６話

「來週は急すぎるなぁ……せめて、一カ月くらいは準備期間がしかったんやけど……んー、今回は見逃す？　……でもなぁ……」

シグレは、天を仰ぎ、數秒考えてから、

「まあ、ええわ。一応、けてみて、落ちたら、一年後にまたけたらええ。最悪、冒険者の資格が取れんでも、チートは、いっぱいあるから、生きていくだけやったら、そんなに難しくないやろし」

そこで、シグレは、ニーを見て、

「あ、ちなみに、試験までの一週間、必死にレベリングしたら、あたしのレベル、どんくらいあがるかな？　２０は無理？」

「シグレは、レベルが上がり難いレッドスペシャルを持っているから、一週間だと、どれだけ効率的に経験値を稼いでも、２０は無理かなぁ」

「そっかぁ……神様にもらった『オマケ』が自己強化系とかやったらワンチャンあるかなぁとか思ったんやけど……」

と、そこで、シグレのお腹かキュゥっと鳴った。

「そういえば、あたし、かれこれ１５時間くらい、ごはん食べてなかったわ……どっかで腹ごしらえ……ぁ、ちなみに、ニー、お勧めのお店とかある？　って、流石に、そんな事までは知らんか」

「この周辺にある、食べを提供する店は全部で二件。評価が高いのは西に五百メートルほど行った所にある『ソウカ』っていう大衆酒場だよ」

「なんや、この子。スマホより便利なんやけど。なんか、このままやと、この子がおらんと生きていけんになってまいそうな予」

「もしそうなっても問題はないと思うよ。ニーは、最後の瞬間まで、シグレの側にいて、シグレを守り続けるから」

「うわ、イケメン！　このスライム、イケメン！」

シグレは、西に向かいながら、ニーをギュっと抱きしめる。

「サイコロ勝負で勝って良かったわぁ……５０以下を出した時の條件ってキツいもんばっかりやったけど、今となっては、『ニー止』が一番のペナルティやなって思うわ」

「もし、最低値を出していたとしても、ニーはシグレについてきていたと思うよ？　召喚獣っていう役割ではなかったと思うけど」

「え？　それって、どういう――」

「最低値を出した場合、レッドスペシャルをつけられるだけじゃなく、一億の借金を抱えるっていう條件だったよね？」

「うん。それが？」

「チートを持っていない。欠點しかない。世界の事も何もしらない。住所不定無職で、教會に登録したナンバーすらないシグレがどうやって一億も稼ぐの？」

「……」

「何もできないし、誰も雇ってくれない。娼婦になったところで、誰もまともにお金なんか払ってくれないよ？　生かしておくためにパンを與えられるくらいかな。この世界は弱者にとても厳しいんだ」

「……」

「ニーは主人が大好き。その、大好きな主人から『シグレを守ってあげて』って、ニーは言われたの。だから、シグレの事は絶対に守るよ」

「……そっか」

シグレは、嬉しそうに微笑んで、

「あたしも、あの神様のこと、大好きかも」

「ニーと同じだね」

「そうやね」

お喋りしていると、ニーに教えてもらった店についた。

かなり立派な酒場で、安っぽさはなく、どこか、気品さをじさせた。

扉を開けて、中にると、

「誰が食い逃げだ、このクソがぁ！　てめぇ、言うにことかいて、この俺様を、軽犯罪者扱いしやがったな！　愉快にもほどがあんぞ！　悪意、確定！！　死んでろ、聖殺、ランク５！！　――……なんで、出ねぇんだよ、くそがぁああ！　この俺を、あろうことか、食い逃げ扱いしやがったんだぞ！　それが悪意以外のなんだってんだぁ！！」

ものすごいＤＱＮが喚いていた。