夕方になり、辺りはすぐに薄暗くなる。

二人で駅へ向かう大通りを歩いていると、人混みの中に遙斗に似た男とすれ違った。

そうだ。遅く帰宅して、また詮索せんさくされても困るし、早めに帰らないと……。

「良かったら、この近くにグラタンがおいしいレストランがあるんだ。せっかくだから夕飯でもどうかな？」

「あの……小田さん。今日は――」

もう帰らないと、と言いかけて、駅から來る人の流れが目にる。その人混みの中に、ひときわ背が高い、遙斗の姿を見つけてしまった。

「鈴河さん、どうしたの？」

「い、いえ……」

遙斗の隣で歩く相手は、朝食ミーティングで見かけたあの綺麗なだった。そのが遙斗の腕を軽く叩き、親しそうに會話しながら通り過ぎていく。

どう見ても仕事上の付き合いではなさそう。

遙斗がと二人で歩いても決して不思議なことではない。それなのに、目の前であんな姿を見てしまうと、なぜか心は揺れく。

「本當にどうしたの？　泣きそうな顔してるけど」

「――いえ、なんでもないです。……そうだ、これからどこか飲みに行きませんか？」

「えっ！！　いいの？」

が混して、思わず飲みにってしまった。とても、このまま平常心で帰宅することができない。

小田さんは一瞬驚き、すぐに嬉しそうな顔をこちらに向けてきた。

二人で駅ビルにある最上階のレストランにる。

外はすっかり暗くなり、ビル明かりが點燈し始めていた。

カクテルとおつまみになるものを2、３品注文し、夜景が見える窓際の席に向かい合わせで座った。

「鈴河さんから飲みにってくれたってことは、脈があると考えてもいいのかなぁ？」

小田さんは私に熱い眼差しを送ってくる。

に憧れてはいても、小田さんのことが本當に好きなのか、まだ確信が持てないでいた。

でも、このまま遙斗の思に乗せられてしまったら……。

「これから鈴河さんのことをもっとよく知りたい。僕のことはしずつ好きになってくれればいいから……だから、ＹＥＳって言ってくれないかな？」

小田さんは良い人だし、外見だって申し分ない。

長のことは気にしないと言ってくれてるし、彼からのアプローチをけ止めるのが一番自然で、幸せなのかもしれない。

でも…………。

「あの……小田さんとは知り合ったばかりだし、自分の気持ちが、まだよくわからなくて……」

「形だけでもいいんだ。一緒に過ごすだけでも僕は嬉しい。だから、お願いだ……」

懇願するように私の承諾を待っている。

「わかりました。こんな優不斷な私でいいのなら」

コクンと頷うなずくと、小田さんは満面の笑みを浮かべた。

「でも、まだ會社の人にはにしてください。うちの部で付き合うとなると、大事おおごとになるので」

社の人とアプリで出會って付き合うとなれば、部署は大騒ぎになる。

「もちろんだよ。僕は鈴河さんを大切にしたいから」

きっとこの人は、遙斗とは違う。

私のことを理解して、丁寧につき合ってくれるはず。

強引に自分のものにしようとする遙斗とは大違いなのだから。