「ふあああああぁぁぁぁ……ねむーい……」

朝はつらい。いつも眠たい。ギリギリまで寢てバタバタして馬車に乗るけどそこでまた寢てしまう。院に著いた頃にまた起こされて「のお部屋」へ行くという毎日を繰り返している。

「シェリー様、お紅茶でございます」

朝はポピーが目覚めの紅茶を差し出す。エミリーの朝は職員室で事務仕事の打ち合わせをしてるから不在だ。だからポピーがわたくしの世話をする事になっていた。

「ポピー、今日は朝から授業をけなさい」

わたくしはポピーが嫌い。コイツが居なかったら、コイツが優秀じゃなかったら、わたくしは普通に楽しい院生活を送れたと思うの。まあ首席は無理だけどね。

だからポピーには冷たく當たりたい。

「かしこまりました」

コイツは直ぐが顔に出るな。どうせ「またですか？」などと思ってるに違いないわ。腹が立つけど理由を言っとこうか……

「何かねー、昨日アンタ、小テストがあるって言ってたじゃない？」

「はい。言いました。出題される問題もご説明しましたが？」

「忘れたの！」

「えっ？」

えっ？　じゃないわ！　大袈裟に驚いたフリして嫌味な娘ね！

「だから、忘れたのよ！　満點取れる自信ないからアンタが行きなさい！　いいこと？」

「……はい」

ふんっ……だ！　アンタみたいに賢くないのよ！

「それとね、休憩時間に誰とどんな會話したかも教えるのよ。あと変わった事があったら逐一報告する事」

「はい。代はお晝ですね？」

「そうよ、じゃねー！」

パタンとアイツが部屋から出ていくと棚を開けてワインとグラスを取り出す。お紅茶の気分じゃないのよね。ワインが飲みたいのー。うふふ。

トクトクとグラス一杯に注ぐと、窓辺の景を見ながら優雅に頂く。

「あー、朝からのワインは格別ねえ」

十七歳になったわたくしは、自分の置かれた環境を怨みつつも神が壊れない様、楽しい事だけを追求して過ごしていた。お酒、睡眠、影武者への八つ當たり、そしてわたくしの王子様に群がる馬鹿なオンナどもの敗。

いえ、指導かしら。特に最近、王子様の追っかけで気になるヤツが居るのよねー。アレは何者？　いつも王子様にべったり引っ付いてる。馬鹿じゃないの？　全く良い度してるわよ。

休憩時間や放課後は取り巻きと、その馬鹿をどう懲らしめるかでいつも盛り上がっていた。

「ふああああぁぁぁぁ……よし、力溫存の為に寢るか」

ベッドへ橫たわり朝から安眠する。し酔って、とても気持ちいい。皆んな真面目に授業けてるのにわたくしはこれで良いの？　王子様は何でお話されないの？　って考える気もなくなる。全てが忘れられるの……

「くかー」

シェリー様……

シェリー様……

「シェリー様、そろそろ起きてください」

「う、うーん……エミリー、おはよ……ん？　此処は貴族院か。あー、よく寢た。と言うかお腹すいたよー」

「もう直ぐお晝でございます。ご準備を」

「うん。あ、ワインが殘りないの。また補充出來るかしら？」

「大丈夫ですよ。お屋敷の蔵に幾らでもあるので明日持ってきますね」

「バレないの？」

「全然。蔵の管理を任されてますから何も問題ありません」

エミリーだけはわたくしの理解者で味方だよね。何やっても上手く誤魔化してくれる。ありがたい存在だわー、うふふ。