※ジェラール視點

「かなりの悪なご令嬢だとか」

どこか子供っぽいバルナバ事務は王都の噂を鵜呑みにし私に報告してきた。何故か得意げだった。

「そうか」

素っ気ない返事が彼に対するだ。それよりも彼のことを思い出すと考え深いものがある。

アニエス、君とは十年ぶりだな。まさかこのペチェア島で再開を果たすとは思いもよらなかった。いや、出來るならば罪人の君とは會いたくない。

一何があったんだ……？

彼に言われるまでもなく、その話は早くから知っていた。私の腹心であるビソン次が王都と島を行き來してるから報は早いのだ。

「バルナバ、特別待遇だそうだ。手配を頼む」

「流石は王太子の元婚約者ですね。囚人とは違ってビップ待遇なんですねえー」

何を浮かれてるんだ、こいつは……。

「それと、お前をアニエス付きの監視役に命ずる。彼から目を離すな。分かったか？」

「はい、かしこまりました。どんな悪役令嬢か楽しみです！」

「……」

能天気な彼に々イラついた。彼が悪役令嬢だと未だに信じられない。私らは馴染だ。十歳までずっと一緒に生きてきた。そう、アニエスが兄ケヴィンと婚約するまでは……。

王室で育ったい頃、周りにいたのは公爵家の子供たちだった。一緒に學び遊んで楽しく過ごしていた。彼は明るく天真爛漫な格。髪はふあふあのロングではニュートラルブラウンだったな。それからエメラルドグリーンの瞳を持つ可いらしいだ。

雙子のカリーヌは外見は同じでも格はまるっきり違う。どこか作られた笑顔が好きになれなかった。どういう経緯であの妹が兄の婚約者になったのか意味が分からない。

「殿下、お屋敷は古民家で宜しいですか？」

「あ？　ああ……任せるよ」

「特別待遇ですからね。お庭も広い方がいいでしょう。あ、そうだ。侍と使用人も人選しないと」

何故こいつは楽しそうなんだ？……まあいい。私のセンチな気分など分かりもしないだろう。

あれは忘れもしない出來事だった。

陛下は早くから後継ぎをケヴィン第一王子だと宣言していた。私の口から言うのも何だが兄はあまり賢くない。だから臣下の中には私を擔ごうとする貴族も居た。お家騒になっては國がれる。陛下はだからこそ早くから宣言したのだと思う。私はそれで良いと思っていた。嫡男が継ぐのが伝統だからだ。

しかし──

宣言された直後、私は辺境の地へと追いやられたのだ。それまで當たり前に居たアニエスと突然のお別れ。子供ながら悲しかった。隨分とココロが痛んだものだった。

地方の貴族院を卒業した後は、囚人を管理するペチェア島を領地として頂いた。私は自分の運命を理解している。自分という存在は國をす可能があるのだ。そういう意味においては囚人と変わらない。滅多な事では島から出られないのが語っている。

「殿下、島一しっかり者のベルティーユを侍に、島一働き者のコリンヌを使用人にしようと思いますが如何ですか？　良い人選でしょう？」

お祭り気分の彼と言葉をわすのは、今の心境から言って辛い。

「任せる。それと、すまないが一人にしてくれないか？　バルナバ……」

小さなペチェア城の執務室から海を眺めていた私は、そう呟いた。