《悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本に『ざまぁ』したけど? 本當の悪役はアイツだった……!?》20
「これは何の余興ですかな、エリオット王子?」
割腹が良く貫祿のある主人様がホール中央に居るわたくしたちに歩み寄って來た。豪快な笑い聲とは裏腹に眼鋭い視線を王子様へ突き刺している。
「理事長、いえシュルケン公爵。これは余興ではない。貴方のご令嬢とは結婚出來ないと宣言したんだ」
「ほ~う……どうやら本気の様ですな。それにしても卒業パーティーで、しかも多くの父兄の前で宣言されるのは如何なものでしょう? 我が娘に恥をかかすだけの理由がおありなのでしょうな?」
王子様は主人様から目線を外し、わたくしを冷やかな目で睨みつけた。
ああ、絶対絶命ですわ。ここで悪役令嬢などとわたくしを罵ったところでどうにもなりませんよ。
「シェリーがこれまでしてきた生徒へのめ、飲酒等々の悪事は既に貴方へ報告した筈だが?」
いえ、だからそんな事仰られても無駄です。
「ああ、その事ならもう厳重注意して適切に処分したが……まさか、まさかそれだけの理由で陛下とお約束した婚約を貴方の一存で破棄なさると? そんな事、出來るとお思いか?」
厳重注意? 何もございませんが?
「あいにく結婚するのは僕なんでね。陛下にはご理解頂ける様、説得しているところだ」
「何を勘違いなされているのか……お二人の婚約はこの國の繁栄を願って陛下とわたくしを中心に宮廷の支持を得て決めた事。言わば國家政策だ。それにシェリーは貴族院首席の績に加え、ダンス全國大會優秀を果たした自慢の娘だよ。ロイヤルファミリーにこれほど相応しい婦人はいないと思うがねぇ」
主人様はわたくしの方を見て軽くうなづいた。
「お前も何か言ってやりなさい」
いえ、もう主人様のお言葉で十分です。でも々言わせて頂きますわ。
「エリオット様、貴方のお気持ちは十分理解しました。わたくしの至らぬ點は深く反省致します。でもわたくしは皇族に相応しいになる様、また將來この國のリーダーになられる貴方のお役に立つ為に懸命に努力してきたつもりです。どうか、お考えを改めて頂けないでしょうか?」
「ふっ……それが本當にシェリーならね」
えっ⁈ い、今なんと……?
王子様の予想外のお言葉に揺したわたくしは、さりげなく馬鹿を目で追ってみた。流石にコイツはこの騒ぎに気がついて、こちらに注視してる様だ。王子様への「ざまぁ」を期待している。
「何の事かね? エリオット王子?」
「それは貴方の自慢するご令嬢にお聞きになられた方が宜しいかと……」
ま、まさか王子様はわたくしが影武者だと知っててらっしゃるの⁈ 何で⁈ 何で⁈ つか、どうすれば良いの⁈
「んん? シェリー、王子は何を仰ってるんだ?」
これはヤバい。わたくしに全ての真相が投げかけられてしまってる! 王子様は最初っからこれが逆転の切り札だとお考えになって、敢えてわたくしをダンスにい、捕まえてこの場で婚約破棄を宣言したんだ。
この結末はわたくしにかかっている!
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