《『経験値12000倍』のチートを持つ俺が、200億年修行した結果……》12話 パーティ結

12話

「はっ。なんだ、プライドだけは一丁前だな。龍の威を借りているだけの小娘が、カッコ良く謳うたうじゃねぇか。くく……まあ、いいさ。冒険者になるまで限定だが……『金』の価値は、事実、重い」

そこで、ハルスは、セイラに目配せをする。

セイラは、しっかりと空気を読んで、ハルスの膝から降りると、

綺麗に直立してから、スっと腰を曲げて、

「私達を雇ってください、おねがいします」

「どうだ、み通りの殊勝な態度だぜ。心よく雇ってやれよ」

「さっき利かせたドスは、あんたに向けたもんなんやけど」

「俺は、こいつの剣だ。お前は、いちいち、所持品にも挨拶させんのか? 変わってんな。じゃあ、まずは、セイラが著ている、この汚ぇ服から挨拶させるから、ちょっと待ってくれや。おい、セイラなんかに著られている可哀そうな服。こちらのお嬢様が、挨拶をみだ。頭を下げろ。――おいおい、反抗的な態度じゃねぇか。頭が高ぇぞ。こちらのお嬢様を、どなたと心得る」

「……もうええわ」

シグレは、渋い顔で折れて、

「……あんた、格、悪いな」

「不思議な事に、よく言われんだよ。なんでだろうな。俺は、こんなにも素敵なお兄さんだってのに」

(なぁ、ニー……あたし、この男を雇うん、イヤになってきたんやけど)

(無理強いはしないよ。ニーは、いつだって、シグレの自由を尊重する。けど、冒険者試験に合格する確率をしでも高めたいなら、この人の力はあった方がいい)

(なあ、ニー……こいつ、ほんまに、『世界最強の勇者』なん?)

(うん、間違いないよ。ご主人の呪いをくらっているから、魔人になっているけど、能力はほとんど変わっていない。彼は、間違いなく、この世界で最強の人間。もし、『チーム力』の高さによって合否が決まる試験だった場合、この男がいるだけで合格できるレベルだよ。そうじゃなくても、手伝ってくれるなら、々と役にたつ。逆に、敵にまわすとかなり鬱陶しいよ。この男は、頭も力も世界最高峰という萬能の天才だから)

(うーん……うーん……)

ニーと念話でおしゃべりしてから、

「はぁ」

と、一度ため息をついて、

「報酬は、ここでの支払い含めて、金貨20枚でどうや?」

「くはは……凄まじく安い買いじゃねぇか。この俺を金貨20枚ぽっちでかそうなんざ、昨日までなら、神でも出來なかった暴挙だぜ。――が、いいさ……冒険者試験が終わるまでの生活費と考えれば充分な額……冒険者になっちまえば、以降はほとんど金なんざいらねぇし、必要になったとしても、いくらでも稼げる。ちなみに、報酬は前金で頼むぜ。これだけは流石に譲れねぇ」

「ええよ。ただし、アリア・ギアスをかけてな」

ハルスは、當然だとでも言いたげに軽く首肯すると、右手をシグレの方に差し出して、

「――契約する。可能な限り、冒険者試験で手を貸す。俺も合格するつもりでけるから、もし、『俺とお前、どちらかしかからない』という狀況になったら、その時は自分を優先させてもらうが、『努力さえすれば、どちらもかる』という狀況下でなら、必ず全力でサポートすると誓う。異存がなければ了承を」

シグレは、ハルスの右手に、自分の右手を重ねて、

「――冒険者試験で、助けてもらう。條件はのむ。代わりに、金貨20枚を支払う。ここに契約は結ばれた」

キィンっと音がして、二人の両手が、質量のない不可視の鎖で繋がれた。

別に離れられない訳ではなく、ただの『契約がわされた』という証。

この世界の指きりゲンマン。

契約のアリア・ギアス。

破る事のできない約束。

ただし、抜け道はいくつかあるので、國家間同士での約束などで、契約のアリア・ギアスが用いられる事はない

たとえば、今わされた約束くらいならば、存在値20を超えている魂を十人分ほど生贄にすれば解除する事ができる。

金貨で言えば、ハルスが、金貨200枚ほど用意すれば、この契約を解除する事も可能。

わざわざ、その手間をかけるくらいなら、冒険者試験で手を貸した方がマシだし、ハルス自が、シグレの手を借りなければいけない可能だってある。

そういう意味で、この契約が破られる事はないと斷言できる。

「ちなみに、お前、召喚できるのは、そのスライムだけか?」

「え? ぁあ……うん、そうやで」

「あきらか噓つきやがったな。まあ、いいけどな。切り札を隠すのは當然だ。しかし、黙っている以上、俺は、常に、『今のお前』を想定してく。仮に、『お前がもっと優れた召喚士』で、俺と『本気のお前』が全力を出せばどうにかなるかもしれないという場面に遭遇したとしよう。その際、『今のお前』と俺では『突破できない』と判斷できたら、俺はお前を見捨てる。それは契約の範囲だ。いいな」

「ええよ。それが筋ってもんや」

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