《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》69話 疲れるジャンケン

69話

「……くく」

研究室に向かう途中の廊下で、

『片目』を閉じているラムド(セン)は、可笑おかしそうに笑った。

「どうかなさいましたか、主上様」

三歩後ろからついてくるアダムが、そう聲をかけてきた。

センは、イタズラな笑顔を浮かべて、ニタニタと、

「いや、何も。『たかがエックスで殿堂りした程度の連中が~云々』なんて思ってねぇよ?」

――間違いなく、何か、あったのだろう。

アダムは推測してみた。

しかし、

何も分からなかった。

主の視界が捉える世界は、いつだって、常に、遠く、深く、果てしない。

「何か、不快な事がございましたら、どうか、このわたくしめに対処を命じくださいますようお願い申し上げます」

頭を下げる事しかできない。

なんと無力な事か。

「ん……いや、ダメだ。何もするな。下手にけば余計にこじれる。ここはスマートに行きたいんでね。俺が直々に、『テキトー』な処理をしておくから、お前は絶対にくな」

そこで、センは、ふと、上位者としての責任を果たすべきだと思い至り、

歩きながら、顔を背後に向けて、アダムと視線を合わす。

「――理由を言っておいてやろう。なぜなら、お前では、これらの完璧な対処は不可能だから。お前には、圧倒的に経験が足りない」

「……かしこ……まりました。……こののふがいなさを恥じいるばかりでございます」

「心配するな、アダム。これは、『俺にしか出來ない』――それだけの事。どうだ、ヘコむ必要があるか?」

「お優しき配慮、痛みります」

主の優しさにれて、アダムの心が熱くなる。

頬が赤くなって、いくつかの臓が、みっともなくはしゃいだ。

けない。

と、嘆きながらも、どこかで、仕方ないと想う。

「……ところで、アダム」

「は」

「そのカッコは……なんだ?」

「わたくしめが保有する裝備の中で最高品質の神でございます。主の側に侍る者として、可能な限り最高の禮裝でを飾っておかなければと愚行いたしまして」

それは、大膽に肩が出ているタイプのミニスカ浴だった。

を隠している部分が極めてない、ストロングスタイル。

黒地に、金糸や銀糸で麗雅な華々が飾られており、の下あたりに巻かれている帯も、兇悪に豪華で、真ん中のヒモの部分で、閉じた扇子をはさんでいる。

ただでさえエロいアダムが、限界を超えてエロくなっている。

「……あの……どうしても、その姿じゃないとダメなのか?」

確かに、凄まじいクオリティの神で、能は申し分ないのだが、

なんというか、とにかく、徹底してエロすぎる。

これを隣に置いているというだけで、人格を疑われるのではないかと不安になるレベル。

「もうしわ――いえ、なんでもございません、主上様」

的に謝ろうとして、即座に言い直す。

學習能力がない訳ではないのだが、どうしても、脳が反応してしまう。

「……もちろん、わたくしも、『この程度の裝飾しか施されていない者』など、主上様の従者には相応しくないと存じておりますものの……ただ、わたくしめ風では、これが限界でございまして……」

「ぃや、そういう意味じゃ……ぁあ、まあ、もういいや……こういうやり取りも、ぶっちゃけ、飽き飽きしているし……どうやら、そのエロ浴、セブンスアイ以下しか持たない連中には、ただの鎧に見えているっぽいから、もう、どうでもいい。好きにしてくれ」

「ありがたき幸せ」

高クオリティになってくると、フェイクオーラが付著されている裝備は珍しくない。

超高段位の戦闘になってくると、

いかにすばやく、相手の『本來の力を見抜くか』が、必然の初手になってくる。

さらに『もう一歩上の領域』にいくと、『そんなこと』はどうだってよくなってくる。

(隠されたって、一分も闘えば、大分かってしまうからなぁ……)

その領域に至るために必要なのは、膨大な知識量、極まった解析力、速の演算力。

そして、本當の意味での経験値。

結局のところは、繰り返す事。

ただ、繰り返す事。

センは、心を殺して、時間を積んだ。

そうして、その手を、屆かせたのだ。

神をも騙す『緻な偽り』ですら欺けない高み。

(結局のところ、大事なのは、択の押し付け方と、置き技のタイミング、で、バフの積み方……あとは、いかに相手の呼吸を崩すかと、集中の維持と……あと……ぃや、まあ、そんぐらいか。それ以外は、お遊びだ)

遙かなる高みの闘い。

誰もが憧れる、真なる神の世界。

神ですら痺れる、至高の領域。

しかし、辿り著いた者からしてみれば――

(つまるところ、結局は、疲れるジャンケン……闘いなんて、それだけの事でしかねぇ)

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