《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》33話 勇者、なろーテンプレ地獄で闘する。
33話
――セファイル公國のスラム街。
薄汚い、ジメジメとした路地裏に、
「……ん? ここは? スラムか……どこの……いや、あの時計塔……はっ、運がいい。まさか、ランダム転移で、自分の國に帰ってこられるとは」
勇者は、己のに何か問題がないかチェックする。
「うし。問題ねぇ。……つぅ……」
そこで、完全にアドレナリンが切れたのか、親指が痛み出した。
「ふん……治療、ランク3」
指先に、淡い緑のが集まって、すぐに爪は元に戻った。
「まずは、手札だな。武、魔道……俺自の鍛錬もそうだが、あの三匹を同時にとなれば、流石に、アイテムを揃えてねぇとキツい」
ハラワタが煮えくり返る想い。
――だが、どこかで、
「はっ……ワクワクしている自分がいやがる。どうやって殺すか。どうすれば殺せるか。くくく……だめだなぁ、どうしても、おもしれぇと思っちまう」
今までは、何の目的もなく、ただ平原で剣を振るい続けてきた。
その頃と比べれば、今という時間の、なんと充実した事か。
「まいったぜ、とんだワンパク坊主じゃねぇか。歳を考えろっての」
ちなみに、勇者の年齢は17歳。
見た目は若干老けて見えるが、実は、かなり若い。
「まずは、伝説級のアイテムを回収。未踏破のダンジョンや跡をまわらねぇとな……特に、回復系は必須……」
ブツブツ言いながら、路地裏を歩いていると、
「……ん?」
「……ぁ」
小汚いガキが目の前に飛び出してきた。
スラムのガキにしても、あまりにみすぼらしい。
よく見れば、が出ている。
「ぁ、あの……」
「あん?」
「たすけ……て、ください……」
「……」
勇者は、
「はぁあ……」
と、深くため息をついて、
「狂人のオーラは常に出しているつもりだがねぇ……まさか、スラムのガキに……救いを求められちまうとは……けなくて、涙も出ねぇ」
「ぁ、あの、今、恐い人に――」
途中で、ガっと、口をふさがれた。
勇者の顔に、管が浮かんでいる。
「耳が腐る。目が腐る。鼻が腐る。んで、次は、俺の手を腐らせようって? はしゃぐじゃねぇか」
言ってから、
「あの世で誇れ。俺をこれだけ怒らせておきながら、てめぇは、二十秒も俺の前に立っていた。やったな、いい土産ができたじゃねぇか」
「ぅぅ――ぅぅ――」
「消えてろ、カスが」
魔法を放とうとした、
その瞬間、
『條件を満たしました』
『カースジェイル、発します』
「ん?」
頭の中で、誰かが、何かを言った。
そう理解した瞬間、
「ぬぉおおおおお!」
が燃えるように熱くなり、
「なん、だ……ぬぁああ……」
全からグキグキと音がする。
「くぬぁあああ!」
『カースジェイル』
勇者が、『自に対する悪意なき者』に対して『殺意』を抱く事で発。
・呪い一覧。
『殺意を向けた相手のドレイとなる』
『魔人に変異する』
『今後、一切、己に対する悪意なき者への暴行不可』
また聲が聞こえ、勇者は、自分にかかっている呪いを理解する。
誰に何を言われても、決して、己を変えなかった勇者が、
今日、この日、
強制的に、生まれ変わる。
「魔人に変異? ドレイ? はぁ? ちょっと、待て……なんだ、それ……ちょっと待ってくれよ、マジで……」
――しかし、中は変わらない模様。
「ばかな、ばかな……ぁあっ……ぎぃい……ふざけんなよ、あの糞リッチィ……」
勇者の地獄が始まる。
注釈
『魔人』 魔王リーンと同じ種族。
亜人の上位種、魔の最高位種族で、全能が極めて高い。
亜人が進化した姿でもある。
人間と何が違うかと問われれば、保有魔力が高い、のが僅かに違う。
ほぼ、それだけ。
しかし、人間は、彼らの事をモンスターだと認識している。
魔王國が世界の序列五位になってから、
見た目は人間と、ほぼ変わらないという點もあり、
多は、立場が改善したが、
……いまだに、人間の國家に住む大半が、魔人に対して差別的である。
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