《島流しされた悪役令嬢は、ゆるい監視の元で自由を満喫します♪》40. 馬鹿王太子

※ブリス視點

「見ての通り、カリーヌはダメだ」

此処はケヴィン様の執務室。俺は彼から散々馬鹿オンナの愚癡を聞かされることになった。

「つまり……アニエスを島から呼ぶと言うのは無しですね?」

面倒くさいから話を纏めることにする。

「いや、それは“有り”だ」

「……は?」

何を言ってるんだ?

彼は辺りを伺いながら聲を潛めた。この執務室は誰も居ないが扉の向こうには事務が多く居る。

「ブリス、僕はもう限界だ。彼の我儘に呆れ返ってる。とてもじゃないが、カリーヌは王族に相応しくない。陛下もお認めにならないだろう」

當たり前だろ。こいつは何を企んでる?

「それは同です。しかし、そこでアニエスを戻して一どうすると?」

「うむ、カリーヌに代わってアニエスを我・が・妻・としたい」

「……は?」

正気か? お前が追放したんだろ。それを今更?

「ケヴィン様。ではカリーヌ様は?」

「そこでだ。頼みがある。カリーヌを始末してくれないか? それからアニエスを呼び戻すのだ」

ば、馬鹿なのか? カリーヌも酷いがお前もお前だ。こんなやつが次期國王とはけない。俺はこんな馬鹿野郎のために盡くさないといけないのか?

「……で、始末とは?」

「方法は任せる。自殺と見せかけて殺すか、島で監するか、何か考えてくれ」

「はあ……。その前にもう一つ質問がございます」

「何だ?」

「アニエスはケヴィン様の妻になることが條件で、恩赦すると?」

「そうだ。本當は絶してるに違いない。島から出られるのなら、腹も括るのではないか?」

いや、それは違うな。彼は島で暮らすことに腹を括ってるんだ。お前は大きな思い違いをしてる。

にしてもだ。

陛下は監獄の弟君を殺せと仰る。その馬鹿息子は自分の我儘で婚約者を代えた挙げ句に嫌気がさしたから、殺すか監して元のオンナを戻してこいと仰る。とても殘念な方々がこの國を支配してるんだ。

俺は仕える主人を誤ったのか?

「ケヴィン様、次の報告までに策を練っておきます。それまでは慎重になさってください」

「ああ、頼んだぞ。それからアニエスに“ヘンな蟲”がつかぬ様、注意しておけ」

「かしこまりました。では……」

ふん。馬鹿王太子とこれ以上、話てはおれん。俺は忙しいんだ。陛下にも會う約束がある。だが、これも厄介な話だろうな。弟君の暗殺なんてとても無理だ。何にも策がない。と言うか、やる気もしない。

確かに俺は特殊部隊で暗殺も経験している。だから陛下に認められたのだ。思えば冷酷な人生だったよ。だがいい加減、手を汚すことはしたくない。

ましてや、そこに正義があるとはじられない。

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