《香滴る外資系エリートに甘く溶かされて》ex 3-2. 穏やかな平日の夜
「…っと、そろそろ春都帰ってくるかな。今日はご飯作ろっと」
席を立ってキッチンに向かう。冷蔵庫の中をチェックしながら、何を作ろうか考える。2人で話し合って、これからはちゃんとご飯を食べるようにすることにした。何を言っているんだと思われるかもしれないが、私と春都は良くも悪くも似た者同士で仕事が忙しくなってくると寢食を疎かにし始める。特に春都はヤバい。よくこの生活習慣であの貌を保っていられるものだと心底嫉妬する。
5年前、私が食べることも寢ることも放棄して就活に勵んでいるのを見てドン引いたという詩織の気持ちを今更ながら理解できたような気がする。関係は違えど、自分にとって大切な人がその人自をないがしろにしているのを見るのは耐えがたいのだ。春都には、春都自を大切にしてしい。彼がいつまでも健やかに元気でいてくれることを願っている。
私も仕事が忙しい日があるし、今は勉強にも力をれているので殘念ながら毎日手作りの食事をサーブできるほどの気力はない。それでも、余裕がある日は彼に溫かい食事を食べてしい。何も食べないよりはマシだろうということで余裕のない日も何か買って帰ったり、ストックしておくようになった。私たちにしてはかなりの進歩だ。
加えて、健康のために最近は春都と一緒にジムに通っている。彼が暮らすこのマンションにはなんと共用施設としてジムが完備されていたのだ。改めてとんでもない高級件に住んでいるのだと実して、家賃が気になったが…このマンションそのものが彼の実家の持ちだと話していたことを思い出した。もしかしなくても、彼は途轍もない家の出なのかもしれない。
元々、春都は週末にジムを利用していたという。そこに私が便乗させてもらったような形だ。あれこれ使い方を教えてもらいながら、新調したスポーツウェアをに纏った私は意気揚々とトレッドミルに乗ってみたのだが……撃沈した。元々、運は得意ではない上に走るのなんて數年振りだった。3分も経たないうちに息が上がってしまって、己の不甲斐なさにショックをけた。それでもめげずに通い続けて、最近は5分も走れるようになってきた。運も発音もトレーニングの道は険しいが果が出ると素直に嬉しい。単純な私はどちらもそこそこ楽しみながら取り組んでいる。
そんなことを考えていると、玄関の扉が開く音がした。キッチンを離れて玄関に向かうと、私の大好きな人が立っていた。自然と顔が緩んでいく。
「ただいま」
「おかえり、春都」
荷をけ取って、彼がジャケットをぐのを手伝う。ふと視線をじて振り向くと、不思議そうな顔をした彼がこちらを見ていた。首を傾げてその瞳を覗き込むと彼は答えてくれた。
「いや、幸せだなと思って。未だに夢なんじゃないかって疑ってる」
「あはは、気持ちはわからなくもないよ」
しい顔がまじまじと私を見つめてそんなこと言うので笑ってしまった。その後は2人で夕食を食べて、いつもの深い青のソファで束の間いちゃいちゃする。
「ねぇ、そろそろお風呂らないと寢るの遅くなっちゃうよ」
「んー、そうだね。でも俺はまだ玲奈とこうしてたい……たまには一緒にお風呂る?」
「それ絶対長くなるやつじゃん。明日も仕事だし逆上せたくないよ」
「ふふ、何を想像してるの。そういえば今日も英語の勉強はしたの?お風呂って音が良く響くし、発音チェックするのに良さそうだよね」
「…確かに?」
英語の勉強と言われてスイッチがってしまったこの時の私は、何故か春都先生の提案をけれてしまった。まんまと嵌められたと気づいた時には2人で一緒に溫かいお湯に浸かっていて。そのまま為すもなく彼に翻弄されて、何度も聲を響かせて………案の定、逆上せたのだった。
おまけに、春都はぐったりとした私を介抱しながら「最近、玲奈のおかげでちゃんと食べて運して寢れてるから元気で仕方ないんだよね。ねぇ、マッサージしてあげるからもう寢室にいかない?」と言ってきた。逆上せてぐったりしてはいるものの彼と同じく最近元気な私は、今度こそちゃんと隠された意図を読み解いた上で彼の腕に縋りついたのだった。
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