《悪役令嬢の影武者を嫌々演じて十年、憎っくき本に『ざまぁ』したけど? 本當の悪役はアイツだった……!?》51
「グレース、お前とは離縁だ、とっとと出て行け! ライラ、お前もクビだ。二人とも二度とこの敷居をぐなあーーっ!」
父は影武者を指示した母とを怒鳴りつけた。
「お言葉ですが、全て公爵家繁栄の為に行った迄です! 貴方はシェリーがどう言う娘か分かってらっしゃらない。あの娘では貴族院など到底合格しなかったのですよ!」
「だからと言って替え玉を使っていい訳がない! そんなもんはいつかバレるんだ!」
「ふん、貴方にわたくしの苦労を理解してと言うのが無理な様ね。分かりました。実家に帰らせて頂きますわ!」
二人とも興してどうにもならない狀態だった。離縁に口を出すつもりは無いが、その前に聞きたい事が沢山ある。
「お母様、経緯を説明して貰えますか?」
「ジャック、貴方までわたくしを責めるおつもり⁈」
「今回の事で我が公爵家は多くの人々から信頼を失いました。皇族、貴族、はたまた平民に至るまで。この信頼を取り戻すのは並大抵な事ではございません。せめて何が起こったのか把握しなければ前には進めませんから」
「おいジャック、後はお前に任せたぞ。ふんっ!」
父は興冷めやらぬまま自室へ引きこもってしまった。まあ、此処は彼がいない方が母も話し易いだろう。
「さあ、お話ください」
「わ、分かったわよ……」
母は十年前、ポピーを見た瞬間にひらめいたらしく伯爵家から強引に奪い取ったと言う。初めは影武者の使い道もなく単なる使用人だった。
しかしダンスのレッスン時、余りにもシェリーが酷かったので試しにポピーにやらせてみたら、とんでもない才能を発揮した。それを見た彼は大會に出場させようと畫策する。それが始まりだった。
それ以降、ダンスだけでなく學力もずば抜けて優秀だと分かり、徐々に影武者を使う頻度が上がっていく。それでも用は良くないと思って大事な場面のみと限定していた様だ。
「ちょっと待ってください。その間、シェリーはどうしていたのですか?」
「お部屋に閉じ込めておいたわ。ライラを見張りにつけてね」
「酷いな。公爵家の為とか裁を気にして優秀なポピーを使う気持ちは分からなくもないが、それではシェリーが可哀想だと思わなかったのですか?」
「たまにだから良いのよ。月二、三回程度でしょう。丸一日って訳でもないし」
「閉じ込められただけの話ではない。自分が不甲斐ないから影武者を使ってるとシェリーはそう思っていた筈だ。その行為が傷つけていたんだよ!」
「だって本當にダメな娘なんだから仕方ないでしょう。皇族と婚約してるのよ。公的な表舞臺にも立たなければならないの。シェリーでは無理だった。これはお家の為です。あの娘が傷つこうが構わないわ!」
母には呆れた。シェリーがおかしくなったのはこの所為もある。
「シェリーがお嫌いですか?」
「そうね。好きじゃないわ」
「分かりました。シェリーは恐らく貴が怖い存在だと思っているでしょう。ポピーには厳しいけど優しくもあった。でも自分はそもそも相手にもされてない。いつも冷たい目で見られてるとね。……貴はシェリーの母親を拒否したのです」
「何とでも言うがいいわ。バレなければ上手くいってたのよ⁈ 何でバレたの⁈ ジャック、貴方は本當に何も知らない癖に、何も分かってない癖にわたくしを責める権利がおありなの⁈」
母は逆ギレした。確かに私もこれまで気づかなかったのは悪いと思っている。私が接してきたのは殆どポピーだったから……
小説家の作詞
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