《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》8話 一國一城の主

8話

 

「さっきから、これみよがしに魔剣をちらつかせているが……無駄だぞ。俺はどんな脅しにも屈しない」

 

覚悟がうかがえる。

 

強い態度で言葉を並べる店主。

 

「俺もかつては冒険者を目指した。最も調子が良かった時でさえ三次までしか行けず、結局、冒険者になるという第一段階の目的は達できなかったが、最も大事な夢はまだ続いている。もともと、俺は、確実に自分の店を功させるために冒険者を目指した。冒険者にはなれなかったが、どうにか、理想的な店をもつことができた」

 

店主は、ズイっとを寄せて、圧力をかけてくる。

 

「俺の店に一歩でも足を踏みれた以上、俺の決めたルールを守ってもらう。絶対に食い逃げはゆるさねぇし、一銅貨たりともまけてやらねぇ。冒険者は、尊敬しているという理由でタダにする。下心がゼロとは言わないが、自分が試験をけてみて痛した。冒険者になれるヤツってのはすげぇ。敬服する。だから、タダで召し上がっていただく。しかし、例外は冒険者だけ。俺の店で酒を飲みメシを食ったヤツで『金を払わなくていい』のは冒険者だけだ」

 

どんな時でも、誰の前であろうと、冒険者は特例。

 

當たり前の話。

 

「そして、食い逃げ野郎は、問答無用で衛兵につきだす。皿洗いもさせねぇ。ウチの皿を洗えるのは、俺のメガネにかなったヤツだけだ。ウチの店で働いているヤツは、全員、誇りを持って働いている。食い逃げ野郎の出る幕はねぇ」

 

生きていれば、誰だって、自分のルールを持っているもの。

 

「言うまでもないが、男を掘る趣味も、趣味もねぇ。その妙に容姿が整っている奴隷っぽいガキに奉仕させようとしても無駄だ。仮に、満なだったとしても答えは同じ。……さあ、どうする? 金を払うか、縛られるか。二つに一つだ。ちなみに、これも言うまでもないが、俺は忙しい。急いで決斷しろ」

 

(くぅ……セイラに絡んでくれりゃあ、どうとでも出來たってのに……)

 

そこで、ハルスは、壁にかけられている怪鳥の彫刻をチラ見する。

 

(この店、ガーゴイル・サービスと契約してやがるから、たかが酒場の分際で、次元ロックがかかっていやがるし……扉も、出る時限定で、店主の了承がなければ開かないようになっていやがるから、力づくで逃げる事もできやしねぇ)

 

ガーゴイル・サービスは、簡単に言えば、この世界のセ○ムで、次元魔法を基本とした警備システムを提供している警備會社。

 

超大手しか手が出ない『法外な契約金』を取る會社として有名だが、その値段に見合う働きはしてくれる。

 

本來、大衆酒場が契約できるような會社ではないのだが――

 

(……結局からなかったとはいえ、冒険者試験で三次までいけたって事は、それなりの実力者ってこと……金はいくらでも稼げたって訳だ……)

 

冒険者試験で三次まで殘れる者は、毎年、20人いるかいないか。

 

『冒険者試験の二次試験突破経験者』という記録は、(もちろん、『冒険の書』を所有している者の後よりも遙かに鈍いだが)、を張って誇れる確かな実績として、その者の経歴を眩しく輝かせる。

 

金貨5枚という、決して安くはない験料が必要だというのに、毎年、冒険者試験をける者の數が數百萬人にも及ぶ理由はそこにある。

 

『明らかにからないだろう』という者も、こぞって験する理由は、

 

――『運でも何でもいいから『一次』を、出來れば『二次』を――

 

とにかく、『通過した』という結果さえ得られれば、『何もない者』よりも遙かに有利になるから。

 

たとえば、この世界には、いくつか、『冒険者試験で二次を通過した事がある者ならば無條件で雇用する』と明言している大手企業がある。

 

ガーゴイル・サービスもその一つ。

 

(ちょうど金を持ってねぇ時に、魔人になった事を忘れて、たまたまガーゴイル・サービスと契約している店にっちまうだと? ……なんだ、この激烈な不運は! ふ、ふざけやがってぇ……)

 

ハルスは頭を抱えて、

 

(どうやら、カースソルジャーと闘って以降、俺の運は、地の底の底まで落ちたらしい。まさか、このまま永遠に転がり落ち続けるんじゃぁ…………なんて悲観している場合じゃねぇ。どうする……どうする、俺ぇ……)

 

ガシガシと頭をかきむしって悩んでいると、そこで、

 

「あのー」

 

後ろから聲をかけられた。

 

的に視線を向けてみると、そこに、黒髪の若いがいて、

 

「そこの人。もし、よかったら、あたしに雇われてみぃひん?」

 

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