里穂の口から他の奴と付き合うと宣言され、何も言い返すことができなかった。

俺は復讐の仕方を間違えたのか？

計畫では、この狀況で他の男が現れることはなかったはずなのに。

苛立つ気持ちのままでいると、すべてを臺無しにしそうだった。

強引に里穂を連れ戻しても、また離れていくかもしれない。

仕事が終わったのが夜の9時過ぎ。

このまま一人で部屋に帰ると、現実を突きつけられ、気が滅りそうだ。

今夜は営業部の同年代三人と飲みに行くことにした。場所は、會社からすぐ近くの大衆居酒屋。店員にメニューを渡され、長居をする予定で注文をれた。

「飲み放題コースで」

來年は世代代を図り、社長就任が控えていた。

今も、社では2代目という冷めた目で見られることもある。そのために必死で業績を上げる努力をしてきた。特に上の世代からは、やっかまれることが多いからだ。

せめて同年代とは気軽に流できるよう、時々こうして飲みにっていた。

飲み始めてしばらくすると、営業部でいつもテンションの高い鳥井が、ジョッキを抱えたまま嘆くように呟いた。

「聞いて下さいよ。この前、彼からもう連絡するなって……子はグイグイ來られると弱いって言うじゃないですか。何が悪かったんすかねぇ？」

悩みの容が俺の狀況とまるで被かぶって、一瞬焦ってくる。

「そりゃ追いかけなきゃ、絶対ダメですよ！」

白川は當然だと言わんばかりに聲を上げた。

「そういう時は、しばらく放っておくのがいいらしいですよ。彼が本気なら、連絡してくるだろうし。一旦自分の意見を伝えたのなら、僕は待ちますね」

営業部の中で冷靜に事を見極める木田がポツリと言う。

「例えば、彼の元に他の男が現れて、嫌がっても追いかけ続けるとどうなる？」

思わず、木田に向かって質問を投げかけた。

「専務、それってガチ相談ですか？」

「いや……。この前、知り合いから相談されて。一般的にどうなのかと思って」

「本で読んだんですけど、一旦引いてみると母本能をくすぐられるらしいです」

「俺はムリっす。とても待ってられねぇ」

せっかちな鳥井が割り込んで先に答えた。

「そうか……やりすぎると、嫌われるよな」

しみじみ呟くと、鳥井が俺の顔を覗き込んだ。

「あれっ！？　専務、やっぱリアルなんですか？」

「違う。知り合いの話だって言ってるだろ！」

三人の視線が一斉にこちらへと集まる。

「よし、次の店でもっと高い酒を奢ってやる。行くぞ！」

いち早く席を立ち、藪蛇やぶへびになるところを回避した。

このまま何もできないのは辛いが、今は待つしかないか……。

しばらくは、アルコールの摂取量が増える覚悟を決めた。