《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》66話 霊國フーマー

66話 聖霊國フーマー

聖霊國フーマー。

――神都『安楽の地』に位置する、七層構造の『偉大なる主の円環』に守られた巨大城、『ゼラグルルオン』。

『世界の全て』を意味するその城の、

理的にも権威的にも最高所にある、『天に最も近い場所』で、

頭に天使のリングを浮かべ、白い翼を生やした十人の使徒が、

叡智で磨かれたような円卓を囲んで話し合っていた。

「エネルギー反応、ミッシング。チリ一つ殘さずに消えた。魂魄の完全なる消失……間違いなく、勇者は死んだ」

ちなみに、そのリングと翼は、彼らが『神』だと信じている『強大な者』から賜った寶。

そのリングは、『天國の加護』が屆く範囲(安楽の地周辺)でしか使えないが、

『レベルアップ、ランク20(十分間、レベルが200上昇する)』という、

途方もない魔法が使えるようになる神

クオリティは驚愕の32。

この世界で最も尊い寶。

その翼は、『天國の加護』が屆く範囲でしか使えないが、

『瞬間移、ランク10』という、途方もない魔法が使える神

クオリティは驚愕の15。

この世界で二番目に尊い寶。

「……ふむ、ん。魔王國に被害は?」

「ない。低位の魔衆には、多の損壊が見られたようだが、上位陣には何も被害はない」

「ちっ。サリエリを殺せなかったのか……あのクズ勇者、本當にクソの役にも立たないな」

「サリエリなど、どうでもいい。問題はラムドだ。勇者を撃退するとは……本當に、ラムドの力は素晴らしい。まだまだ発展途上というのが何よりも魅力的だ」

「どうでもいいとはなんだ! やつは墮天使だぞ」

「うるさいぞ、コーレン。そういう二つ名というだけだろう。サリエリは、ただのバードマンだ」

「そのような、不敬な二つ名を持つ者を、貴様らは許しておけるのか! 主に使えししき翼、我ら『天使』が、墮ちる事などありえない!」

(ピーチクパーチクとやかましいヤツだ。……クソ鬱陶しい狂信者。細かい事をイチイチ、ネチネチ)

(……何が天使だ、恥ずかしい。われわれは、ただ、神から究極の魔道を賜っただけの人間だ)

(この前は、セファイルの宮殿について、ゴチャゴチャぬかしていたな。小の見栄くらい、笑って見逃せばよいものを……)

聖霊國は、この世界で唯一の『萬年國』。

遙か太古から存在し、『戦爭』には関わらない事を宣言し遵守している國。

その最高位國家の上位十名が、ここにいる『十なる使徒』。

この世界における『表』の支配者だと自覚している十人。

そんな彼らが注目している異端な存在。

それが、ラムド。

魔王國の心臓。

この世界において數ない、『大いなる主から選ばれる可能』を持った者。

魔王リーンなど、ただの飾り。

もちろん、あれの求心やカリスマは侮れないが、あまりにも思想がバカすぎる。

「話を戻してもいいかな、コーレン」

今、ここで最も重要な話題はラムドに対する今後の対応。

イカれた狂信者なだけで、決して愚か者ではないコーレンは、

不満そうな顔を、ちっとも隠そうとはしないものの、しかし、ムっと口を閉じた。

――魔王國の宰相、ラムド・セノワール。

ランク7の召喚が使える上位アンデッド。

『不死』というチート屬を持ち、『高位の知』を有する、最高位の力を持ったバケモノ。

「天にまします『大いなる主』の試練を突破したラムドを、私は心から稱賛したいと思う」

それまで黙っていた第六使徒のパサイルが、ゆっくりと口を開く。

「……ああ、もちろん、『今後、この円卓にモンスターが座する』という事実に対して、やはり、『個人的』には、いささか以上の思う所を抱えてしまう……」

『が、しかし!』と、強く接続詞を続けて、

「ラムドが、我々と同じく、『大いなる主』から恩恵を賜り、『使徒』となる事に、『使徒としての責を背負った私』としては、『正式』な祝辭を贈りたいと思っている。みなはどうかな?」

そこで、みんなの嫌われ者コーレンが、

「ありえん! モンスターが、この場に座すると思うだけでがよだつ!」

聲を荒く言い切ってから、

「だが、私のなど関係ない。すべては、天にまします主がお決めになられる事。祝辭などは贈らないが、選ばれし使徒として、迎えれはするさ。イヤイヤな!」

「私も同意見だな。魔と友好的な関係を結ぶ事は難しい。しかし、主の言う事は絶対だ。ふふ……コーレンと意見がかぶるとは。今夜は龍でも降るのかな?」

第二使徒のケイレーンが、顔をクシャっとさせながらそう言うと、その場に、上品な笑い聲が響いた。

コーレンは、ムスっとするだけで反論はしない。

師であり親同然でもあるケイレーンにだけは、いつだって、頭が上がらない。

「ラムドは、『大いなる主』の試練を乗り越えた。まだ、『大いなる主』からの神託は降りてきていないため、いつ、ラムドが、恩恵を賜るかわからないが」

「……まあ、すぐだろうな。これまでのパターンから推測するに、一カ月後くらいか?」

「だろうな。あまり時間はない。式典の準備は、すぐにでもはじめるべきだろう」

「では、使者は、私の方から出しておこうかな」

「うむ。よろしく、頼むよ。ミハルド」

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