《香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》3-1. 忘れられないと當
————俺と結婚してしい?は、どういうこと?
「…………すみません、急いでるので」
訳も分からず、私は加賀谷さんを押し退けて會議室から飛び出した。エレベーターにり込み、大急ぎで會社の外に出る。そのまま走って近くの商業ビルの化粧室へと駆け込んだ。
「なんで、こんなことにっ……」
息を切らせながらも、そう呟かずにはいられなかった。驚きのせいなのか、ヒールで走ったせいなのか腳の震えが止まらない。化粧室の洗面臺で手を洗っていたがぎょっとした顔で私を見て、慌てて出ていった。大変申し訳ない。
「本當に…どういうことなのよ………」
汗で張りつく髪を掻き上げて雑にまとめる。あんなことがあったせいで、デート前だっていうのに服裝も気持ちもれまくっている。
不幸中の幸いなのか、ここの化粧室は広々としていてフィッティングルームまである。都會の真新しい商業ビルの行き屆いた配慮に涙が出そうだ。今度たくさん買いさせてもらいますと心の中で唱えながら、有難く使わせてもらうことにした。
フィッティングルームの扉を閉めて、汗を拭いながら5年前のことを思い出す。あの日、加賀谷さんの家を後にしてから、彼に何も言わずに帰ってしまったことに気がついた。せめて書き置きくらいは殘しておけばよかったかなと思った私は、以前貰った彼の名刺を取り出して電話を掛けるかどうか悩んだ。結局、電話を掛けたところで何を話せばいいか分からず諦めてしまったが。
ただ、柳さんに伝言を頼んでおいた。月曜の営業前に現れた私を見て、柳さんはアレコレ聞いてきたが、加賀谷さんへの伝言の容を聞いて察してくれたようだった。「まぁ、々あるよねぇ。リリちゃんはかわいいし、いい子なんだからこれからいくらでも出會いはあるよ。別に無理にする必要もないしね」と優しく言われた時はし泣いてしまった。靜かに笑いながらお茶とおしぼりを出してくれた彼の対応はさすがだった。
その後、私が落ち著いた頃に七瀬ママや絵梨花さんたちが出勤してきたので挨拶をした。そのまますぐに店を出て、春都さんにリリと呼ばれたはいなくなった。後日、柳さんから一度だけ電話があって「加賀谷様がリリちゃんの連絡先を知りたいって聞いてきたんだけど、斷っておいたよ。伝言も伝えといた。でも、加賀谷様すごいリリちゃんのこと心配してるよ。本當にこれで良かったの?」と言われた。でも、私は「伝えてくださってありがとうございます」とだけ言って電話を切った。私はもう、彼のことを忘れて前に進むつもりでいたのだ。
もっとも、実際はそう綺麗に気持ちを切り替えることなんて出來なかった。狂ったように就活に専念し始めた私を見て、講義で會った詩織はドン引いていた。講義、就活、講義、課題、就活。それらをこなすだけの毎日で日々の生活を疎かにし始めた私を見かねた彼は、飲みに連れ出したり、自宅に招いたりしてくれた。
「いや…あの時ばかりは罪悪がね……まさか玲奈が大失するなんて思ってもなかったわ……」
私の就活が終わった後、詩織が苦々しくぼやいていた。計算高い彼ですら私があんなことになるとは予想出來なかったらしい。當然だ。
加賀谷さんの件については自業自得だと思っている。結果としてこうなってしまったけど、あの夜、私は自分の意志で彼の家へ行った。詩織が気に病む必要は全くないと思っている。順調に弁護士になるための道を歩んでいる詩織は、絶賛司法修習中で最近あまり會えていない。それでも、もちろん彼は今でも良き友人だ。
それに、とリップを塗り直しながら考える。私が今こうして瑠璃香で楽しく働けているのはあのバイトのおかげだ。仕事はずっと順調でやりがいもじている。出勤のたびにメイクを試行錯誤する楽しさ、著飾る喜び、そして加賀谷さんが授けてくれた知識のおかげで今の私がある。大変なことになっていた時期もあったが、あのバイトを紹介してくれた詩織には謝しているのだ。
どうにか支度を終え、フィッティングルームを出る。會社を出た時の服裝に小さな青い石が輝くシルバーのネックレスとブレスレットをつけた。いつかのボーナスで買ったお気にりのジュエリーだ。仕上げとして、清潔のある凜とした百合の香りがする香水を控えめに纏う。
加賀谷さんのことは気になるが、彼のことを考えると何も手につかなくなってしまう。待ち合わせのレストランへ向かいながら、これからの予定を思い出して気持ちを切り替える。
今夜のデートの相手は日本駐在中の28歳イギリス人、ノア。彼はそれなりに名の知れたファッションブランドでセールスマネージャーをしていると言っていた。互いに勤務先はぼかしているが、それでもこれまでのチャットの容と今日の待ち合わせ場所からしてなんとなく見當はついている。社以來ずっとその會社で働いているそうで、この春から日本に赴任してきたらしい。
せっかく日本に來たのに、気が合いそうなの子が見つからないと職場で嘆いていたら、婚活アプリを勧められたそうだ。急ぎで結婚相手を探しているというより、先々を見據えることのできるステディな人との出會いを求めていると言っていた。
に発展するかどうかと言われたら微妙だ。ただ、それでも會ってみようと思えたのは仕事の話で盛り上がったからだ。奇遇なことに、私たちが擔當するブランドの主要ターゲット層はかなり近い。おまけに彼が擔當するブランドでは化粧品も取り扱っているという。メインはあくまで服飾品らしいが、確かにハイブランドであればコスメラインを展開していてもおかしくはない。
コンプライアンス、特に報洩には十分注意しなければならないが今日ノアと直接會って話せるのは楽しみだ。あわよくば、的な意味でも何かあればいい。つい1時間前まで、いや1週間前までは心からそう思っていたのに。
心に激しい痛みを覚えるが、今はどうにか考えないようにして私はノアとの待ち合わせ場所へと向かった。
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