢たわ。ん？　ポピーか。ご苦労。……首席ねぇ、アンタ本當に勉強出來るわね。で、他に変わったことは無かった？」

「王子様の熱烈ファンを放課後トイレでシバくそうです」

「ふん。またミーアか、よし面白そうね。それまでワインでも飲んで過ごしましょう。アンタ、今日は最後まで授業けなさい」

「か、かしこまりました」

って、晝間っからまたお酒か！　それに今まで寢てたの？　ったく、このお嬢はロクなもんじゃないわね！

シェリー、いえこの馬鹿に言いたいことが山ほどある。わたくしは十年間もコイツの代わりを、しかも悪役令嬢を演じてるの！　沒落寸前だった我が伯爵家を救ってくれたのは謝する。が、がよ？　コイツにそっくりだからって試験のたんびに替え玉やって、それが今では殆どアンタの代わりをやってるじゃん。もういい加減にしてよ！　いつか仕返ししてやるからねっ！

そう、わたくしポピーはシュルケン公爵家ご令嬢付きの使用人なのです。

そしてコイツの影武者だっ！！