※シェリー視點

三年も逢えなかった婚約者が貴族院へ編して來られた。王子様を一目見ようと生徒どもがわたくしの彼氏に群がって聲援を送っている。

「エリオット王子様ー！　おかえりなさーい！」

何と腹ただしい！　邪魔よ！　近づかないで！

そうココロの中でんだ。

でも、わたくしは貫祿を見せなければならない。あの群がるオンナどもとは格が違うのよ！

「シェリー様、靜かにさせましょうか？」

わたくしを崇拝する取り巻きが気を利かせてくれる。元々はお友達だったけど、いつの間にか主従関係ぽくなっていた。

「いいよ、キャーキャー言わせときましょう」

ふんっだ！　まあ、せいぜい黃い聲援でも送っときなさい！　それにしても……

王子様は見違えるほど長されていた。背もびてたくましくなっている。ブロンドヘアーを靡かせ、寶石の様なしい碧眼からは男らしく強い意志をじた。

ああ、カッコいい……わたくしの王子様。

教室の前で生徒の軍団に付き纏われてる王子様を見ていたら、彼がわたくしに気づかれた様で軽く會釈された。思わずにっこりと會釈し返す。

あ……挨拶された。嬉しい、嬉しいようー！　後でエミリーに自慢しよっと！　えへへ。

そのワンシーンを目撃してた生徒らが尊敬の眼差しを向けてくる。でも腹立つからつーんと無視して教室にってやった。

実はわたくしと王子様はクラスが違う。隣なのだ。でもそれくらいの距離がちょうど良い。だって同じクラスだと毎日ドキドキし過ぎてココロがれそうだもん。

そしてこの日、お晝休憩の食堂は王子様の話題で一杯だった。わたくしの周りもいつの間にか沢山の人だかりが出來ている。

婚約者同士が院で仲良く過ごすシーンが見たいのかな？　わたくしも皆に見せつけたい思いだ。「彼はわたくしのもの！」と知らしめる為にね。でも、王子様は會釈こそするけど會話をされない。というか話かけられもしない。

それが日が経つにつれ、焦りや不安に繋がっていく。自分の中で前から薄々じていた事がある。

『王子様に嫌われてる？』

『優秀な婚約者はポピーだと疑われている？』

その気持ちが段々大きくなっていった。気になって気になって仕方がない。

「ねえ、エミリー。何か寢れないよお……」

「まぁ、お晝寢出來ないなんて一如何されたのでしょう？」

「うん……王子様がね、何か冷たいの。わたくしとお話されようとしない。何でかなー？」

「シェリー様、心配無用ですわ。きっと貴族院では公私混同しないと、お決めになられてるのだと思います」

「そうなの？」

「はい、大丈夫です。貴は婚約者ですよ。そして貴族院のボスです。堂々としてれば良いのです」

「う……ん」

「そうだ、ぐっすり眠れる良いものがございますよ。お試しになられますか？」

「え？　何それ⁈」

エミリーは棚の中から高級そうな瓶を取り出した。

「上等なワインです」

「えーっ⁈　お酒飲んだらマズいんじゃないの？」

「ほんのしくらいなら問題ありません。誰にもバレませんよ」

わたくしは躊躇した。でもエミリーはグラスにし注いで渡してくる。甘い香りが漂う。とても味しそうだ。

「さぁ、お悩みなど忘れてぐっすりとお晝寢してください」

わたくしは々震えながら差し出されたワイングラスを手にしてみた……