《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》59話 『尊さ』

59話

「……」

ハルスは數秒考えてから、

「今後、一切、俺とあのガキに関わるな。なにかしら記録が殘っているなら、一つ殘らず全て消せ」

「仰せのままに。――そして、その剣を証にしよう。それを持つ者に近づいてはならない。火龍會の掟に加える。反するバカはいない。俺を本気で怒らせるバカはいない。いても問題はない。俺が殺す。必ず、全てのバカ共に伝えておく。冒険者サーバンの名にかけて、全ての約束を必ず果たすと誓おう」

「良い態度だ。その潔さに免じて、一つだけ質問を許してやる」

ハルスの譲歩に、サーバンは、ホっとしたように、ニっと微笑んだ。

「……俺は、記憶力が悪くてな。悪いが、教えてくれ。……俺は、今日、あんたの前で、俺が所屬している組織の名前を、一度でも口にしたかな?」

「くく……」

勇者は、炎流を拾い、

「確か、街角のパン屋に勤めているんだったか?」

「……ありがたい」

言いながら、警戒を怠らずに、歩を進め、気絶しているゲイドを脇にかかえると、

「もう一つだけ、質問させてくれ……それは、どういう魔法だ? それともアイテムか? 魔人になれる魔道など聞いた事がないが」

々あったんだよ……多分、お前も相當な『々』を抱えているんだろうが、間違いなく、俺の々には劣るぜ」

「……そうかい、やはり苦労するものなんだな……たとえ世界最強であっても」

「俺にも、一つ聞かせろ。サーバン。虛偽は許さねぇ」

「なんだ」

「興味ないと言ったが、あれは噓だ。答えろ。お前は……なぜ、『そんな場所』にいる?」

「……自分の意志で、『ここ』を自分の戦場に選んだ。それだけだ。事実、それ以外に、答えようがない」

「……」

「まさか、何かのご立派な理由があるとでも思ったか?」

サーバンは、ゆっくりと、距離を取っていき、

「見誤るなよ、世界最強。……誰も彼もが、あんたのように『強く』『尊い』訳じゃない」

最後にそう言いのこすと、サーバンは裏路地の闇に消えていった。

殘されたハルスは、サーバンの剣を拾い、

(……くだらねぇ……まだ、俺は……)

どこかで、いまだに、もしかしたら、と思ってしまう己の優不斷ぶりに辟易する。

もしかしたら、この世界は、変われるんじゃないか、なんて……

「ありえねぇんだよ……」

言葉にして、自分に刻む。

もう二度と、忘れぬように。

きっと、どうせ、また、いつか、燻り返すのだろうけれど、

せめて、それまでは、忘れていられるように。

なんで、親指の爪をはがさないんだって?

……さぁな。

答える義理がねぇ。

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